令和3年度の日本語教育能力検定試験は2021年10月24日に行われます。受験される方の中には、既に準備を始めている方も多いと思います。日本語教育能力検定試験を受験される方にとって、ゴールデンウィークはまとまった勉強の時間が取れる、貴重な機会になります。日本語教育能力検定試験に合格するために、この期間にやっておきたい3つのことをご紹介します。(新城宏治)
令和2年度(前年)の過去問を解く
4月下旬、いよいよ『令和2年度日本語教育能力検定試験 試験問題』が発売になりました。これは毎年3月に発売されているもので、前年の本試験の問題と解答が掲載されています。例年より約1カ月遅れての発売となりましたので、心待ちにしていた方も多かったと思います。
『令和2年度日本語教育能力検定試験 試験問題』
まずは、参考書などを何も見ずに、試験問題を解いてみましょう。せっかく時間のあるゴールデンウィークですので、可能であれば本試験と同じ時間割で問題に取り組んでみるといいでしょう。
実際に出題された試験問題はリアル感があり、想像していた以上に難しいと思われる方が多いと思います。一通り解けたら、巻末の正解を見て、答え合わせをしてみましょう。現段階では合格ラインまで届かないという方も多いと思います。しかし、今の時期はそれで構いません。大切なのは、できるだけ早いうちに本試験の問題に触れて、その難しさを実感することです。そもそも今の時点で合格ラインに届いている方は、特別な試験勉強は不要になりますが、そのような方は極めて稀だと思います。
答え合わせをしたら、必ず振り返りを行いましょう。問題ごとの正解・不正解や正解率・数だけにこだわるのではなく、自分はどの分野がどのぐらい弱いのか、何を克服しなければならないのかを確認しましょう。過去問を解くことを通して、自分の弱点を的確に把握し、それを克服するための計画を立てましょう。
なお、『令和2年度日本語教育能力検定試験 試験問題』には巻末に正解は付いていますが、解説は付いていません。「なぜこの答えが正解になるのだろう」「なぜこの答えは不正解なんだろう」と、疑問に思われる方も多いと思います。そんな方のために、ネット上には日本語教育能力検定試験問題の解説サイトがありますので、参考にしてください。
毎日のんびり日本語教師
https://nihongonosensei.net/?page_id=8874#link30
苦手な音声分野を克服する
過去問を解いてみた結果、恐らく多くの方が難しい・苦手と思われたのは試験Ⅱではないでしょうか。
試験Ⅱの聴解試験は、最初に理解しなければならない・覚えなければならないことが比較的多そうに見えるので敬遠しがちです。しかし、実は試験Ⅱで問われる内容は試験Ⅰや試験Ⅲに比べるとかなり限定されており、必要なことさえ理解してしまえば高得点が取れる科目でもあるのです。
せっかくゴールデンウィーク中にまとまった時間が取れるので、この期間に、試験Ⅱで高得点を取るのに必要なことを理解・覚えてしまいましょう。押さえておきたいのは、アクセントの高低、母音の舌の位置、拍・イントネーション・プロミネンスなどのプロソディ、子音の調音点・調音法と口腔断面図などです。子音の調音点・調音法と口腔断面図などについては、聴解試験の参考書などに必ず載っている一覧表を、このゴールデンウィーク中に覚えてしまえば、この後の試験対策が非常に楽になります。
機械的に丸暗記するのではなく、実際に自分で音を口に出しながら舌の位置を確認したり、表を見るだけでなく自分で表を書いてみたり、単語帳にまとめ直して何度も見返したり、自分に合った形で理解した上で記憶されることをお勧めします。
文法分野を一通りおさらいする
次に、過去問を解いて多くの方が苦手だと感じるのは文法分野だと思います。
文法分野は範囲が非常に広く、本試験で出題される問題数も多く、また他領域と関連付けてよく出題されます。先の音声分野と同様、実際に日本語教師として教壇に立った時も役立つことが多いところですので、この期間にしっかり押さえておきたいところです。ゴールデンウィークにお勧めしたいのは、文法の参考書を改めて一通り見直し、理解していないところを補ったり、自分の知識を整理したりしておくことです。例えば、以下のような本をお勧めします。
文法が苦手な方向け
『改訂版 書き込み式でよくわかる 日本語教育文法講義ノート』(アルク)
文法の基礎は大丈夫という方向け
『考えて、解いて、学ぶ日本語教育の文法』(スリーエーネットワーク)
いかがでしたでしょうか。
令和3年度の日本語教育能力検定試験を受験される方に、2021年のゴールデンウィークにお勧めしたいのは、以下の3つです。
・令和2年度(前年)の過去問を解く
・苦手な人は音声分野を克服する
・文法分野を一通りおさらいする
なお、過去問は令和2年度以前のものも発売されていますので、余裕のある方は3年分ぐらいの過去問にチャレンジされることをお勧めします。
コロナが収束していない中での2度目のゴールデンウィークです。健康に留意してステイホームを心掛け、この期間を有効に活用しましょう。来年のゴールデンウィークには、日本語教育能力検定試験に合格して、日本や海外で日本語教師として教壇に立っている自分の姿をイメージしてみるのもいいと思います。
令和3年度日本語教育能力検定試験 実施要項
【出願期間】令和3年7月5日(月)から8月2日(月)まで(当日消印有効)(予定)
【試験日】令和3年10月24日(日)9:00~16:40
【受験料】14,500円(税込)
【試験地】(予定)】北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、九州
【合否結果通知の発表】令和3年12月24日(金)(予定)
詳細:http://www.jees.or.jp/jltct/pdf/R3.jisshiyoko.pdf
執筆:新城宏治
株式会社エンガワ代表取締役。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の良さを世界に伝えたいと思っている。