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日本語教師プロファイル・ヤマネサチヨさん―私の役割は学習者がやりたいことを手助けするサポーター

コロナ禍により対面授業ができなくなり、図らずも「オンライン元年」となった感のある日本語教育業界ですが、今回ご紹介するヤマネサチヨさんは約10年前から一人でスカイプを使った授業を行ってきたオンライン教師の草分け的存在です。ヤマネさんにオンライン日本語教師としてのこれまでの歩みとこれからについてお話を伺いました。

オンライン日本語教師になるまで

――これまでの経歴を教えてください。

もともと外国に興味があってワーキングホリデーに行くつもりだったのですが、ちょっと事情がありそれができなくなりました。海外に出られないなら日本にいる外国人と触れ合おうと思い、住んでいた市の日本語ボランティア養成講座に通ったのが、日本語教師になったきっかけですね。その後、ボランティアで教え始めたんですけど、そんなに専門的な知識もないので学習者の質問に太刀打ちできなくて、もっとちゃんと勉強しようと思いました。それでアルクのNAFL日本語教師養成プログラムを受講し、日本語教育能力検定試験に合格しました。検定試験合格後は、教師派遣の会社に登録して、対面のプライベートレッスンで教えていました。それから日本語学校や専門学校などで非常勤講師としても12年ほど教えました。

――スカイプで教えることになったのはどうしてですか。

3.11の東日本大震災がきっかけです。あの震災で日本語学校の学生はみんな帰国してしまい、さらに来日するはずの学生も来なくなりました。非常勤講師だった私のクラスもキャンセルとなって自宅待機を余儀なくされました。つまり無職です。仕事のスキルは変わっていないのに、環境が変わったせいで仕事がなくなってしまった。これは今のコロナの状況にも似ていますが、とにかくなんとかしなければと思いました。まだ余震も続いていて、遠くの学校に教えにいくのもちょっと怖い気持ちもあったので、これはオンラインでやるしかないのでは? と思ったんです。

――オンライン授業についての知識をお持ちだったんですか。

いいえ、全然。特別にパソコンが得意なわけでもなく、デジタルに詳しい友達もいませんでした。でもパソコン通信の時代からWEB上で友達を作ることには慣れていました。そんなことで抵抗感が少なかったのかもしれません。

――それですぐにスカイプ教師に?

いいえ、まずは練習や準備が必要でした。それで日本語学校の授業が再開された後、非常勤として教えながら土日や夜にスカイプを使って授業をするという日々を送りました。その時はマッチングサイトから学習者を紹介してもらっていました。しかし日本語学校とスカイプレッスンを並行して行ううちに、自分には、やはりオンラインの方が向いているなと思ったんです。それで2013年に学校を辞め、自分のサイトを立ち上げてフリーランスとなりました。

――新人教師のサポートもされていますよね。

はい、たまたまそのマッチングサイトから問い合わせがあったんです。私と同じように通信講座で日本語教育能力検定試験に合格された方で、実習をしたこともないのでどうやっていいかわからない。教案の書き方を教えてほしいというような依頼でした。日本語学校で教えていた時代に新人の先生の教案チェックのようなことをした経験があったので、じゃあやりましょうということになりました。それでサイトを立ち上げてからは、外国人への日本語レッスンと教師サポートが業務の2本の柱となりました。今は教師サポートはオンラインレッスンに関することに限定しています。

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オーダーメイドのユニークな授業はオンラインならでは

――オンライン授業の様子を教えてください。

始めた当初はJLPT(日本語能力試験)対策の勉強がしたいという方が多かったです。特にオンラインでのN1対策は他にあまりなかったようで、私のところには国内国外を問わず、そのような学習者が集まりました。そういう方々は試験まで半年ぐらい勉強して、試験が終わるとお休み。結果が出たらまた続けるというサイクルでした。

――なにかユニークな授業はありますか。

そうですね。日本に配偶者ビザで住んでいて、音楽が趣味で、自分で作詞作曲をしている方がいます。その歌詞の文法を直したり、語彙が適切か見てほしいというレッスンがありました。音声ファイルを事前に送ってくるのですが、語彙が適切でない場合は、それに代わる言葉で、母音を合わせたり音数を合わせたりしなければならないので結構大変でしたね。

他には「ラノベ読解」というのもやりました。香港のIT関係の会社員の方で、ライトノベルやアニメが趣味で、ライトノベルを原書で読みたいという希望でした。ラノベって実は語彙や漢字はすごく難しいものが出てくるのに、カジュアルな表現もたくさんあって、一人じゃとても読めないということで、一緒に読んでいきました。

紙芝居の読み方を教えるというレッスンもありました。アメリカに住んでいる方でしたが、地域に日本人のお年寄りがいるのでボランティアで日本の紙芝居を読み聞かせしたいとのことでした。

ここ2、3年の傾向ですが、教師の立てたプランに沿って学習していくというより、学習者がやることを主体的に決める形が多くなってきたように思います。いわゆる自律学習者です。教科書を使ったとしても1から一緒にやっていくのではなく、自分で予習してきて分からないところだけ教えてくれというような。ですから私の役割は学習者がやりたいことを手助けするサポーターだと思っています。

オンライン授業を続けるコツ

――オンラインならではの苦労とか、逆に良さなどはありますか。

「反応がつかみにくい」とか「全体を見にくい」などはオンライン授業を経験された方が皆さんおっしゃることもかもしれません。でもいろいろ小さな工夫をすることでデメリットを小さくすることはできると思います。例えば対面授業の時はしないかもしれないけれど、手順を詳しく説明したり、ひとつひとつ丁寧に確認したりするなどですね。

いいところは、何と言っても世界中の学習者と出会える点です。時差を逆に利用することもできます。例えば日本の昼間はアメリカ大陸の夜なので、夜レッスンを受けたいアメリカの学習者がいた時に、こちらは昼なので空いているということがあるわけです。

――ずっと一人でやっていると孤独感を感じるようなことはありませんか。

それはあります。授業が失敗したときもそうですが、うれしいことがあったとき、例えば学習者が試験に合格したとか、大学院に受かった等も、喜びを共有する相手がいないのは寂しいです。ですから、できるだけ日本語教師のコミュニティやセミナーなどに参加して仲間を作るようにはしています。それからずっと自宅にいるので、オフの時は自分の趣味で外出するなどして切り替えることも重要だと思います。私の趣味(フィギュアスケート好き)は学習者も理解してくれているので、スケジュールの変更も快くオーケーしてくれます。(笑い)

今後の活動は?

実は去年から、一人の活動には少し限界を感じてきました。まずオンラインレッスンの普及とともに価格競争が始まりました。また一人でできることにはいろいろな意味で限りがあるので、ずっとやっていくためには別の方法も考えなければならないのではないかと思うようになったんです。それで今年から、自分のオンラインレッスンの2本の柱は残しつつ、(株)One Terraceさんのお仕事もお受けするようになりました。ここでは「オンライン日本語教育プロデューサー」というカッコいい肩書をいただいていますが、自分がレッスンをするのではなく、オンライン授業のディレクションをしたり、コースデザインをしたりしています。今までやってきたことを、そろそろ次の人に伝える時期に入ってきたかなと思っているからです。同じ志を持った仲間と新たな挑戦ができることは刺激的で大きな喜びです。今までは自分がプレーヤーとしてやってきたのですが、これからは従来の学校型ではない、いろいろな新しい形の学びを教師学習者双方に伝えていくのが自分の仕事かなと思っています。

日本語教育プラスアルファを持とう!

――これから日本語教師になろうとしている人に何かアドバイスを。

まず一つ目は日本語教師プラスアルファがあったほうがいいということです。日本語教師の資格だけでなく別の語学でも日本語に関係ない趣味でもいいですが、狭いけどこのことなら私、すごく知っている、得意だということを日本語と組み合わせて仕事にするのが、これからサバイブするのに大きな要素となると思います。

二つ目は、もし若い人ならキャリアデザインを考えたほうがいいってことですかね。10年後、20年後どうなりたいから、今はこれをする、みたいな。私はそういうことを全然考えずにここまで来てしまったので。年を取ってから後悔しないようにしておくといいと思います。

取材を終えて

ヤマネさんのお話を伺って感じたのは「判断の潔さ」です。やはり一つの分野でパイオニアである方は、その都度その都度、的確に判断しながら進んでいらっしゃるなあと思います。「幸運の女神には前髪しかない」ってことわざもありますからね。

取材・執筆/仲山淳子

流通業界で働いた後、日本語教師となって約30年。5年前よりフリーランス教師として活動。

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