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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

新型コロナ感染防止の準備を整えて学校再開を待つ ─ ミャンマーの日本語教室から

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今年2月から特定技能クラスの様子をお伝えしているヤンゴンの語学学校、アミクスグローバルミャンマー・ランゲージセンター。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、3月半ばから学校閉鎖が続いていますが、いよいよ再開の日が近づいてきました。再開に向けた準備などを、同校日本語主任の渡辺幸子先生に日記風に伝えてもらいました。(NJ編集部)

2020年6月のミャンマー便り

6月1日(月)

来週の学校再開に向けて、学校内の設備を新しくしました。具体的には、学校の入口にアルコール消毒液を置いて、入校者にはまず必ず手を消毒するように促したり、今まで2台のデスクを並べていた受付カウンターも、デスクを離して、さらに飛沫防止のためのビニールシートで覆ったり、教室の机もビニールシートで区切って、学生たちができるだけ隣り合って座らないように工夫したりしました。新しくなった学校内の様子を写真に収め、現地のミャンマー人スタッフが、学校再開に必要な書類(写真含む)を役所に提出しに行ってくれたのですが、そこで判明した驚きの事実……。

①学校が本当にこの状態になっているか(保たれているか)、役所が立ち入り検査をする。
②立ち入り検査が終わるまで学校を再開してはならない。
③立ち入り検査にいつ行くかはわからない。
④立ち入り検査が終わらないうちに、勝手に学校を再開させた場合、あなた(スタッフ)を逮捕する。

というものでした。

①②④の条件はのめたとしても、③は早くしてほしい。でもまぁ今日は月曜日だし、今週中に来てくれるよね? 来週から再開したいって、言ったもんね!?と悠長に構えて1日を終えたのですが……。

6月2日(火) 役所からの連絡はなく、先月から続いているオンライン授業で1日を終えました。

6月3日(水) 役所からの連絡なし。

6月4日(木) 今日も、なし。

6月5日(金) あっという間に週末。今日も連絡はありませんでした。。。ということは、来週から再開できない! 帰省していた学生たちも、もう学校再開の前提でヤンゴンに戻ってきてるのに……。何ということでしょう……。学生たちにも本当に申し訳ない。。。でも、とりあえずオンラインを続けるしか道はありません。。引き続き頑張ります。

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ビニールシートで三方が囲まれた机が並ぶ教室

6月8日(月)

今日は、以前から計画していた口頭試験の日です。普段オンライン授業ではミャンマー人の先生が週3回文法項目を教えており、私もそれぞれの学生と週1回程度、主に会話練習の授業をしていますが、口頭試験を実施するのは初めて。私の日本語をすぐに理解できるか、どれだけ正しい文法で話せるか、楽しみです。

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口頭試験が終わりました。今日受けられなかった学生は後日順番にやっていきますが、とにかく、「試験」というだけに緊張している学生が大半でした。普段はもっと上手に話せるのに硬くなってしまった学生、質問が聞きとれなくて「先生、もう一度お願いします。」を繰り返す学生、質問の内容は理解できているのに、無言・無表情で考え込む学生など、いろいろな反応がありました。また、私の評価は高くないのに(ごめんね)、学生自身の手ごたえは「おおむね80%以上できた」と評価がかけ離れていることもありました。

試験の様子は録画して学生ごとに編集したファイルを送り、もう一度自分で見て、きちんと答えられているかや、考えているとき、答えているときの表情も見てみるように伝えました。私自身、今回の試験から学んだこともたくさんあり、学生へのフィードバックをしながら、今後の授業に活かしていきたいと思います。

6月13日(土)

本日、6月15日までとされていた各種制限措置が、6月末まで延長された旨、大使館からメールがありました。7月には帰れるでしょうか……。そして、立ち入り検査はいつ来るのでしょうか……。 

6月16日(火)

立ち入り検査はまだ来ません(T_T)。本当に何の連絡も入っていないのか、現地スタッフに電話で確認したところ、「まだ来ていないし、連絡もありません。7月21日に公立の学校が始まるので、日本語学校はそのあとかもしれません。」とのこと(ToT)。はぁー!!なんでやねん!!と関西人の私は一瞬怒り狂っていましたが、不確定情報ではあるものの関係各所に連絡し、共有しておきました。もしその情報が本当なら、今後の方針をあらためて考えなければなりません。

6月18日(木)

一度ヤンゴンに戻ってきていた学生たちでしたが、何人かはまた田舎に帰ってしまったそうです。普段から「ヤンゴンで生活するのは高い!」と言っていたので、学校が再開されずヤンゴンにいる理由がないのであれば仕方がないのかもしれませんが。

しかしこの状況のなかで、ありがたいことに当校の学生(介護希望者)の就職面接をしていただける機会をいただき、6人の学生が選ばれました。数回練習をしてから本番に臨むことになります。全員力を発揮できるように頑張ってほしいです。ただ、仮に内定をいただけたとしても、特定技能試験に合格しなければ日本へは行けません。ミャンマーで今年3月にたった1度だけ実施された試験が、今のところ最初で最後の試験になっています。こちらも早く再開できるように、世界的パンデミックの終息を祈ります。

6月29日(月)

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オンライン授業。マンツーマンで会話練習を行う

オンラインで面接練習をしている様子を見ました。みんな普段はとてもいい表情なのに、今日は表情が硬く、笑顔もひきつっていて、具体的に面接が決まったことでとても緊張している様子がわかりました。また、質問に対して言いたいことが日本語でまとまらなかったり、助詞の間違いも散見されたり、途中からは疲れの色も見え始めましたが、最後まで熱心にメモを取りながら頑張っていました。日本で働きたいというみんなの夢がかなうように、頑張っていきましょう!(面接本番は7月3日の予定です。)

また、本日、ミャンマー政府から入国制限措置期限の延長が発表されました。これまでは半月ごとの延長だったのに、今回は7月末までの1カ月。7月中は戻れないことが確定してしまいました。そして相変わらず立ち入り検査は来る気配もありません。4クラス中2クラスは、まもなく日本語課程を終え、各種専門講義の授業になりますが、コロナの影響で、介護以外の職種は日本での就職の見通しが立たなくなってしまいました。あらためて、一日も早い終息を願うばかりです。