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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

NAFLを通学制養成講座のテキストとして活用する

2019年4月に日本語講師養成講座を開講し、同年10月に第1期の修了生を日本語教師として送り出した三幸日本語教師養成カレッジ。カリキュラムの総時間数は480時間と、都内近郊の養成講座の中では突出して多く、理論、実習とも、手厚く充実した指導が行われています。知識の土台を作る理論編の授業において、メインテキストとして採用されているのが「NAFL日本語教師養成プログラム(以下、NAFL)」です。今回は、講座の立ち上げと運営を担当する株式会社日本教育クリエイト幸日本語教師養成カレッジの工藤啓史さん(写真右)と、2019年4月から10月までの平日コースを受講・修了し、検定試験にも見事合格した第1期生・小平悠太さん(写真左)にお話を聞きました。(執筆・青山美佳)

講座担当者に聞く! NAFLテキストを採用したのはなぜ?

NAFLを採用することになった経緯と決め手は?

編集部:初めに、なぜ、NAFLのテキストを採用することになったのか、経緯と理由を教えてください。

工藤啓史さん(以下、工藤):養成講座開講にあたり、講座を担当する先生方に、どのテキストを使うのがよいか、洗い出しをしてもらったんです。NAFLを含めいろいろな候補が上がりましたが、我々の講座は業界の中では後発であることもあり、とにかく質のよい内容にしたいという思いがありました。そこで、元々独学用教材であることから日本語教育に関する知識の全体がとてもわかりやすくまとめられていること、また検定試験受験レベルの内容が網羅されていること、日本語教師としてデビューした後でも参考書としてずっと役立つなどの講師の声を信じ、最終的にNAFLを採用することになりました。

講師の先生、受講生からの感想は?

編集部:実際に使ってみて、養成講座のテキストとしてNAFLの使い勝手はいかがですか?

工藤:必要な内容がよくまとまっているとは思いますが、例えば変化の激しいICT関連などについてはNAFLだけではなく、講師が補助教材を使用したりハンドアウトを作成したりしながらポイントでNAFLを使うという形で、うまく使いこなしている先生が多いようです。

編集部:ICT関連などは、確かに新しい教材やアプローチが日々生まれていますので、最新のニュースなどを盛り込んでいただくと楽しい授業になるのではないかと思います。我々も、実際にNAFLを使って勉強した受講生の方や先生方からご意見をいただき反映させることで、より良い教材にしていきたいと思っていますので、どんどんご意見いただければありがたいですね。

工藤:先生方も使っていくうちに使い方に徐々に慣れてきて、意見交換をしたりノウハウが蓄積されてきたりしてきているので、これからより使いやすくなっていくように思います。

受講生に聞く! NAFLで学んだ感想は?

日本語教師を目指したきっかけと三幸日本語教師養成カレッジを選んだ決め手は?

編集部:では、今度は、受講生の立場として学んだ小平悠太さんに伺いたいと思います。初めに日本語教師を目指した動機をお聞きできますか。

小平悠太さん(以下、小平):2017年にワーキングホリデーで1年間、ニュージーランド(以下、NZ)に滞在していたときに、日本語に興味があって勉強しているNZ人の友人ができ、互いに日本語と英語を教え合ったりしていました。何かを教える仕事にはもともと興味はあったのですが、結局、NZではやりたい仕事は見つからず、帰国後、ある会社に就職しました。ですが、なじめずに辞め、身の振り方を考えていたときに、たまたまテレビで、これから日本語教師が国家資格になるかもしれないというニュースを見たんです。そこで興味を持ち、具体的に養成講座などを調べました。その中の一つが三幸日本語教師養成カレッジでした。

編集部:三幸日本語教師養成カレッジを受講しようと思われたのはどうしてですか?

小平:一つの決め手は480時間であるということでした。養成講座に行こうと決めたのはかなりギリギリだったのですが、当時三幸は新規開講のオープニングキャンペーンをしていて一番安く、しかも時間数が多い。経済的にそれほど余裕があるわけではなかったので、同じ値段で多く学べるならその方が得だと思いました。もう一つは1期生であるということです。三幸の他に、大手の講座も見学に行ったのですが、1クラスに20人ぐらい受講生がいたんです。僕は少人数の方がよいと思っていたので、三幸に見学に来たとき、これから開講なのでまだ人数が少ないと工藤さんからお聞きして、少人数であれば手厚く指導してもらえるだろうと思って、最終的に決めました。

授業で、NAFLテキストで学んだ感想は?

編集部:実際に受講して、NAFLのテキストを使ってみて、いかがでしたか?

小平:最初に、自宅に20冊以上入った箱が届いたときは、びっくりしました(笑)。でも、これを全部読み込まないと検定に受からないのかな、などとは考えずに、実際、授業でも、その日にやる内容に合わせて1巻、2巻と持参する形だったので、そこだけに意識を向けるようにしていました。講師の先生のテキストの扱いも、初めのページから読んでいく感じではなくて、内容に合わせてポイントを解説されたり、検定キーワードをピックアップされたり、あとは宿題として読んでおくように、という使い方が多かったですね。自分でも予習のとき、全ページ熟読するのではなく、導入があり、結論に至る過程が説明されているので、過程と結論を押さえるような読み方をしていました。

編集部:印象に残った巻はありますか?

小平:日本語教育について学ぶことが初めてで、学ぶこと自体が楽しくて、どの巻も面白く読めました。特に音声などは、これまで舌の位置とか、考えたこともなかったのですが、勉強してみると、そうなっているのかと思ったり。僕ほど、楽しんで学んでいた人はいなかったんじゃないでしょうか。文法も、講師の先生が「日本語オタク」のようなところがある方で、その先生が授業中に投げかける文法に関するトピックも全部、興味を惹かれることばかりでした。

検定準備にNAFLをどのように活用した?

編集部:検定準備ということに関して、NAFLは役立ちましたか?

小平:各巻の最後に、その巻で学んだ内容についてテストがあって、僕は全部やりきれなかったのですが、これを真面目にやれば、検定に受からない人はいないと思いますね。

編集部:おおー! それはうれしい言葉です。その他に何か使いましたか?

小平:本試験の過去問と『日本語教育能力検定試験に合格するための本』、それと講師の先生が勧めてくださった問題集に取り組みました。ただ、あまり最初から全部の分野に手を広げず、ある分野が終わったら問題集をやって確認して、という形で進めました。

編集部:検定対策としては何月ぐらいから意識されたんですか?

小平:4月から7月までは、毎日講義で新しいことを学ぶので、検定対策の準備までは余裕がなかったのですが、8月に検定対策講座が始まり、そこから徐々に本腰を入れてという感じでした。検定対策講座が始まってからは講師の先生が出す宿題と、もう一人の先生から勧めてもらった問題集を自主的に解いて、その間に自分で過去問に取り組み、というように準備を進めました。でも、検定試験の勉強も、日本語に興味があったので、あまり苦ではありませんでした。

本試験での首尾は?

編集部:本試験は、いかがでしたか?

小平:試験Iはそれほど緊張せずにできました。試験IIも家でCDを聞いて練習していたので、落ち着いてやれば大丈夫と思っていました。それでも、本試験ではマークシートにマークして、問題用紙にも答えを書く余裕はないだろうと思っていたのですが、音がよく聞こえて「ゾーンに入った」とでも言うのか、全部問題用紙に答えを書けたんです。自己採点もちゃんとできました。

編集部:自己採点はどれぐらいでしたか?

小平:記述を除いて8割弱いってました。

編集部:それって最高点レベルですよ。すごいですね。かなり落ち着いてできたということですよね。試験Ⅲはどうでしたか?

小平:試験Ⅲは難敵で、おそらく自分がまったく知らない問題も出るだろうな、と思っていました。でも、そういう問題が出たら仕方ない、試験Iも試験IIも含めて、とにかく自分が知っていることは落とさないようにしようと思って臨みました。記述式解答も時間かかりましたし、思ったよりも時間は残らなかったです。

実際に教壇に立って教えはじめて感じることは?

編集部:養成講座を修了されて、すでに2校で教えていらっしゃるということですが、養成講座の実習と、実際の現場との違いは感じますか?

小平:実習は、事前に教案を提出して添削も受け、ある程度、練習もして行うので、そんなにひどい授業になることはありません。時間も20分ちょっとだったのですが、実際、今の学校は45分を4コマ担当しているので、180分の教案を考えなくてはなりません。180分の教案など書いたことがないので、それは大変ですね。2校それぞれ学習者の属性やレベルも違い、中には勉強意欲がない、モチベーションが保てないという学生もいます。正直、理想とのギャップはあります。

編集部:実際に教えはじめてから、NAFLをもう一度、読み返したりということは……?

小平:うーん、今は、その時間的余裕がないですね(笑)。でも、今読んだら、きっともっと理解できるでしょうね。特に今教えている教科書に出てくる文法項目について調べようと思った場合、NAFLのどこかに書いてあったという記憶はあるのですが、どこに書いてあるか、すぐに見つけられないので、それがわかる一覧表があると、すごくありがたいかもしれません。

編集部:なるほど。特定の教科書に合わせてというのは難しいですが、新人教師がつまづきやすい項目について、ここに説明があるよ、という一覧があるのはいいかもしれませんね。NAFLは、実は教えはじめてからも役立つという声が多いんです。教案を作るときに見返すと、たぶん参考になりますし、ワンランク上の教案になると思いますよ。今はまだ余裕はないかもしれないですが、そのように今後も使っていただければ、編集部としてもうれしいです。今日はありがとうございました。

 

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