3月にミャンマーで初めて行われた特定技能試験(介護分野・外食分野)。この半年間、ゼロから始めて一生懸命に日本語と介護技術を学んで来た学生たちが難関に挑みました。新型コロナウイルスの暗い影が忍び寄りつつある中、学生たちは大いに奮闘し、素晴らしい結果を残しました。前回に引き続き、アミクスグローバルミャンマー・ランゲージセンター日本語主任の渡辺幸子先生から日記風に様子を伝えてもらいました。(NJ編集部)
2020年3月のミャンマー便り
3月6日(金)
毎週金曜日は授業がありませんが、今日は試験前なので専門試験の特別授業です。介護を受験する生徒は、先週に続きボディメディカルのテキストを元に行いました。片麻痺の要介護者を想定し、①杖を持って歩く、②段差や階段の上り下り、③入浴時の介助について、2人1組になって実践。いずれも、左右どちらの片麻痺かによって、手や足を出す順番が変わります。
たとえば、左片麻痺(左半身に麻痺があり、右半身は麻痺なし)の要介護者を想定した動きをすると、最初はテキスト通りの動きができているのに、繰り返しているうちにだんだん反対の動きになってしまって、それに気付いた周りの学生が大爆笑。また別の男子学生は、腰をかがめて膝を曲げて、いかにも「おじいさん」な様子で真剣に杖をついて歩く姿に、また大爆笑が起こりました。
次に段差や階段の上り下りの練習では、実際に教室前の階段を利用して練習しました。狭い階段なので一斉練習はできないものの、周りでクラスメイトが見守る中1組ずつ上り下りの練習をしました。階段の上り方としては、①杖②健側(麻痺のない側の足)③患側(麻痺がある側の足)です。1組ずつ、体に覚えさせるように、1・2・3のリズムに合わせて階段を上っていきます。それに合わせて見守るクラスメイトも「1・2・3」「1・2・3」と声を合わせます。自分の順番ではない時も、しっかりクラスメイトの動きを見て、その場で足踏みしながら練習していました。本当に、一生懸命な学生たちです。最後は入浴時の介助を練習して、この日は終了となりました。
※この週末、渡辺先生はご事情があり、後ろ髪を引かれながら日本に一時帰国しました。
3月11日(水)
この日は、以前から決まっていた介護と外食の各専門試験に向けて、日本とミャンマーをインターネットでつないだ特別講義の日です。私自身も講義を受けたかったですし、何より近くで生徒達を見守りたかったですが叶わず、ミャンマー人の先生から生徒達の受講風景の写真を送ってもらいましたが、いつものように一生懸命授業を受けている様子が伝わってきて安心しました。この特別講義で講義をしてくださった先生方、様々な準備をしてくださった皆様、そしてこの日本語で行われた講義をミャンマー語に通訳して学生たちに伝えてくれたミャンマー人の先生方。全ての皆様に感謝しかありません。本当にありがとうございました。学生たちからは、「難しかったけど、大丈夫です。」と心強い声が。試験まであと1週間。ラストスパート、頑張りましょう!
3月16日(月)
わが校から特定技能ビザ取得者(正確には、ビザ申請者)第1号がついに出ました! この学生は以前、日本(愛知県)で技能実習生として3年間パン製造の仕事をした経験があり、もう一度日本へ行って、食品製造の分野で働きたい、と希望していた学生でした。昨年9月のオープン時より当校で日本語の勉強を続けながら、昨年12月のJLPTのN4に合格し、日本での就職先を探していましたが、本日面接して頂いた企業から内定を頂き、見事就職が決まりました。本人もほっとしていたようですが、私たちも本当にほっとしました。これから必要な書類をそろえて、1日も早い申請ができたらと思います。
3月17日(火)
特定技能試験日の前々日。世界で猛威を振るっている新型コロナウイルス対策として、ついにミャンマー政府から「学校全校閉鎖」の措置命令が出ました。もちろん日本語学校も例外ではなく、朝ミャンマー人スタッフから受けた報告の電話では、現地では前日夜に発表があったようで、既に同じ通りにある学校はどこも閉まっているとのこと。数日前からミャンマーへの入国制限措置(中国、韓国、イタリアなど7か国。日本は除外)が発令され、本日時点でまだ国内の陽性患者は出ていないとのことですが、早めに対策が打たれました。今日は何とかギリギリ授業をしているようですが、明日からは完全に学校を閉めなければなりません。試験自体は予定通り行われる見通し、とのことなので、明日の授業はできなくなりましたが、この状況で試験が行われることに感謝し、学生たちには全力で挑んでもらいたいと思います。
3月19日(水)
朝からドキドキが止まりません。しかし学生の試験時間はほとんどミャンマー時間の午後(日本の夕方)。長い時間待つことしかできず、ミャンマー人先生がメールしてくれる「速報」を首を長くして待ちました。この特定技能試験の実施が決まったとき、日本語基礎テスト(JFT-Basic)を受験する学生の中から5人合格すれば万々歳、と密かに目標を立てていました。なぜなら、このJFT-BasicはJLPTでいうとN4レベルの日本語の試験で、日本での生活に困らない最低限度のコミュニケーションができるかを測る試験なのですが、受験時点でN4相当範囲の教科書が全部終わらないことがわかっていたからです。もちろん文法のみならず聴解や読解もあるので、その分テスト対策の時間を取って対策してきましたが、結果やいかに……。
夕方、ついに結果が判明しました。JFT-Basicは17人受験中7人合格! 目標達成です! そして驚いたのは、残念ながら不合格でしたが、あと一歩で合格だった生徒がたくさんいたことです。250点中200点以上で合格ですが、2点足りずに落ちた学生もいました。これは悔しい……。しかし1点足りなくても不合格は不合格。それが試験です。次はギリギリ不合格でなく、「全員」余裕で合格できるように頑張りましょう。
そして介護と外食の専門試験の結果も判明し、今回、外食専門試験にもJFT-Basicと同時合格した学生が1人誕生しましたー! やったー!! あとは日本の外食業の企業と面接して内定を頂ければ、特定技能ビザ取得第2号となります。良い企業様とのご縁がありますように。
また介護は、JFT-Basicの他に「介護技能」と「介護の日本語」の試験を受けて合格しなければなりません。今回の結果は、「介護技能」12名受験中3名合格、「介護の日本語」は12名受験中5名合格でした! しかし今回はJFT-Basicと合わせて3種類の試験に同時合格した学生はおらず、第3号の誕生は次回以降の試験に持ち越しとなりました。
しかし開校わずか半年、ほぼゼロ初級からスタートした学生達が短期間でこれだけの成果を出すことができました。本人たちの努力はもちろんですが、あらゆる方面から日々サポートしてくださっている方々のおかげに他なりません。本当にありがとうございました。そしてこれからも引き続き、宜しくお願い致します。
そして学生たち! とにかく、今日まで全員本当によく頑張りました! おつかれさま!! 今日はゆっくり休んでください。パチパチパチ(拍手)!!!