文化庁が行っている「日本語教育人材の研修プログラム普及事業」の一環として、「生活者としての外国人」に対する日本語教師【初任】研修を担当しているインターカルト日本語学校が、2020年12月から2021年3月にかけて全国をオンラインでつないだ全5回の無料公開セミナーを行います。オンラインセミナーは各定員が1,000名。場所によっては会場参加もあります。記事の後半でセミナーの背景をインターカルト日本語学校の加藤早苗校長に伺いました。
オンライン公開セミナー概要
①「生活者としての外国人就労者と日本語教育」〜わかりやすい日本語でコミュニケーションを〜(東北ブロック・福島)
このセミナーでは、生活者としての就労者について、特に日本語教育の観点から考えていきます。外国人就労者(技能実習生を含む)は実際にどのような仕事をしているのでしょうか? 毎日の生活は? 日本語学習は? 当日は、(公財)国際人材協力機構の元日本語指導アドバイザーの山口千秋さんをゲストにお迎えし、トークセッションを行ないます。技能実習生の日本語教育の最前線にいた山口さんから、彼らにとって本当に必要な日本語とは何かについて語って頂きます。
登壇者(予定):山口千秋氏(元JITCO)/中川祐治氏(一般社団法人ふくしま多言語フォーラム)
主催:一般社団法人ふくしま多言語フォーラム(東北)
日時:2020年12月13日(日)14:00〜16:30(オンライン配信は16:00までとなります)
参加方法:オンライン(Zoom)/会場(ホテルハマツ)
お申し込み:
【オンライン】
https://www.kokuchpro.com/event/af94e88075461bd5cb9fff2e90261cfe/1435802/
【会場】https://www.kokuchpro.com/event/d28e34ac5c6fd22bda4bb2084b1e00d7/
②「生活者としての難民の皆さんと共に」〜日本語の学習が人生を豊かにする〜(関東ブロック・東京)
日本に暮らす難民の方たちについて、私たちは何をどれくらい知っているでしょう。ミャンマーの少数民族を支援するNPO法人PEACEのマリップ・センブ代表、長年にわたり政策面で難民支援をする中川正春衆議院議員のほか、日本語を学ぶ人、教える人、支える人と共にこれからの共生社会について考えます。テーマは「日本語の学習が人生を豊かにする」、日本語教育に携わる人だけでなく、広く日本中の皆さんに参加していただきたいと思っています。
登壇者(予定):中川正春氏(衆議院議員)/マリップセンブ 氏(NPO法人PEACE代表)/宗田勝也氏(大学教員)/寄田恭直氏(難民クラス担当日本語教師)/難民二世の方
主催:インターカルト日本語学校(関東)
日時:2021年1月17日(日)13:00〜15:00
参加方法:オンライン(Zoom)
お申し込み:
https://www.kokuchpro.com/event/af94e88075461bd5cb9fff2e90261cfe/1435809/
③「生活者としての外国人児童と人生の選択肢」〜機会と可能性を広げる学習の役割〜(東海ブロック・名古屋)
子どもたちが「自らの選択」に基づいて人生を歩んでいくことは、非常に重要なことです。しかし、外国人児童がこのような人生を歩んでいくのには、さまざまな困難が存在します。このセミナーでは、外国人児童のインタビューをもとに、専門家や現場の人の声も交え、外国人児童に対して適切な「チャレンジの機会」が与えられるために必要なことや、私たちが日本人としてできることが何であるか、ということについてみなさんと考えていく予定です。
専門解説員:南浦涼介氏(東京学芸大学)他1名
主催:Semiosis株式会社(東海)
日時:2021年2月7日(日)13:00~15:00
参加方法:オンライン(Zoom)/会場(なごのキャンパス)
お申し込み:
【オンライン】
https://www.kokuchpro.com/event/af94e88075461bd5cb9fff2e90261cfe/1435812/
【会場】https://www.kokuchpro.com/event/a1d7c655d217c48fe506a7717e5c14d3/
④「生活者としての日本で学ぶ留学生たち」 〜共生社会を担うグローバル人材〜(九州ブロック・久留米)
コンビニでよく見かける外国人。彼らのほとんどは、将来日本企業に就職することを夢見る留学生です。留学中に学ぶのは、専門知識や技術だけではありません。様々な出会いや生活の中で、日本人の価値観や生活習慣に触れることで、日本社会に適応していきます。当セミナーでは、その後の彼らがグローバル人材として活躍する姿、そして彼らの目に映った日本を知り、外国人との共生社会の在り方について考えます。
特別講演:佐藤修氏(公益財団法人 入管協会会長)
主催:久留米ゼミナール日本語学科(九州)
日時:2021年2月20日(土)13:40〜15:40
参加方法:オンライン(Zoom)
お申し込み:
https://www.kokuchpro.com/event/af94e88075461bd5cb9fff2e90261cfe/1435813/
⑤「生活者としての日系人と“Nikkei‟」 〜アイデンティティと生活基盤を求めて〜(沖縄ブロック)
「移民県」沖縄では、海外出身の日系(沖縄県系)人が少なからず生活しています。沖縄県では、ルーツの地に「還流」するそうした人々を同胞ととらえる一方で、海外の沖縄系コミュニティとのネットワーク強化を政策的に行っています。ルーツの地でアイデンティティを模索しつつ生活基盤を確立しようとする生活者としての日系人に焦点を当て、様々な背景を持つ人々の言語文化に関する現状と課題を共有し、多文化共生社会の在り方を考えます。
登壇者:アルベルト城間 氏(ミュージシャン)/比嘉アンドレス氏(名護市国際交流協会)/金城宏幸氏(国際言語文化センター代表)
日時:2021年3月6日(土)13:40〜15:40
参加方法:オンライン(Zoom)
お申し込み:
https://www.kokuchpro.com/event/af94e88075461bd5cb9fff2e90261cfe/1435814/
★お申し込みは各セミナーごとにお願いします。
加藤早苗校長にきく
――インターカルト日本語学校は長年にわたり文化庁の事業に関わってきていますね。これまでの経緯を教えてください。
はい、2009年から「生活者としての外国人」のための日本語教育事業、2018年からは日本語教育人材養成・研修カリキュラム等開発事業「生活者としての外国人」に対する日本語教師【初任】研修、そして2020年からは日本語教育人材の研修プログラム普及事業「生活者としての外国人」に対する日本語教師【初任】研修と、足掛け12年にわたって関わっています。
――もともと文化庁の事業に関わるようになったきっかけは何だったんですか。
2008年に学校の本部を高円寺から秋葉原に移したのですが、なじみのない全く初めての土地でした。そのため地元の学校や商店街へ挨拶廻りをしました。地元の人たちにとってみれば、初めて見る日本語学校や日本語学習者。ちょっと怪訝に思われた方もいらっしゃったかもしれません。そこで地元の方に我々の存在を知ってもらい、地元に根付いていくためにも「文化庁の委嘱事業を行っているしっかりとした日本語学校なのだ」ということをアピールしたかったんです。そんなこともあり少しずつ地元の皆さんの信頼を得ていくことができました。
――これまで関わってきた事業の分野は「生活者」ということで一貫していますが、これはなぜですか。
まだ高円寺に校舎があった時代に初めて日本語ボランティア教室を訪問した際に、あちこちから私に「先生!」と声が掛かったんです。よく見ればインターカルトの学生じゃないですか。学生は平日は日本語学校で、休みの日はボランティア教室で日本語を学んでいたんですね。みんな「日本語を学ぶ留学生」であり「地域社会の生活者」でもあるんです。日本語を学ぶことも大事ですが、近所の人と仲良くしたり、親子がコミュニケーションできたり、子供であれば学校生活になじんだりすることも大切だと思います。そのような問題意識から「生活者」への支援をしていきたいと考えています。2020年は【初任】研修プログラムを10月から行っており、現在約140人が参加しています。
――今回の「オンライン公開セミナー」と「【初任】研修プログラム」とはどう違うんですか。
「【初任】研修プログラム」は日本語教師養成講座を修了したような人が対象ですが、「オンライン公開セミナー」は広くどなたでも参加していただけます。生活者が接するのは日本語教師よりも圧倒的に「普通の日本人」が多いので、そういう人たちに気軽に参加していただければと思います。もちろん日本語教師の方々の参加も大歓迎です。
――充実した無料セミナーですので、ぜひ多くの方に参加していただきたいですね。日本語教師の皆さんは、関心のありそうな周りの人を誘ってあげるといいかもしれませんね。本日はありがとうございました。