2019年6月に公布・施行された「日本語教育推進法」は、多文化共生の実現のために日本語教育の推進を不可欠なものと位置づけ、日本語教育を実施する責務の主体を明確にした画期的な法律です。これを受けて、2019年から2020年にかけて、日本語教育推進関係者会議が複数回行われ、「日本語教育の推進に関する基本方針(案)」がまとめられました。この基本方針について、4月24日(金)までパブリックコメント(国民からの意見)が募集されています。今後の日本語教育推進の方向性や具体的施策に関して意見を述べられる大切な場です。ぜひ、お一人お一人のご意見を積極的にお送りください。(編集長)
意見は以下の分類に分けて募集
パブリックコメント募集の詳細は以下の文化庁のホームページにあります。
https://www.bunka.go.jp/shinsei_boshu/public_comment/92141301.html
意見は電子政府の総合窓口(e-Gov)のWebサイト上の「意見提出フォーム」から簡単に提出できます(上記からリンクあり)。郵送・FAX・電子メールでも提出できますが、「電話による意見の受付は致しかねますので,御了承ください」とのことです。
意見は以下の分類に基づき記載することになっています。
はじめに
第1章 日本語教育の推進の基本的な方向
1 日本語教育推進の目的
2 国及び地方公共団体の責務
3 事業主の責務
第2章 日本語教育の推進の内容に関する事項
1 日本語教育の機会の拡充
(1)国内における日本語教育の機会の拡充
(2)海外における日本語教育の充実
2 国民の理解と関心の増進
3 日本語教育の水準の維持向上等
4 教育課程の編成に係る指針の策定等
5 日本語能力の評価
6 日本語教育に関する調査研究及び情報提供
第3章 その他日本語教育の推進に関する重要事項
2 日本語教育を行う機関に関する制度の整備
基本方針(案)は、至極真っ当なものだが、、、
基本方針(案)は17ページ程度のもので、特に専門的な言葉で書かれているわけではなく理解しやすいと思いますので、まずは皆さんご一読されることをお勧めします。
私も読んでみました。「はじめに」では、日本語学習者の増加と多様化、それに対応するここ数年の行政の動きや法律などについて簡潔にまとめられています。第1章では、日本語教育を実施する責務の主体が述べられています。第2章は国内と海外に分けられ、国内では子ども、留学生、労働者、難民、地域など対象別に具体的施策例がまとめられています。さらには、日本語教育に関する関心を国民に持ってもらう方法、日本語教育機関や日本語教師の水準・資質の向上、日本語教育課程や日本語能力評価、日本語教育に関する調査研究などに幅広く言及されています。最後に第3章ではその推進体制等がまとめられています。
読んでみた率直な印象としては、書いてある内容は基本的に日本語教育を推進しようというものですので、これに180度反対するような日本語教育関係者は少ないと思います。ただ、そんな時は注意も必要です。考えなければならないのは、ここに書かれていることで十分なのかということ、さらにはここで漏れていることや欠けていることがないかという点です。そのためには、この基本方針(案)は若干批判的に読まなければならないかもしれません。
基本方針(案)を考えるヒント
そんなことをあれやこれやと考えていたところ、基本方針(案)に対する具体的な意見がWEB上でも見られるようになりました。
例えば、「生活者に対する地域日本語教育のよりよい形をつくるための7つの提言」が、米勢治子さん(東海日本語ネットワーク副代表)と中河和子さん(トヤマ・ヤポニカ代表理事)のお二人が呼びかけ人となり、多くの日本語教育関連の賛同者を得て公開されました。
これは、「日本語教育の推進に関する基本方針(案)」の中の、主に、第1章の日本語教育の推進の基本的な方向と、第2章の日本語教育の推進の内容に関する事項の中の特に「地域における日本語教育」について、具体的に提言を行っているものです。これを読むと、「なるほど、こういうところは言葉が足りないな」とか「ここまで具体的に示しておいたほうが確かにいいな」と思えるものばかりです。日本語教育の推進に関する基本方針(案)を読んで、どんな意見を送ったらいいか悩んでいる方は、ぜひ参考になさってください。
また、ここでの提言は、「基本方針○ページの第○章に○○○○○○○○という文言を盛り込むべきである」という極めて具体的な形になっているという点でも参考になります。その意見を採用する・しないに関わらず、取りまとめる事務局としてはこのように具体的に書いてもらったほうが扱いやすいと思います。
「日本語教育の推進に関する基本方針(案)」へのパブリックコメントの締切まではあまり時間がありませんが、ぜひ皆さんもパブリックコメントを文化庁へお送りいただければと存じます。私も日本語教育関係者の一人として、さっそく意見を送りました。