日本政府は「国際的な人の往来再開に向けた段階的措置について」を発表し、2020年10月から、ビジネス上必要な人材等に加え、順次、留学、家族滞在等のその他の在留資格も対象とし、原則として全ての国・地域からの新規入国を許可することを決定しました。全国の日本語学校や大学、受け入れ企業や施設にも少しずつ海外から渡航者が到着し始めています。日本政府は日本国内および海外の感染状況を見ながら経済を動かすべく、慎重に制限緩和を進めているようです。(編集部)
※「国際的な人の往来再開に向けた段階的措置について」は今後も随時更新される可能性があります。最新情報は、以下の外務省のトップページからご確認ください。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/index.html
特定技能の合格者が順次来日
日本は2020年4月から海外からの入国制限措置を取りましたが、その前後あるいはそれ以降も海外では特定技能の試験が行われてきました。特定技能の資格で来日するためには、全ての分野で国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験N4以上に合格することが要件となっています。7月の日本語能力試験は全世界で中止になりましたので、ここでは日本語基礎テストの実施状況を見てみましょう。
https://www.jpf.go.jp/jft-basic/report/index.html
3月:インドネシア、カンボジア、フィリピン、ミャンマー、ネパールで実施/受験者3801名、基準点到達者1359名
7~8月:インドネシア、カンボジア、フィリピン、ネパールで実施/受験者2283名、基準点到達者886名
9月:モンゴル、インドネシア、カンボジア、フィリピン、ネパールで実施/受験者1361名、基準点到達者591名
この基準点到達者はこれから来日する候補者になります。もちろん3月以前に試験を受けている人もいるでしょうし、昨年以前の日本語能力試験に合格している人もいますので、母数はさらに大きくなると思われます。
特定技能については、「特定技能基準省令(1号特定技能外国人支援計画の内容等)」の第3条で、「特定技能外国人支援計画には,次に掲げる事項(本邦での生活に必要な日本語を学習する機会を提供すること)を記載しなければならない」となっています。また、運用要領には「義務的支援」として、以下のように記されています。
http://www.moj.go.jp/content/001309875.pdf
日本語を学習する機会の提供については、次のいずれかによる方法で、かつ、1号特定技能外国人の希望に基づき支援を行う必要があります。
① 就労・生活する地域の日本語教室や日本語教育機関に関する入学案内の情報を提供し、必要に応じて1号特定技能外国人に同行して入学の手続の補助を行うこと
② 自主学習のための日本語学習教材やオンラインの日本語講座に関する情報を提供し、必要に応じて日本語学習教材の入手やオンラインの日本語講座の利用契約手続の補助を行うこと
③ 1号特定技能外国人との合意の下、特定技能所属機関等が日本語教師と契約して、当該外国人に日本語の講習の機会を提供すること
ビジネス関係者の制限緩和が進む
10月18日から菅首相はベトナム・インドネシアを歴訪し、フック首相との会談でベトナムからのビジネス関係者の受け入れについては、90日以内の短期出張者を対象に14日間の待機を免除することになりました。これには、新型コロナ検査や公共交通機関の不使用、移動先の制限などの条件が付きます。日本がこの枠組みを採用するのはシンガポール、韓国に次いで3カ国目になります。これにより日本とベトナムとのビジネス関係者の往来はかなり楽になりました。
同様の枠組みは中国とも合意を目指しているとされており、11月中旬の往来再開に向けて調整がなされていると言います。ビジネス関係者の来日は国・地域別では中国からが最多で、日本から中国へのビジネス関係者の出張も多いため、この枠組みが日中間で合意できれば、経済的なインパクトは大きいものと思われます。
11月からは1週間以内の海外出張から帰国した日本人や日本の在留資格を持つ外国人を対象に、新型コロナの陰性証明書や行動計画書の提出を条件に、2週間の待機を免除することになりました。ビジネス関係者が活動しやすいよう、さまざまな制限緩和が進んでいます。
さらに11月には中断されていたベトナムからのEPA(経済連携協定)に基づく看護師・介護福祉士候補者の受け入れが再開されました。政府はインドネシアやフィリピンからも受け入れを再開する方針です。
感染症危険情報の引き下げ
10月30日からはいくつかの国・地域の感染症危険情報が引き下げられました。レベルと対象となる国・地域は以下の通りです。また、これらの国・地域は、これまで159カ国・地域が対象となっていた入国拒否の対象からも外れました。これにより対象国・地域からの入国者は、空港でのウィルス検査が不要になりました。14日間の待機や公共交通機関の不使用などの措置はこれまでと変わりません。
【引き下げレベル】
レベル3(渡航中止勧告)→レベル2(不要不急の渡航は止める)
【対象国・地域】
韓国、シンガポール、タイ、台湾、中国(香港、マカオ含む)、ブルネイ、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランド
その一方、ミャンマーやヨルダンなど、感染症危険情報がレベル2からレベル3へ逆に引き上げられた国もあります。日本政府は日本国内の感染者の増減や各国ごとの感染状況を見据えながら、一方で経済を動かすべく慎重に緩和を進めているようです。