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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

「日本語教師」とは?なる方法は?仕事の内容や資格のこと、勉強法をまとめました。

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みなさんは「日本語教師」ってどんな仕事かご存じでしょうか?いざ聞かれてみると、どんな職業かわからないなという方も多いのではないでしょうか?ここでは、日本語教師について、仕事の内容、年収や将来性、必要な資格の有無などについてざっくりとご説明します。(Keiko)(2019年11月15日、統計値を最新のものに更新しました)

日本語教師とは?どんな仕事?

日本語教師の仕事内容について

日本語教師は、母国語が日本語ではない人たちに日本語を教える教師です。学習者は、主に外国の方になりますが、中には海外出身の帰国子女など日本語がおぼつかない日本人も(お子さんも)いらっしゃいます。

なお、日本で日本語学校で学ぶ外国人だけでなく、海外で日本語を学ぶ外国人向けの学校も日本語教師のニーズは大きいので海外で活躍されている日本語教師の方もたくさんいます。

日本語教師は、学習者に日本語を習得させることが主な業務ですが、それだけではありません。日本の歴史や文化、社会や流行などの情報も交えながら学習者に日本語を学んでもらうのです。ですので、外国人にわかりやすく指導するためには、日本語に関する様々な専門知識が必要となります。

読み書き、会話ができるように指導する

日本語教師の仕事はざっくり言うと、大きくは「日本語を母国語としない人に、読み書き、会話ができるようにする仕事」といっていいでしょう。まず最初にひらがなの読み書きや簡単な会話から教えていきますが、この時に文法や発音など専門知識とが必要です。

しかし、単に日常会話ができるようになりたいのか、日本の大学に進学したいのか、日本企業に就職したいのか、外資系社員がビジネスで使える日本語を習得したいのか、といった風にケース別に学習者のカリキュラムを組んでいかなければなりません。

時には、入学試験のための面接の練習や、会議でのディベート演習など、学習者それぞれの目的に即した実践的な授業を構成する必要があるのです。よって日本語教師の業務内容は細かく分類すると、以下のように多岐に渡ります。

  • カリキュラムの作成
  • 授業の事前準備
  • 習熟度テスト問題の作成や採点
  • 宿題問題の作成や提出チェックや採点
  • 出欠などの事務作業全般
  • 時には進路や就職といった悩み全般の相談
カリキュラムの作成は重要な作業

まず、カリキュラムの作成ですが、さきほど説明したように、学習者それぞれの目的に沿ってデザインを行う重要な作業です。学習の目的や現在のレベル、学習時間などを鑑みて、教える内容や使用する教材など学習者に合わせてカスタマイズして作成しなければなりません。

事前準備や採点など、授業の前後にも仕事が多い

授業の事前準備については、語学学校の場合、授業自体は1日あたり2、3コマ × 45分としても、授業の前日や前後に準備や教材の作成、採点などの作業発生しますので、実際に働いている時間は1コマあたり数時間はかかっているということが多いです。

教材自体は語学学校指定の教材を使うことが多いですが、宿題や問題など副教材は教師が自作することもあります。

ヒューマンスキルも問われる職業

また、教師という仕事の性質上、出欠確認などもありますし時には学習者の進路や就職など悩み相談に載ってあげることもあります。大変ヒューマンスキルが問われる職業といえます。

日本の文化を伝える伝道師として

世界の国によってそれぞれカルチャーは違います。日本では当たり前の習慣であっても、外国人にとっては未知の世界であることは多いです。ですので日本語教師は、単に語学ということではなく日本の歴史や文化を通じて日本という国も学習者に理解してもらわなければなりません。

職業柄、日本語教師は茶道や着物といった古来からの日本文化だけでなく流行っている音楽や文学、コミックといった、日本ならではの現在のトレンドに対して、アンテナをはって説明する機会が多々あります。さまざまな国籍の人たちに日本語の習得だけでなく、日本という国を伝えていくことも、日本語教師の大切な仕事のひとつです。

日本語教師の需要と将来性は?

日本語教師の需要は上がっている

2019年4月1日に、日本では外国人材の受け入れを拡大する「改正出入国管理法」が施行されました。その結果、留学生や労働者などの在留外国人の人口は日本で急激に増加しています。

企業も、アジア圏を中心として外国人スタッフをたくさん雇用しているため、そのようなスタッフにとって、日本語教育は日本で働き、生活するにあたって必要不可欠です。

接客などにおいて、日本では自然と「敬語」を用いていますが、外国人にとっては難易度の高い特殊な言語スキルであり、日本語は習得の難度が高い言語とされています。

ですので留学生だけでなく、外国人労働者にとって日本語教育は必須の教育であり、日本で生活するにあたって彼らが日本語を学習したいというニーズがますますアップするといえます。

日本語教師の需要はどこに?

では日本語教師はどこで働いているのでしょうか?

国内、国外でみていきます。まず、国内の職場は次の通り。

日本語教師の職場(国内)
  • 日本語学校
  • 大学での留学生の単位科目
  • 企業内教育
  • 日本語教室(ボランティアなど)
日本語教師の職場(海外)
  • 日本語学校
  • 小学校・中学校・高等学校・大学の科目として
  • 青年海外協力隊による派遣
  • 国際交流基金による派遣 
市場は今後も広がる見通し

国内では外国人材の受け入れを拡大する「改正出入国管理法」が2019年に施行されており、学生や労働者などの在留外国人の人口は今後さらなる増加を見込んでいます。海外の職場については主にアジアが中心となっています。

国内の日本語教育機関の学生数は?

一般社団法人日本語教育振興協会が認定している、国内の日本語教育機関に在籍している学生数は現在、107 か国・地域から47,230 人います。学生の主な出身国・地域は、

  1. 中国(35.8%)
  2. ベトナム(30.6%)
  3. ネパール(7.5%)

です。次にスリランカ(4.2%)、台湾(3.8%)、韓国(33.3%)と続きます。主な傾向として中国が増加から減少、ベトナムは 2 年連続で減少傾向にある一方で、ネパールが 2 年連続で減少傾向だったのが30 年度は増加に転じてします(平成30年度 日本語教育機関実態調査より)。

2017年から2018年にかけて国内における外国人の日本語学習者が1割アップしています。今後ますます日本で暮らす外国人の増加が見込まれていますので、日本語の教育施設や教員養成のニーズと拡充は将来的に必須といっていいでしょう。

海外の日本語教育機関の学生数は?

3年毎の調査である国際交流基金の「海外日本語教育機関調査」によると、海外では142か国で384万6,773人が日本語を勉強しています。主な学習者は以下の国になります。

  1. 中華人民共和国(中国) 1,004,625人
  2. インドネシア 706,603人
  3. 大韓民国(韓国) 531,511人
  4. オーストラリア 405,175人
  5. タイ 184,962人

国内同様に中国が多いですが、国内の学習者と異なるのはインドネシアやオーストラリアにおいて日本語学習者が多いことです。

なお、この人数には独学は含まれず、学校の授業や語学学校、語学講座、登録制のインターネット教育などの人数だけですので、実際はもっとたくさんの日本語学習者が存在します。

日本語教師として就職するには?

日本語学校の場合は、先生になると、主任講師、専任(常勤)講師、非常勤講師という3つのポジションのいずれかに就くことになります。まず主任講師ですが、一般的に専任講師の経験が3年以上、必要です。

ですので日本語教師になったばかりの方は、非常勤講師かもしくは専任講師でのスタートとなります。最初は専任講師ではなく非常勤講師でスタートして経験を積むという方が大半でしょう。

ただし管轄省庁の方針で専任講師を増やそうという傾向が最近ありますので今後は、専任講師になれるチャンスが増えて行くことで日本語教師の給与や雇用条件などより向上していくと予測されています。

気になる年収や月収は?

専任講師の給料は一般的に「20万円~」などの最低給与額しか書かれていません。実際は、これに年齢や経験などを考慮して決まっていくので、もっと給料がよい場合もあります。

未経験の場合は一番下からのスタートになるので、だいたい20万円くらい、大卒の初任給くらいでしょう。

中には副業やパートでの採用で非常勤講師を考える方もいらっしゃると思います。その場合1回の授業あたりの時給になり1コマ1,800円〜2,000円ぐらいの報酬が一般的です。

デメリットは学校が長期休暇(夏休みや春休みなど)に入ると授業もお休みになるので大幅に収入が減少する点ですが、副業やパートと考えると高い報酬水準といえますし、最近は1コマあたりの時給とは別に事務給などの手当てが出る学校も増えています。

海外で日本語教師として働く

東南アジア圏を狙う事をおすすめします。なお、アジア圏で日本語教師として働く場合(アジアの非英語圏で働く場合)、授業を日本語のみで行う直接法で日本語を教えることが多いため、授業中に英語力を求められることはあまりありません。

ただ、現地での日本語学校のスタッフの方達とのコミュニケーションや学習者との混み入ったやりとり質問などある場合英語力があるに越したことはないですね。

海外においては、将来的に今後も経済が伸びていくであろうベトナム・フィリピン・インドネシアの3カ国は、同様に今後も日本語学習者が伸びて行く国とされています。

日本語教師になるには資格が必要?

実は、日本語教師になるためのいわゆる国家資格や公的資格は特にありません。ですが法務省告示の日本語教育機関(告示校)で日本語教師として働くには、以下のいずれかの基準を満たすことが必要です。

  1. 大学・大学院で日本語教育を専攻し、修了した人(単位取得
  2. 大学・大学院卒で文化庁に認定された日本語教師養成研修を修了した人(420時間の養成講座を受講)
  3. 日本語教育能力検定試験に合格した人

ちなみに、最短で日本語教師の資格取得する方法は、3の検定試験合格を目指す方法です。なぜなら1の大学での単位取得や2の420時間の養成講座を受講するよりも、3の日本語教育能力検定試験で合格を目指す方が圧倒的に「時間と費用が安価で済む」からです。ですので、3の「日本語教育能力検定試験に合格する方法」ができるだけ安く、かつ時間をかけずに日本語教師になりたい人にとっては一番の近道なのは間違いありません。

資格取得のための勉強法

時間とお金を考慮した場合、できるなら独学で3の日本語教育能力検定試験を受けて資格を取得し、日本語教師になりたいという方は多いと思います。ちなみに独学で取得する場合についての勉強方法は主にこの2つです。

  1. 通信教育で資格取得する
  2. 書籍を購入して勉強し資格取得する

(1)の通信教育については専門学校などに通学することにくらべて費用がとても安く済みます。もちろん必ずしも専門学校や通信教育のカリキュラムを受講する必要はありません。つまり(2)の書籍による勉強も問題ありません。とにかく日本語教育能力検定試験に合格すれば、日本語教師の資格を取得できます。

独学で合格された方も多くいらっしゃいますし合格体験記などもWebで探すと結構あります。

独学の場合の具体的な勉強方法は以下の通りです。

(1)まず、試験の概要把握する

最初に日本語教育能力検定試験の内容をきちんと理解しましょう。具体的には、独学で合格された方の体験談をネットで探す、検定試験の参考書を読んで概要を理解する、その上で学習プランを立てていきます。

なお、公式サイトであるJEES 日本語教育能力検定試験ホームページで試験問題が確認できます。問題を確認して試験のイメージをつかむとよいでしょう。

(2)試験問題の基本知識や周辺情報を習得する

最初に日本語教育とは?言語教育とは?といった、そもそもの知識を習得した上で、基本知識を身につけましょう。独学で試験を受ける方のための入門書がいくつか出版されています。

  • 日本語教育のスタートライン 本気で日本語教師を目指す人のための入門書(スリーエーネットワーク)
  • 日本語教育能力検定試験に合格するための基礎知識50(アルク)
日本語教育のスタートライン 本気で日本語教師を目指す人のための入門書

日本語教育のスタートライン 本気で日本語教師を目指す人のための入門書

 
改訂版 日本語教育能力検定試験に合格するための基礎知識

改訂版 日本語教育能力検定試験に合格するための基礎知識

 

(3)あとはひたすら問題集、過去問を解く

毎年、主催者団体が日本語教育能力検定試験問題を出版しています。最新の平成30年度の日本語教育能力検定試験問題は3月27日より発売されています(2019年現在最新版)。Amazonなどで購入できます。過去問については独学の方は、必ず購入して解いておきましょう。

  • 平成30年度 日本語教育能力検定試験 試験問題(日本国際教育支援協会)
平成30年度 日本語教育能力検定試験 試験問題

平成30年度 日本語教育能力検定試験 試験問題

  • 作者: 公益財団法人日本国際教育支援協会
  • 出版社/メーカー: 凡人社
  • 発売日: 2019/03/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

その他、版を重ねているロングセラー問題集もおさえておくとよいでしょう。以下はご参考まで。

  • 日本語教育教科書 日本語教育能力検定試験 完全攻略ガイド 第4版(翔泳社)
  • 新版 日本語教育能力検定試験 合格するための問題集(アルク)

書籍については、こちらの記事でもご紹介しています。

nj.alc-nihongo.jp

日本語教師を目指す人のための学校も!

専門の学校に通って、日本語教師を目指すこともできます。どんな学校があるのかはこちらの記事でまとめていますのでぜひご覧ください。

nj.alc-nihongo.jp

日本語教育能力検定について

詳しくはこちらの記事でもご紹介していますが、日本語教育能力検定試験の概要も、しっかり頭に入れておきましょう。

nj.alc-nihongo.jp

試験の概要 

まず、試験の概要は以下になります。

  • 240点満点
  • 問題形式:マークシート式(一部記述式あり)
  • 試験時間:4時間。午前から開始で昼食をはさみ、午後まで

試験は3部構成

試験の構成は、次の3部構成になっています。

  1. 試験Ⅰ(試験時間:90分 配点:100点)。原則、出題範囲の分野ごとに基礎的知識・能力,分析的知識・能力を測定する。
  2. 試験Ⅱ(試験時間:30分 配点:40点)。試験I、試験IIIの内容について、音声で言語学習の音声的特徴に関する知識、瞬間的知覚・判断能力を測定する(リスニング試験)。
  3. 試験Ⅲ(試験時間:120分 配点:100点)。原則、出題範囲の分野に対して横断的な問題により日本語教師の現場対応能力、問題解決能力、統合的判断能力、思考能力を測定する。うち20点は記述問題。

ここ数年でみると、日本語教育能力検定試験の大幅な試験内容の変更はありません。なお、今年10月に行われる試験についても、6月の時点で、19年度、問題内容の大きな変更情報は出ていません。

合格率は約23~25%

なお日本語教育能力検定試験の合格率は約23〜25%です。毎年の合格最低点は公表されていませんが、正答率70%以上であれば、その年の試験の難易度にもよりますが合格圏内と言われています。出題範囲は広く、合格率から鑑みると各種試験の中では「やや難度の高い試験」とされています。

日本語教教育能力検定の最新ニュース

日本語教育能力検定試験を受験される方は、定期的に検定主催者のウェブで最新情報を定期的にチェックしましょう。また日本語教師を目指す人のための情報サイトや語学系のサイトもお役立ち情報があります。

 → 公益財団法人日本国際教育支援協会(JEES)