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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

教師の日本語力を鍛える 読み間違えやすい日本語

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日頃から日本語を教えていて、日本語については人一倍敏感な日本語教師の皆さんでも、意外と勘違いしている日本語というものはあるものです。ここでは読み間違えやすい日本語をチェックしてみましょう。

クイズ番組などにもよく出題される言葉

日常的によく使われている言葉でも、いざとなると読み方に迷うものがあります。言葉は変化するものですので、あまり「正しい」「正しくない」といった規範主義的な考えにとらわれることなく、あくまで参考知識として持っているといいと思います。もし学習者から読み方を聞かれたら、「正しい」ほうを教えてあげましょう。

  1. 出生率 〇しゅっしょうりつ ×しゅっせいりつ
  2. 農作物 〇のうさくぶつ ×のうさくもつ
  3. 早急 〇さっきゅう ×そうきゅう
  4. 貼付 〇ちょうふ ×てんぷ
  5. 重複 〇ちょうふく ×じゅうふく
  6. 続柄 〇つづきがら ×ぞくがら
  7. 茨木県 〇いばらきけん ×いばらぎけん
  8. 定礎 〇ていそ ×じょうそ
  9. 御用達 〇ごようたし ×ごようたつ
  10. 肉汁 〇にくじゅう ×にくじる

同字異音異義語

あまり聞きなれないかもしれませんが、「同字異音異義語」とは、同字=形は同じ、異音=音は異なる、異義=意味も異なる言葉のことです。例えば、次のような言葉です。

・朝早く市場へ行って魚定食を食べた。

・為替市場では円高が進んでいる。

魚や野菜などの具体的な商品を取引するところは「いちば」、為替・金融・労働などの場合は「しじょう」と読みます。日本語には、このような言葉がたくさんありますので、学習者が戸惑うところでもあります。日常的に使われるこのような言葉を集めてみました。読み方を考えてみてください。

【問題】

  1. ゴミは分別して出すこと。/会社の上司は思慮分別がある。
  2. 風邪で寒気がする。/寒気が南下して雪が降る。
  3. 彼には芸術家の気質が流れている。/父は職人気質の頑固者だ。
  4. 年金で細々と生活する。/細々と親の世話を焼く。
  5. 会社の人事部に配属になった。/上司の左遷は人事ではない。
  6. 海岸で初日の出を拝む。/明日は連休の初日だ。
  7. 大きな利益を生む商品。/縁結びのご利益のある神社
  8. 学生から人気のある先生。/夜は人気のない商店街。
  9. 背筋を鍛えるトレーニング。/背筋を伸ばして先生の話を聞く。
  10. 社長が自ら謝罪をした。/結果は自ずから明らかになる。

いかがでしたでしょうか。10は送り仮名の違いで区別できるかもしれませんが、こうして見てみると紛らわしいですね。

【解答】

  1. ぶんべつ/ふんべつ
  2. さむけ/かんき
  3. きしつ/かたぎ
  4. ほそぼそと/こまごまと
  5. じんじ/ひとごと ※ひとごとは「他人事」とも書きます
  6. はつひ/しょにち
  7. りえき/(ご)りやく
  8. にんき/ひとけ
  9. はいきん/せすじ
  10. みずから/おのずから

カタカナ語

カタカナ語を声に出すときに多いのは、語末の濁音がなくなってしまう現象です。コミュニケーション上はほとんど問題はありません。

〇バッグ ×バック  例:ハンドバッグ、トートバッグ
〇ベッド ×ベット
〇バッジ ×バッチ
〇キューピッド ×キューピット
〇バドミントン ×バトミントン
〇ハイブリッド ×ハイブリット

逆に元々濁点がないのに、濁点を付けてしまいがちな言葉もあります。前後の音や、他の言葉に影響を受けているものと思われます。

〇アボカド ×アボガド
〇人間ドック ×人間ドッグ

 

いかがでしたか。日頃はあまり意識していない言葉でも、改めて見てみるといろいろな発見があります。なぜ読み方が変わってきているのか、どんな意味の違いがあるのかなど、考えてみるのも面白いものです。