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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

クーデターから1カ月、緊迫が続く──ミャンマーの日本語教室から

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ミャンマー国軍によるクーデターが発生して1カ月あまり。緊迫した状況が続く中、語学学校、アミクスグローバルミャンマー・ランゲージセンターでは、教師・スタッフによるミーティングを定期的に行い、学生の安否確認などの情報収集に努めています。同校日本語主任の渡辺幸子先生に、1、2月の学校の様子を日記風に伝えてもらいました。(NJ編集部)

※写真はRFA Burmeseの許可を得て掲載しています。

2021年1・2月のミャンマー便り

1月5日(火)

今年は年始が週末だったことと、1月4日はミャンマーの独立記念日で祝日だったため、今日が仕事始めとなりました。さっそく現地の先生方とオンラインミーティングをして、業務をスタート。昨年は新型コロナウイルスの影響で大変な年でしたが、今年は上昇気流の1年になりますように。

1月7日(木)

12月に受験申し込みの受け付けがあった特定技能試験。運よく受験できることになった学生たちへの激励会をオンラインで行いました。短い時間でしたが精一杯のエールを送りました!

1月18日(月)

介護分野での就職を希望する学生を対象に、Zoomによるオンライン専門講義が今日スタートしました。1月27日(水)までですが、学生がたくさんのことを吸収し、学び多き専門講義になることを期待しています。

また、既存学生の希望者に加えて、新規の学生も募集して、2月中旬に新しい会話コースを始めるために準備をしています。楽しいコースになりますように。

1月22日(金)

昨日と今日、JFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)の試験が行われました。わが校から3人の学生が受験しましたが、惜しくも不合格。。。どんな問題だったのか、何が難しかったのか、しっかりヒアリングして次の対策を立てます。

また本日、3月にJFT-Basicが実施されることが発表されました! そして今回は試験がヤンゴンだけでなくマンダレーでも実施! 1月に続き3月も実施されることになり、うれしい限りです。このまま当初の予定だった2カ月ごとの実施が定着すれば、学生たちが日本へ来る日もそう遠くないと希望が持てます。何より学生たちのモチベーションアップにもなります。1人でも多くの学生が申し込みできますように。

1月29日(金)

本日、3月にあるJFT-Basic試験の申込日でした。今回は20人が申し込めました! 試験日までしっかり復習と試験対策をして、全員合格を目指してがんばります!!

1月31日(日)

今月末までとされていた入国制限措置が2月28日まで延長される旨のメールが、在ミャンマー日本国大使館より届きました。新型コロナウイルスの新規感染者数も少なくなってきていますし、ワクチンもインドのものが入荷されるそうなので、今回で延長措置は終わってほしいです。

2月1日(月)

ミャンマーでクーデターが起きたというニュースに朝から釘づけになりました。すぐに現地の先生や学生たちに連絡しましたが、ネットは遮断されている様子でつながりません。

やっとつながったのは日本時間の夕方でした。やはりインターネットと電話が遮断されていたそうです。とりあえず全員無事のようでほっとしましたが、ある学生は「叔父さんが連れていかれました」と。また、銀行も閉まっていて、心配して買い占めをしている人もいるという状況を教えてくれました。他の学生は「先生、今日はとても悲しい。村の家族と連絡できません」と……。

日本では考えられませんが、とにかく今は自分の命、家族の命を守ることが第一です。日本にいる私がこんなに不安な気持ちになるのですから、ミャンマー人全員が言葉にならない不安を抱えていると思います。早く収束することを祈ります。

また、やっと再開されていた特定技能試験は中止になりました。再開のめどは立っていません。

2月2日(火)

毎週定例で行っているミーティング。今日は日本のメンバーだけで実施かと思いきや、ミャンマー人の先生たちも参加できました(1人は声のみの参加)。まだデモなどは起きていないとのこと。状況を聞き、とにかく安全第一、健康第一で過ごしてほしいと伝えました。元気そうな顔が見られて(声が聞けて)、とにかく安心しました。

2月8日(月)

先週末、ミャンマー各地でデモが行われたそうです。学生がビデオを送ってくれましたが、たくさんの人が出ていました。せっかく下火になったコロナがまた再燃するのも心配ですが、デモが大きくなってケガ人や死者がでることも心配です。

また、2月1日に連行された学生の叔父さんはまだ解放されていないとのこと。どんな状況にあるのか分かりませんが、こちらもとにかく心配です。無事に帰ってこられることをひたすら祈っています。

2月9日(火)

現地スタッフが写真を送ってくれました。それは、デモ活動終了後に道路のゴミ拾いをするデモ隊の人々の写真です。私は、デモで大人数が集まる写真より、この写真に心から感動しました。1人1人のミャンマーを愛する心、平和を願う気持ちにあらためて敬意を感じます。

2月16日(火)

今日も全員で定例ミーティングができました。しかし、ミャンマー人の先生たちは元気がなく、疲れているのが分かりました。精神面も心配です。デモに参加する人もどんどん増えているそうで、現地在住日本人の友人の情報では、デモ隊によって道路がふさがれ、買い物に行く道もなくなっているとのこと。また恩赦で釈放された囚人が外に出て、放火をするなどして治安も悪化している様子。学生たちも異口同音に「夜も安心して眠れない」と言っていました。しかし現地の先生たちは「今は泥棒よりも警察が怖い」と言っていました。誰かに何か悪さをされても、今は警察も信頼できなくなったので呼べないと。。。本来は国民を守るべき警察が、国民を威嚇し攻撃している状況に、見守るしかできないことが歯がゆいです。

2月20日(土)

デモ隊に軍が発砲し、ついに犠牲者が出ました。未来ある若者が実弾の犠牲になる映像、白い包帯を巻いても巻いても、真っ赤な血が染み出てくる映像に、本当に胸が締め付けられました。この現代に、時を同じくして起きていることとは思えません。

2月22日(月)

今日は5つの2が並ぶ、2021年2月22日。22222運動と題して、ミャンマー全土で大規模なデモが行われました。昨夜ある学生から、「明日は大事な日です」とメッセージが来ていたので、このことだったんだなと納得しました。現地スタッフが何十枚もデモの様子の写真を送ってくれたのですが、田舎の町でも信じられない数の人が参加していました。幸い、このデモでのケガ人、死者はいなかったと聞いていますが、このミャンマーの人々の思いを受けて、国際社会は、私たちは何をすべきなのか考えさせられます。

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2月28日(日)

今日はデモ隊に催涙弾が使われたとのこと。ビデオに撮られた混乱の様子が現地から送られてきました。クーデターが起こり早1カ月。これ以上ミャンマーの人たちが苦しむ様子は見たくないですし、早く収束してほしいです。

在ミャンマー日本国大使館より、国際旅客便の着陸禁止措置が3月31日まで再延長された旨のメールがきました。ますます先が見通せなくなってしまいましたが、これからも可能な限り現地と連絡を取り、身近な人が少しでも元気になれるよう、励ましの声を送っていきたいと思います。