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生活者としての外国人等に対する日本語教育の推進13億円を要求ー文化庁予算から見えてくること

先頃、令和3年度文化庁補正予算(案)が文化庁のホームページに掲載されました。総額905億円の予算の中には、ウィズコロナにおけるオンライン日本語教育実証事業41億円が盛り込まれています。また、夏に発表された令和4年度文化庁概算要求では、総額1,311億円の中に生活者としての外国人等に対する日本語教育の推進13億円が盛り込まれています。日々の我々の日本語教育活動に直結する文化庁の予算の中身を見てみましょう。

令和3年度補正予算

文化庁の予算の詳細は以下をご覧ください。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/yosan/index.html

令和3年度文化庁補正予算(案)の中で、ウィズコロナにおけるオンライン日本語教育実証事業は、その中身においても予算規模においても注目すべきものです。これは、「入国が困難な外国人留学生への日本語教育環境を構築するため、オンラインを活用した日本語教育を実践・検証する」もので、オンライン日本語教育の実践・実証を行う民間団体等に1事業あたり400万~1,000万円400件程度を支援する予定とされています。

日本政府は2021年11月8日に一定の条件の下で留学生を含む外国人の入国制限を緩和しましたが、オミクロン株の世界的な流行により急転直下、11月30日から年末まで全世界からの外国人の入国を全面的に禁止するという措置を取りました。それぞれの国で日本への入国を心待ちにしていた留学生にとっては、大変につらい状況になってしまいました。また、留学生の受け入れを急ピッチで進めていた日本語学校や大学などの教育関係者や受入機関にとっては大きなショックでした。

今後、オミクロン株の感染力や重症度、またこれまでのワクチンの効力などについて徐々に明らかになっていくものと思われますが、2020年から新たな変異株が発生するたびに、人流にストップがかかることが繰り返されてきました。今後もまた新たな変異株が発生した場合、同じような事態に陥る恐れもあります。

この2年間、多くの教育機関はオンライン授業に取り組み、さまざまな実践を積み重ねてきました。実際、コロナ前まではオンライン授業をしたことのない先生方が、今やzoomの機能を使いこなして素晴らしい授業を実践しています。そのような実践を後押しし、今回の事業成果を分析検証して、オンライン教育のノウハウを全国に横展開していくことで、来日できない留学生と日本国内の教育機関の双方を支える、時宜を得た事業だと思われます。

令和4年度概算要求

文化庁の令和3年度の予算額が約10億円、令和4年度の要求・要望額が約13億円ですので、約130%アップになります。内訳は以下の通りです。

【日本語教育の全国展開・学習機会の確保

①外国人材の受入れ・共生のための地域日本語教育の推進 約6億円

②日本語教室空白地域解消の推進強化 約2億円

③日本語教育の先進的取組に対する支援等 約0.3億円

④日本語教育のための基礎的取組の充実 約0.07億円

【日本語教育の質の向上】

①日本語教育の人材養成及び現職者研修カリキュラムの開発・活用 約2億円

②日本語教育に関する調査及び調査研究 約0.3億円

③日本語教師の資格等に係る施策の充実(新規) 約0.8億円

④「日本語教育の参照枠」を活用した教育モデル開発等(新規) 約0.5億円

令和4年度に新規に予算計上された事業を見てみましょう。

日本語教師の資格等に係る施策の充実

公認日本語教師(仮称)の国家資格について次期通常国会への法案提出を踏まえ、資格取得に係る試験内容や試験実施機関、教育実習に必要なプログラム内容等の調査を実施するものです。

主に試験運用のための調査研究に予算は充てられていますが、その内訳は、

①試験実施に向けたシステム開発(試験の受付や、受験者のデータ蓄積、回答分析等が可能な試験運用システムの開発を行う。令和4年度はシステムの仕様定義を行う予定)

②自己研鑽研修に関するシステム開発(公認日本語教師には、「知識及び技能向上のための研修」の受講による自己研鑽が義務づけられることになるが、各教師が研修を受講し、データを蓄積するための研修システムを構築

上記①②に関する調査研究協力者会議の開催

となっています。

また、政令・省令検討のための調査研究協力者会議の開催も予算に組み込まれています。

「日本語教育の参照枠」を活用した教育モデル開発

文化審議会国語分科会において令和3年度中に「日本語教育の参照枠」及びその活用のための手引きが策定される予定です。生活・留学・就労等の分野において「日本語教育の参照枠」に基づく教育モデル(カリキュラム、教材、評価方法等)を開発し、公開していきます。

教育モデル開発は5機関1,000万円を予定しています。

「日本語教育の参照枠」に示された日本語教育の内容(言語能力記述文:Can do)やレベル尺度(A1~C2の6段階)等に対応した教育モデルを開発。日本語教育プログラムの開発実績を有する日本語教育機関等に、同参照枠を活用した生活・留学・就労等の各分野のモデルとなる「参照枠に基づくカリキュラム及び教材・評価手法等」を開発することにより、多様な学習目的に応じた教育内容と評価方法等を整備し、日本語教育の水準の向上を図るとしています。

文化庁の事業予算というと何だか遠い話のように聞こえてしまうかもしれませんが、こうして中身を見てみると日本語教師の皆さんに非常に密接なつながりがあることが分かります。特に来年度は、「日本語教師の資格」や「日本語教育の参照枠」について、さまざまなことが具体化していくでしょう。予算の使われ方を含め、その過程や方向性をしっかり見つめていくことが大切だと思われます。