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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

日本語教師プロファイル松崎英樹さん―日本語教育に出会って自分の世界が広がりました

今回「日本語教師プロファイル」でご紹介するのは、広島県広島市の専門学校の日本語学科で専任教師をなさっている松崎英樹さんです。松崎さんは日本語の授業を担当するだけでなく、留学生支援室の担当として学生に様々なサポートをされています。その内容について詳しくお話を伺いました。

子供の頃から外国人と接する仕事に憧れが

――まず、日本語教師になったきっかけを教えてください。

会社員だったのですが、10年前に市民センターの日本語教室にボランティアとして通ったことがきっかけです。呉市の日本語教室でしたが、技能実習生など10か国以上の人が学びに来ていてすごく国際色豊かでした。そこで自分も刺激を受け世界が広がったような気がしました。それで日本語教師になりたいと思うようになり、会社勤めをしながら420時間の日本語教師養成講座に通いました。養成講座にはすごくいい先生がたくさんいらっしゃって、自分が日本語教師になるということにワクワクしていました。そして実際に日本語教師になった今でもSNSを通じて繋がる仲間ができたことも良かったと思います。

私の父親がエンジニアとして世界各地で働いていてその関係で私もシンガポールで生まれました。父の姿を見ていたことから、自分も外国に関わったり、外国人と接する仕事がしてみたいと子供の頃から思っていたこともあります。37歳の時に、思い切って会社を辞めて日本語学校に転職しました。その学校の募集は、「NIHON MURA(日本村)」*1で見つけました。専任としての採用でした。そこで3年半ほど働いた後、別の日本語学校に移ったのですが、コロナ禍もあって紆余曲折もあり、2022年の6月から現在の学校で専任として働いています。その間に、フリーランスとして、短いですがオンラインで教えていた期間もあります。

留学生の生活全般をサポート

――現在の学校はどんな学校ですか。

この学校の日本語学科は2020年の4月に開設されました。でもご存じのように、コロナ禍で学生たちが入国できなくて、実際に多くの学生が入学できたのは、入国が緩和された2022年の3月以降です。ですから、日本語学科としては、とても新しいです。学生はネパール人が多く、ここで留学生支援室の担当として仕事をしています。

――留学生支援室というと具体的にどのようなお仕事があるのでしょうか。

今も入国の時期がバラバラなのですが、それぞれ学生が日本に到着したら、空港まで迎えに行ったりします。その後、住民登録、国民健康保険の加入、銀行口座開設のサポートから始まります。来日したばかりの時は、体調不良の学生がいれば、病院まで付き添うこともします。

学校には寮があるので、寮での生活のサポートもあります。ちゃんと生活できているかチェックしに行ったりもします。寮での人間関係もありますし。

そろそろ今年入学した学生の学費や寮費の支払いの時期なので、その仕事もあって大変です。

それからJLPT受験に関する仕事もあります。学校で一括申し込みをするので、申し込みチェック、受験料の回収などです。

また今はコロナもあるので、マスク、手指消毒の徹底や、陽性者が出た場合のケアもあります。誰が濃厚接触者になったのかも確認しなければなりません。この辺はきちんとマニュアルを作ってありますが。

――日本語教育機関って、悪いニュースもありますが、ほとんどの学校は本当に留学生に手厚いですよね。先生方のご苦労に頭が下がります。

親代わりといったところですね。でも今担当しているネパールの学生は素直で誠実な学生が多いので、逆に学生から学ぶこともあります。

学習、進学、就職に関する支援も

――授業に関してはいかがでしょうか。

初めは初級クラスを担当していましたが、現在は中級クラスの担任をしています。他の先生と連携して、毎日シャドーイングや漢字の小テストを行っています。ネパールは非漢字圏なので苦労はありますが、みんな一生懸命頑張って漢字を勉強していますよ。

「モノグサ」というアプリを使って漢字や文法の学習をしてもらったりもしています。

それから11月には課外学習で学生を宮島の厳島神社に連れて行きました。広島県の県内文化施設等優待カード*2を使ったので、学生負担はゼロでした。学生たちも喜んでいました。

――学生さんたちはアルバイトをしていますか。

はい。お弁当工場で働いている学生が多いです。来日して半年以上たった学生は自分でアルバイトを探してコンビニやマクドナルドなどで働き始める学生もいます。

アルバイトで疲れても、頑張って授業を受けている学生が多いです。

――進路に関してはどうですか。皆さん、どんな希望を持っているんでしょうか。

車関係の学校に通いたい学生が多いです。ちょうど日産自動車関係の学校が愛媛県にあって、先日も説明会に学生を連れて行きました。それから介護の仕事に興味を持っている学生もいます。本格的な進路指導はこれからですが。

異文化カフェを作る夢も

――学校の中でこれからやっていきたいことがあれば教えてください。

そうですね。仕事の量も多いんですけど、学生一人一人が無事に希望通りの進路に進めること、そのサポートをすることです。JLPTの合格もそうですし。

それから、学生の希望する進学先などと横のつながりをもっと作っていきたいということもあります。

――異文化カフェを作りたいという夢をお持ちと伺ったのですが。

そうですね。それは個人的な夢なんですけど。カフェというか、いろんな国の人が気軽に集まれる場所を作りたいと思っているんです。

以前働いていた学校には島根県に姉妹校があり、そこの日本語教師の方が個人でボランティア団体を作っていました。海外ルーツの子どもたちへの日本語教育をやっていて、そこに2、3回お手伝いに行ったんです。それで自分も何かそういうことができないかなと思いました。その方と情報交換しながら、自分も考えていきたいです。

また超高齢化社会の日本で、今後、外国人との多文化共生社会が必要だということを、日本語学校の外にも広めていきたいという気持ちもあります。私は新聞投稿が好きで、留学生のこと、日本語教育のこと、多文化共生のことについて投稿して、地元の新聞ですがこれまでに20回ぐらい掲載されています。一人でも多くの人にこれらのことについて知ってほしいと思っています。

Twitterで投稿もよく行っています。短い言葉でどれだけたくさんの人に分かるように思いを伝えるかというのが、日本語教育にとどまらず大切なことなんじゃないかと思い、それも続けていきたいと思っています。

迷っている人は、ぜひやってみて

――これから日本語教師になろうと思っている人にアドバイスがあればお願いします。

420時間の養成講座を受けている人、興味があるけれどどうしようかなと足踏みしている人は、やってみたらいいんじゃないかと思います。やってみなければわからないし。もちろん生活面の不安とかいろいろな情報があるかもしれませんが、やってみたら楽しいこともたくさんあるし、私のように世界が広がったと感じることもあると思います。それに、いい先生と出会うチャンスもあります。

私自身も将来は海外へ行ってみたいとか、やりたいこともたくさんあります。どんな仕事でも楽しみを見つけられるかどうかが大切なんじゃないでしょうか。

 

取材を終えて

松崎さんは「留学生の親代わりとしてサポートする仕事は多岐に渡っていますが、正直、自分自身の人生をいかに楽しむかと葛藤もあるんですよねぇ」と。でも「日本語教育に出会って自分の人生が豊かになったし、いろんな出会いがあったので悔いはない」ともおっしゃっていました。

取材・執筆:仲山淳子

流通業界で働いた後、日本語教師となって約30年。5年前よりフリーランス教師として活動。

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*1:日本語教師、日本語教育関係の仕事が探せる求人サイト

*2:広島県内の留学生に日本や広島の文化・芸術への理解を深めてもらうため、県内各地の文化施設等の入場料・拝観料が減免される優待カード。同様の優待カードは他の自治体にもあります。