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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

増加する外国人労働者と日本語教育

厚生労働省によれば、日本国内の外国人労働者数が2025年10月末現在で230万人を超え、前年比で25万人以上増加し、過去最多を記録したことがわかりました。また、厚生労働省は2024年末に「外国人雇用実態調査」で、外国人の雇用をめぐる状況をまとめました。外国人労働者をめぐる現状と日本語教育の課題について考えます。

外国人労働者は230万人超へ

厚生労働省は2025年10月末現在の「外国人雇用状況」の届け出状況を取りまとめました。それによれば、

・外国人労働者数は2,302,587人で前年比253,912人増加し、過去最多を更新しました。外国人労働者数は国内の人手不足を背景に毎年増え続けていますが、対前年増加率は12.4%と前年と同率でした。

・国籍別の労働者数では、ベトナムが最も多く570,708人(外国人労働者数全体の24.8%)、次いで中国408,805人(同17.8%)、フィリピン245,565人(同10.7%)の順になっています。また、対前年増加率で大きかったのは、ミャンマー(前年比61.0%増)、インドネシア(同39.5%)、スリランカ(同33.7%)でした。

・在留資格別では、「専門的・技術的分野の在留資格」が、初めて最多になり718,812人で前年比122,908人(20.6%)増加、次いで「身分に基づく在留資格」が629,117人で前年比13,183人(2.1%)増加、「技能実習」が470,725人で前年比58,224人(14.1%)増加、「資格外活動」が398,167人で前年比45,586人(12.9%)増加、「特定活動」が85,686人で前年比14,010人(19.5%)増加と続いています。ちなみに前年までは「身分に基づく在留資格」が最多でした。

・都道府県別では、東京都が最も多く585,791人(全体の25.4%)、次いで愛知県が229,627人(同10.0%)、大阪府(同7.6%)でした。この3都府県で全体の実に43%を占めています。

なお、 外国人雇用状況の届出制度は、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実などに関する法律に基づき、外国人労働者の雇用管理改善や再就職支援などを目的としたものです。すべての事業主に、外国人の雇入れ・離職時に、氏名、在留資格、在留期間などを確認し、厚生労働大臣(ハローワーク)へ届け出ることを義務付けています。

日本語の課題を抱える労働市場

2024年末に厚生労働省から「外国人雇用実態調査」が発表されました。

この調査は、外国人労働者を雇用する事業所における外国人労働者の雇用形態、賃金などの雇用管理の状況及び当該事業所の外国人労働者の状況、入職経路、転職に関する事項などについて、その実態などを産業別、在留資格別などに明らかにすることを目的としています。

調査は事業所調査と労働者調査の2系統で行われ、事業所調査は事業所が、労働者調査は労働者が回答を記入する形で行われました。有効回答率は事業所調査が37.4%、労働者調査が26.1%と、必ずしも高い数値ではありませんでした。

ここでは、特に日本語教育に関連する結果をいくつかピックアップします。

【事業所調査】

外国人労働者を雇用する理由:

「労働力不足の解消・緩和のため」64.8%

「日本人と同等またはそれ以上の活躍を期待して」56.8%

「事業所の国際化、多様性の向上を図るため」18.5%

「日本人にはない知識、技術の活用を期待して」16.5%

外国人労働者の雇用に関する課題:

「日本語能力等のためにコミュニケーションが取りにくい」44.8%

「在留資格申請等の事務負担が面倒・煩雑」25.4%

「在留資格によっては在留期間の上限がある」22.2%

「文化、価値観、生活習慣等の違いによるトラブルがある」19.6%

特にない」16.9%

【労働者調査】

日本語能力(会話):

「日常的なことなら短い会話に参加できる」25.3%

「幅広い話題について自由に会話できる」16.4%

「会話の場面に応じた言葉を使うことができる」13.3%

「日本語で会話はほとんどできない」2.7%

日本語能力(読解):

「JLPT日本語能力試験N3 レベル」20.6%

「JLPT 日本語能力試験N5 レベル」18.2%

「JLPT 日本語能力試験N4レベル」17.4%

「日本語はほとんどわからない」7.8%

今の会社の仕事をする上でのトラブルや困ったことの有無

「なし」が82.5%

「あり」が14.4%

「あり」の内訳

「紹介会社(送出し機関含む)の費用が高かった」19.6%

「トラブルや困ったことをどこに相談すればよいかわからなかった」16.0%

「事前の説明以上に高い日本語能力を求められた」13.6%

以上です。

日本で働く外国人は、今後、育成就労制度の開始により、その数は益々増加することが予想されます。現状の労働市場においても事業所と労働者の双方から日本語に関する課題が出ているわけですが、育成就労制度の創設にあたっては、そのような課題を解決するための環境整備が求められます。

日本語教育を受けることを希望する人が、「その希望、置かれている状況及び能力に応じた日本語教育を受ける機会が最大限に確保されるよう」という日本語教育推進法の理念に則り、必要十分な日本語教育が保障される制度設計が、育成就労制度のスタートに当たって不可欠なことと思われます。

 

「外国人雇用状況」の届け出状況のまとめ(令和6年10月末現在) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_50256.html

「外国人雇用実態調査」

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_46975.html

執筆:新城宏治

株式会社エンガワ代表取締役。NPO法人国際教育振興協会 日本語教師ネットワーク機構代表理事。高崎健康福祉大学非常勤講師。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の魅力を世界に伝えたいと思っている。