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できる日本語10周年記念企画2 「できる日本語ひろば」に集う仲間たち

2021年、日本語教科書『できる日本語』は10周年を迎えました。この10年の間に、『できる日本語』は多くの日本語教育機関で採用され、国内外で大きく広がりました。多くの日本語学習者や日本語教師に受け入れられた背景には、『できる日本語』教材開発プロジェクトリーダーの嶋田和子さん(アクラス日本語教育研究所代表理事)とボランティアの力で運営されているWEBサイト「できる日本語ひろば」の存在があります。この「できる日本語ひろば」に多くの人々が集い、『できる日本語』の成長につながっていきました。

教科書であり、人々が集う場でもある

――WEBサイト「できる日本語ひろば」は、いつ頃から運営しているのですか。

当初、『できる日本語』の情報は、私が代表を務めるアクラス日本語教育研究所のサイトに掲載していました。そして「できる日本語ひろば」ができる前は、ひたすら『できる日本語』のユーザーとの対話を重ねました。「できる日本語ひろば」がオープンしたのは2017年です。

――『できる日本語』は、まず対話力を第一に考えていますが、WEBサイトもユーザーとの対話を通して生まれたのですね。嶋田さんはなぜそこまで対話にこだわるのでしょうか。

私は、教科書は作って終わりではなく、皆で育てるものだと思っています。それまで学習者や教師との対話を通して『できる日本語』にさまざまなフィードバックがありました。それらの声に一つ一つ耳を傾け、どうしたらこの教科書がより使いやすく、学習者のためになるものになるかをずっと考えていました。そこで、思いついたのが「できる日本語ひろば」の立ち上げでした。

――「できる日本語ひろば」は非常に充実したサイトで、『できる日本語』についてさまざまな情報が載っていますね。情報も整理されていて、非常に見やすいと思います。

実はこのサイトも、日本語教師兼WEBデザイナーの友人がボランティアで関わってくれて、ここまでのものができたんですよ。彼女との対話を通して生まれたものなんです。どういうデザインにしたら、どんなふうに使ってくださっている方々に伝わるか、2人で何度も議論を重ねました。『できる日本語』を通して豊かな対話が生まれ、そして多くの人がつながっていきました。「できる日本語ひろば」も、その一例なんです。

『できる日本語』シリーズのラインアップ

――まず、サイトの全体構成を教えてください。

「できる日本語ひろば」は、大きく3つのコーナーに分かれています。

  1. 『できる日本語』の概要…教科書や副教材13冊のラインアップと各内容の説明
  2. 日々の実践サポート…「課ごとの道しるべ」や、プリント・テストなど充実した補助教材が無料でダウンロードできるコーナー
  3. 実践例と現場の声…実際に『できる日本語』を使った教師や学習者の声

――それでは順番に、「『できる日本語』の概要」から教えてください。

はい、シリーズは以下のラインアップです。

・『できる日本語』本冊(初級・初中級・中級)

・『わたしの文法ノート』(初級・初中級)

・『わたしのことばノート』(初級・初中級)

・『ことば・表現ワークブック』(中級)

・『教え方ガイド&イラストデータCD-ROM』(初級・初中級)

・『漢字たまご』(初級・初中級)

・『たのしい読み物55』

現在はこの13冊ですが、もうすぐ『漢字たまご 中級』が出る予定です。

――初級から中級まで充実したラインアップですね。これらはどのように使ったらいいのでしょうか。

『できる日本語』は授業で、『わたしの文法ノート』や『わたしのことばノート』は復習で使いながら学習者の言語知識の定着をサポートします。『教え方ガイド&イラストデータCD-ROM』の中には「教科書に出てくるすべてのイラストが入っていますので、教師にとって有用です(初級1,033点、初中級1,042点)。『漢字たまご』『たのしい読み物55』は、『できる日本語』に準拠しながら漢字の力や読む力を伸ばすことができます。

各課ごとのプリントやテストがすべて無料でダウンロードできる

――では、次に「日々の実践サポート」について教えてください。ここでは授業で使えるプリントやテストが無料でダウンロードできるのですね。

「課ごとの道しるべ」や「中級のヒント&ポイント」は授業のヒントになるプリントですが、こういうプリントをダウンロードできるようにするかどうかは、実は開発講師陣の中でも意見が分かれたところです。「こんなものを出したら、皆このプリントに頼ってしまうのではないか」と危惧する意見もありました。

――そのような中でも、敢えてプリント類を提供したのはなぜですか。

当時は日本語教師が大変不足しており、養成講座を修了してすぐに教壇に立つ教師も多かったですし、しかもいきなり中級のクラスを担当することも珍しくなかったんです。中級では特にこういったプリントが必要ですが、それを教師になったばかりの人に求めるのは酷です。そこで授業で使えるプリントを準備することで、そのような方々のサポートをしたかったんです。プリント類は中級に関しては全部で400ページ以上にもなるんですよ。こうした授業で使えるプリント類が充実しているからという理由で、『できる日本語』を採用してくれた日本語教育機関もたくさんありました。

――当初からダウンロード形式にしていたのですか。

はい、当初からダウンロード形式にしていました。ただ、「テスト・授業・宿題プリント」などは、私に申し込んでくださった方に、URLをお伝えする形式にしています。手間はかかりますが、そうすることで対話が生まれます。使ってくれた先生はコメントをくださったり、質問をしてくださったりしています。『できる日本語』の説明ビデオは、当初は1本1本、USBにコピーして希望者に配っていました。これも大変な手間でしたが、これによってさまざまな対話が生まれました。

――しかし、それもコロナによって難しくなったと聞きました。

コロナ禍でお会いすることができなくなり、手渡しスタイルを見直すことにしました。また、これまでも海外の先生方への対応ができず、申し訳なく思っていました。そこで、全ての説明ビデオを2021年2月にアップすることにしました。それは、「Non-native teacherのための説明ビデオ」を作ったことがきっかけでした。

――海外の先生と言えば、翻訳も非常に充実していますね。

アルクで準備してくれたのは、英語、中国語、韓国語、ベトナム語、ネパール語の5カ国語訳です。しかし、今や『できる日本語』は世界中のさまざまな学習者に使われるようになりました。そうすると、『できる日本語』を使った先生方や学習者が、自発的に自分の言葉の翻訳を始めてくれたんです。それによって完成した翻訳は、タイ語、インドネシア語、フランス語、スペイン語、ミャンマー語、モンゴル語、ポルトガル語、ベンガル語、ペルシャ語、マレー語など10カ国語に上ります。アルクが準備したものと合わせれば15カ国語もの充実した翻訳が、「できる日本語ひろば」から無料でダウンロードできるようになりました。この「ボランティア翻訳」は、今も続いています。

――翻訳の数もさることながら、その多くが『できる日本語』で学んだ人たちのボランティアによってできていったという過程が素晴らしいですね。まさに対話を通して、多くの人たちが『できる日本語』に関わるようになったということだと思います。本日はありがとうございました。

www.dekirunihongo.jp