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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

日本語教育能力検定試験 直前1カ月の過ごし方

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10月25日(日)に開催される、令和2年度の日本語教育能力検定試験まで、残すところ約1カ月となりました。受験される方のところにはそろそろ受験票が届く頃です。試験準備は順調に進んでいますか? 試験直前の1カ月間はとても大事な時期なります。受験生の皆様がこの時期にやっておくといいこと、注意しなければならないことをまとめましたので、ご参考になさってください。(新城宏治)

時間内に問題を解けるようにしておく

他のさまざまな試験と比較して、日本語教育能力検定試験の特色の一つとして言えるのは、「試験時間が長い」ということです。試験前後を含めると、大体朝の9時から夕方の5時ぐらいまでかかりますので、約8時間の長丁場になります。また、試験の種類も3つあり、試験Ⅰが100問、試験Ⅱが40問、試験Ⅲが80問+記述式問題と、規定時間内に大量の問題を解かなければなりません。この際に大切なのは、問題を解く「スピード」と、最後までペースを落とさない「持続力」になります。

毎年、たくさんの受験生の方を見てきて、実力はありながら残念ながら合格できなかった人の中には、難しい問題に時間を掛けすぎて最後まで解き終えられなかったという方や、午前中の試験Ⅰは調子が良かったが午後の試験Ⅲで集中力が途切れたという方がいらっしゃいます。これは非常にもったいないことです。本試験に向けては、長時間考えて満点を目指すのではなく、制限時間内に解いて合格点を目指すことが必要です。

そのための準備として最適な方法は、実際にまる1日を使って、まだ見ていない過去問を本試験と同じ時間配分で解いてみることです。それで時間内に解ければ問題ありませんし、どの試験で時間が足りなくなったのか、どこで時間を掛けすぎたのかなどが分かれば、修正して本試験に挑めます。

もし、お仕事や学校の都合でまる1日の時間が取れない場合は、2日に分けて試験を分割して同じことを行ってもいいと思います。つまり、1日目は90分かけて試験Ⅰと30分かけて試験Ⅱの問題を解いてみる、2日目は120分かけて試験Ⅲの問題を解いてみるということです。

耳慣らしは短時間でも毎日行う

試験Ⅱの音声対策は短時間でもいいですので、毎日聞くことをお勧めします。毎日聞くことで、耳が慣れていきますので、アクセントの発音の違いが1日目より2日目、2日目より3日目と徐々に明確に聞き分けられるようになってきます。逆にしばらく聞かないでいると、その感覚が鈍ってしまいます。

これは楽器やスポーツの練習と全く一緒で、繰り返しが重要です。そのうち問題自体も覚えてしまうぐらいに慣れてくると、選択肢を見なくても耳で聞いただけで、「このアクセントはドミミドミドミだな」とか、「イントネーションとアクセントの下がり目が違うな」とか、「歯茎摩擦音を歯茎破擦音で読んでいるから調音法の違いだな」などといったことを、頭の中でそらんじることができるようになります。

使う音声は、本試験の過去問の音声や、『2020年日本語教育能力検定試験 合格するための本』などに付属している音声を活用するのがいいでしょう。

記述式はさまざまなトピックについて考える癖を付ける

音声と合わせて、(毎日でなくてもいいですが)日常的に考える癖を付けておくといいことがあります。それは試験Ⅲの最後に出題される記述式問題の対策として、さまざまなトピックについて自分の意見と根拠を考えることです。

記述式問題は主催団体の公益財団法人日本国際教育支援協会のホームページには、「『言語にかかわる事象』や『教育実践の方法・内容』などに対する考えや主張を問います。考えや主張の是非ではなく、その伝え方と日本語力の面から測ります」と書いてあります。さまざまな考えに対して、「自分はこう思う」「その理由はこうだからだ」と考える癖を付けましょう。

事前に考えていたものと同じトピックの問題が本試験で出題される可能性は低いですが、いろいろなことを日頃から考える癖を付けておくと、本試験でも自分の考えや根拠をまとめやすくなります。主催団体が「考えや主張の是非ではなく」と書いているとおり、どのような考えであってもいいのですが、その根拠を論理的に分かりやすく説明する能力が必要になります。

ここ1、2年の日本語教育関連の出来事をチェックする

出題範囲から出題される問題の他に、「日本語教育の現状」として、ここ1、2年の日本語教育に関連した出来事や統計数値などからの出題が毎年あります。以下に関連省庁や教育機関の関連ホームページをご紹介しますので、参考にしてください。省庁によっては情報が詳しすぎてどこを見ていいか分からないものもあるので、できるだけ簡潔に分かりやすいページをご紹介しています。

・世界の日本語教育(国際交流基金) 「2018年度海外日本語教育機関調査(速報値)」

https://www.jpf.go.jp/j/about/press/2019/dl/2019-029-02.pdf

 

・国内の日本語教育(文化庁) 「令和元年度国内の日本語教育の概要

https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/nihongokyoiku_jittai/r01/

 

・子供の日本語教育(文科省) 「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成30年度)」

https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/31/09/1421569.htm

 

・国内の外国人登録者数(法務省) 「令和元年末現在における在留外国人数について」

http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri04_00003.html

最後に体調に気を付ける

最後に何よりも大切なのは、この1カ月間、規則正しい生活を送り、しっかり栄養と睡眠を取って、心身ともに健康に過ごすということです。体調を崩してしまうと当日に実力を発揮できません。また、今年は風邪やインフルエンザだけではなく、新型コロナウイルスにも気を付けなければなりません。

主催団体である公益財団法人日本国際教育支援協会のホームページには、「自己ヘルスチェック表」というものがアップされ、受験者はダウンロードして、試験当日にチェックの上、会場で提出することになりました。当日、体調が悪い場合は、最悪、受験を断られる場合もあります。

今年の日本語教育能力検定試験が予定通り実施され、受験される皆様が実力を遺憾なく発揮され、無事合格の栄冠を勝ち取られることを心からお祈りしております。

執筆/新城宏治

株式会社エンガワ代表取締役。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の良さを世界に伝えたいと思っている。