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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

休校中のオンライン授業で見えてきたこと─ミャンマーの日本語教室から

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新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、3月半ばに出された学校閉鎖の措置命令。このコラムでお伝えしてきているヤンゴンの日本語学校も休校していますが、その間もマンツーマンのオンライン授業などを組み込んで学習は続いています。休校期間中の様子を、アミクスグローバルミャンマー・ランゲージセンター日本語主任の渡辺幸子先生に日記風に伝えてもらいました。(NJ編集部)

2020年4・5月のミャンマー便り

4月22日(水)

閉校して、はや1カ月。本来であれば、4月10日から19日まではミャンマーの年末年始に当たり、ミャンマーのお正月恒例「水かけ祭り」が開催されているはずでした。しかし、新型コロナウイルス対策のため3月早々に水かけ祭りの中止が決定。ミャンマー人にとって今年は例年とはまったく違うお正月になりました。加えて、ミャンマー各地で午後10時から午前4時までの夜間外出禁止令が出ていました。そんな状況の中、ほとんどの学生たちは、学校から課された宿題と共に帰省し、定期的に実施される先生との個別オンライン授業では、宿題チェックや日本語の会話練習などを行っています。

訳あって早々に日本に帰国していた私も今日からオンライン授業に加わり、学生とオンライン上で会うことができました。久しぶりに顔を見ましたが、全然変わってない!(といってもまだ1カ月。当たり前ですね。〔笑〕) 毎日のように顔を合わせていたので、たった1カ月会わなかっただけでとても久しぶりな感じがしました。とりあえず4月30日までの休校期間に全学生とオンライン授業をすることが私のミッションです。がんばります!!

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休校に入る前の教室の様子

4月27日(月)

本日、5月15日までの休校延長が決定しました。日本もそうですが、ミャンマーも新たな感染者が日々報告されており、終息が見えません。4月30日まで国際線航空便の着陸禁止措置が取られていますが、日本(成田)・ヤンゴン間の唯一の直行便であるANA便も、利用客激減を理由に5月10日以降の運休が発表されました。また、ヤンゴンは特に感染者が多く、5人以上の集会禁止、薬局など一部の店を除く閉店が5月15日まで延長されるなどの措置が講じられています。

当校の学生で、田舎に帰らずヤンゴンに残っている人が何人かいます。どうして帰らなかったのかを聞くと、ヤンゴンから田舎に帰ると2週間の隔離生活をしなければならず、家族にも迷惑がかかるから、と言います。地方ごとに取られている措置は違うのかもしれませんが、何人かの学生はそう説明しました。国内移動だけで2週間の隔離生活。日本では考えられませんが、本来はそのくらい徹底しないと感染拡大を防ぐのは難しいのかもしれません。

4月30日(木)

いったん、今日までで全学生とのオンライン授業が終わりました。生活リズムが昼夜逆転している学生もおり、完全に寝起きで対応してくれた学生も数人いました(笑)。しかし最初に対面したときに「先生~!」と言いながら見せてくれた笑顔はみんなかわいくて、何より元気で安心しました。ただ、何人かの学生とは会えませんでした。帰省先のインターネット環境が悪く、安定してつなぐことができないというのが主な理由でしたが、中にはヤンゴンから田舎に帰って隔離生活中の学生、手術をして入院中の学生、オンラインアカウントを何者かに盗まれてしまった学生もいました。とにかく、みんなが早く通常の生活に戻れるように祈るばかりです。

休校延長が決まったので、引き続きオンライン授業をしていきます。学生のみなさん、5月もいっしょにがんばりましょう!

5月10日(日)

引き続き、オンライン授業をしています。日本ではゴールデンウイークと呼ばれる連休も、ミャンマーでは5月1日と6日の2日だけが祝日だったので、ほかの日は授業をしていました。オンライン授業で改めて1人1人と向き合うことによって、教室での「1:大人数」ではわからなかった、それぞれのいいところも弱点もリアルに見えてきます。学生自身がほかに頼る学生がいないので、自分が主体となって話さなければならないという環境が何より良いのかもしれません(笑)。

ある初中級の学生は、学校では教えていない難しい文法や語彙、オノマトペまで自分で調べて勉強し、素晴らしい日記を書いていました。またある初級の学生は、すでに勉強した数の数え方(~つ)を忘れてしまっていたので、いっしょに復習しました。ミャンマー人の先生に他の学生の様子を聞いたところ、動詞の普通形や意向形への変換が曖昧になっていたり間違えていたりする生徒が結構いる(泣)そうで、「その場でもう一度説明して、きちんと復習するように言いました」とのこと。

教師としても、目の前の学生が何を理解し、何をまだ理解できていない(あるいは忘れている)のかが明らかにわかるので、学生自身に間違った個所を気づかせ、いっしょに訂正していくことも可能ですし、それぞれのペースに合わせて進められる部分が大きいので、このメリットを最大限に生かしながら続けていければと思います。

5月29日(金)

久しぶりの日記です。

本日、ミャンマー政府より、各種制限措置の6月15日までの延長、および一部の制限措置の緩和が発表されました。それによると、これまで規制されていた5人以上の集会が緩和され、学校の再開が可能になりました(6月8日~再開予定)。しかし6月15日まで国際線旅客機の着陸禁止措置の継続も併せて発表されたため、私自身はまだミャンマーへ戻れず、再開後の授業は3人のミャンマー人の先生方にお願いすることになります。全4クラスのうち初中級の2クラスは、あと1カ月程で日本語教育課程修了予定です。その後は、専門授業が待っています!生徒たちと再会できる日を心待ちにしながら、日本からオンライン授業を続けます。