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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

YouTubeから生まれた日本語教材『Casual Nihongo / カジュアル日本語』出版しました

昨年、「50カ国・地域の日本語学習者に発信するYouTuberあっきーさんの活動」の記事でご紹介した、日本語教師YouTuberのあっきーさん。前回の記事掲載がご縁で、この度、アルクから『Casual Nihongo / カジュアル日本語』という新刊を出版しました。あっきーさんに、この教材に込めた想いをお聞きしました。(NJ編集部)

全世界の6万人の視聴者の声に応える 

編集部:あっきーさんには2019年10月にアルクのオフィスにお越しいただきました。その時の様子は、あっきーさんのYouTubeチャンネル「三本塾」の「日本語教材の出版社アルクに行ってきた!」で2回に渡って紹介していただきました。反響はいかがでしたか。

あっきー:お陰様で大きな反響がありました。「三本塾」自体もその後、順調に登録者数を伸ばし、もうすぐ6万人になります。

編集部:6万人ですか。すごい数ですね。昨年、「三本塾」でアルクを紹介していただいたことがきっかけで、「三本塾」の内容を教材にしませんかと、お声を掛けさせていただきました。

あっきー:ありがとうございます。出版のお話はとてもうれしかったのですが、正直、どういう本にしたらいいのか、YouTube動画の内容を紙の本で出す意味は何かと随分悩みました。

編集部:2日前に見本が納品になったばかりなのですが、実際にご自身の本を手にした感想はいかがですか。

あっきー:紙の本には紙の本の良さがあると改めて実感しました。YouTube等のICTの活用は昨今の大きなテーマですが、教室での授業や紙の教材といった「生」のもに対するニーズはまだまだ年齢を問わずあると思います。本という形にすることで書店店頭にも並びますし、これまで大学や職場でお世話になった先生方や家族にもきちんとした報告ができそうです。

編集部:今回、かわいいイラストがたくさん入っていて、編集部の特に女性陣に好評だったのですが、これはどなたが描いているんですか?

あっきー:これまで「三本塾」にも出演してもらったHanaという友達に描いてもらいました。お陰でYouTubeでは扱いにくかった「どういう場面でどういう人が使うのか」という情報を、イラストを通して視覚的に伝えることができたと思います。

学習者には自然な会話を通して日本人の友達を作ってほしい 

編集部:改めて、今回出版した『Casual Nihongo / カジュアル日本語』を紹介してください。

あっきー:本書は16の章から成っていますが、これはYouTubeチャンネル「三本塾」の動画の中から、特に日本語学習者が間違えやすいものや視聴者からの反響が大きかったものを選びました。

編集部:「が」と「は」の使い分け、「ありがとう」、「さようなら」といった頻繁に使う日本語、「こそあ」や「を」の省略など、学習者がよく間違えるトピックや不自然になりがちな日本語を取り上げていますね。

あっきー:はい。各章は「解説」「会話」「問題」の3部構成にしています。「解説」ではYouTube動画の内容をもとに、言語の形式や意味を解説しています。QRコードからYouTubeの動画にすぐに飛べるようにもなっています。「会話」は4コマのイラストで使う場面や状況が一目でわかるようになっています。「問題」では「会話」のイラストの台詞を考えてもらうのですが、本書では解答例を複数示しました。実世界では同様の場面、内容でもその日本語は様々な言語形式として現れるため、決して答えは一つではありません。場面先行で考え、そこでどういった表現の仕方ができるのかを考えるきっかけになればと思っています。

編集部:基本的には独習用の日本語教材なのですか? 

あっきー:独習用やサブテキストとしても使えますが、学習者には1冊の「本」として楽しみながら読んでもらえたらと思います。それから、日本語の先生方が授業のTIPSとしても活用できる内容になっていると思いますので、教育関係者の方々にもぜひ読んでいただきたいです。

編集部:扱っている項目は初級レベルが多いようですね。

あっきー:確かに初級の項目が多いのですが、レベルに関係なく、多くの学習者が間違えやすい項目を取り上げています。ですので、全てのレベルの学習者に役立つと思います。

編集部:確かに、JLPT(日本語能力試験)のN1やN2に合格していても、ここで扱っているような日本語がうまく使いこなせていない学習者はたくさんいますね。ちょうど「TOEICのスコアは高いけど英語が話せない日本人」の逆、つまりテストはできるけど日本人の友達と自然なおしゃべりができないといった学習者に日本語を使いこなせるようになってもらうための教材ですね。

あっきー:英語と日本語では市場の規模が全く違うので仕方ないかもしれませんが、日本語教材はまだまだバリエーションが少ないように思います。今回の教材はこれまでにあまりなかった日本語教材だと思います。学習者や日本語の先生方からどんな評価をいただけるか楽しみです。ちょっと怖くもあるんですが(笑)。

将来は「三本塾」で若手教師を育てたい

編集部:あっきーさんはYouTubeチャンネルも運営しながら、日本語教育機関で日本語も教えています。今後もその二つの活動を継続していくのですか?

あっきー:はい。YouTubeチャンネル「三本塾」は今後も続けていきます。教室での活動なくして、良質なビデオの作成はできないと思っていますので、学校での仕事も続けていきます。いつか「三本塾」という学校を仲間と立ち上げてみたいとも思っています。

編集部:その学校ではどんなことを実現したいのですか。

あっきー:世の中には力があるのに十分に評価されていない若手の日本語教師がたくさんいると思うんです。実際、私の周りにもたくさんいます。そういう教師を育て、そういう教師が活躍できる場を作りたいですね。

編集部:それはYouTubeやオンラインではなくリアルな教室ということなんですね。

あっきー:デジタル(バーチャル)とアナログ(リアル)には、各々の良さがあると思うんです。YouTube動画にはYouTube動画の良さがあり、紙書籍には紙書籍の良さがあるのと同じですね。

編集部:今回、あっきーさんの存在を知り、『Casual Nihongo / カジュアル日本語』が出版できたのは、あっきーさんがYouTubeチャンネル「三本塾」の動画を、たまたま編集者が目にしたからです。若手教師が活躍するためには、どういう形でもいいので、自分から発信するということが必要だと思います。

あっきー:インターネット環境の発達やSNS等の普及で、以前より個人からの発信が容易になりましたし、有用なものを発信することはとても大切だと思います。ただ、発信したところでそれがその他の多くの情報に埋もれてしまったり、あまり関係のない他者に情報を晒してしまうというリスクがあったりと、意外と難しいんです。潜在的なチャンスは増えていると思いますが、新時代には新時代に合ったスキルを身に付ける必要があると感じています。

編集部:将来「三本塾」という学校ができて、そこからさまざまな優秀な教師の活動が発信されたり、若手の教師が集い研鑽したりするような場になれば、すばらしいですね。本日はどうもありがとうございました。 

あっきー

日本語教師。日本語教育学修士。日本語学校、大学、日本語教師養成講座等で日本語教育に携わり、2017年に三本塾を立ち上げる。

 

Casual Nihongo / カジュアル日本語

Casual Nihongo / カジュアル日本語

  • 作者:あっきー
  • 発売日: 2020/03/30
  • メディア: 単行本