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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

「生成AI×日本語教育」その可能性と効果について考えよう

「生成AIは便利だ」というのは聞きますが、日本語教師の皆さんは生成AIについてどのようなイメージをお持ちでしょうか。難しそう、ついていけないと感じている方も多いかもしれません。使えば便利で様々な可能性が広がる生成AIについて、少しでも使うハードルが下がるように、生成AIを取り入れられる業務内容や、活用することでの効果、使用上の注意点などについて紹介してみようと思います。(西隈 俊哉/一般社団法人日本語フロンティア代表理事)

生成AIとは何者なのか

生成AIとは何者でしょうか。それは、まるで魔法のように、与えられた情報をもとに新たな文章、画像、音声などを生み出す人工知能の一種です。例えば、短い文章を入力すれば、物語の続きを書いてくれたり、風景のイメージを伝えれば、絵を描いてくれたりします。

この文章は、「“生成AIとは何者でしょうか”の続きを作ってください」という指示に基づいて生成AIが作成してくれた文章です。このように、生成AIに質問・指示を投げかけることで、それに見合った回答を出してくれます。本当に魔法のような存在です。

日本語教師としても業務や授業準備にうまく使えばさまざまな効果が期待できますが、いったい何ができるのか、使い方は簡単なのか、授業にそのまま使っていいのか、など心配な部分もあるでしょう。生成AIに聞きつつ紹介していきます。

日本語教師としての業務の中で生成AIは何ができるか

さて次に、「私は日本語教師です。授業や授業準備などに生成AIを取り入れたいと思っています。日本語教育に生成AIを使うとどのような効果があるでしょうか。また、効果を実現できる案も提示してください」という質問を生成AIにしてみました。様々な回答を生成AIは出してくれましたが、その一部を紹介いたします。

効果1.教材作成の効率化と質の向上

効果例:

・教材作成時間の短縮

・多様な教材の作成

・学習者のレベルや興味に合わせた教材の作成

案:

a.語彙や文法の練習問題の自動生成

b.読解教材の作成(レベル別、テーマ別)

c.会話練習のシミュレーション作成

d.イラストや図解を用いた教材作成

効果2.教師の負担軽減と創造性の向上

効果例:

・ルーティンワークの自動化による時間創出

・教材作成のアイデア出し

・授業準備の効率化

案:

e.授業計画やスケジュール作成のサポート

f授業で使用する画像や音声の検索・編集

g.AIによる教材分析改善案の提案

番号やアルファベットはわかりやすくするため筆者が付けました)

「効果1.教材作成の効率化と質の向上」の例で書かれていることですが、生成AIを使うことで教材作成時間の短縮が見込まれます。例えばbの読解教材の作成を生成AIにやってもらうことも可能です。テーマ、レベル、長さを指定し、設問も作るように指示すれば、読解教材を作ってくれるのです。また、dのイラストや図解も生成AIによっては作成してくれます。「眠そうです」という言葉をイラストで伝えたい場合、これまでは眠そうな人のイラストや写真を探す必要がありましたが、生成AIに描いてもらうこともできます。そしてそれを授業で使うことができます。

「効果2.教師の負担軽減と創造性の向上」の例である授業準備の効率化も、生成AIを使う利点の大きいものです。eにあるように、生成AIは授業計画を作ってくれます。例えば、「日本語の中級レベルの学習者10名のクラスで100分間会話の授業をします。授業の内容はどうすればいいでしょうか?」という質問を投げかけると、以下のような流れを示してくれます。

授業内容の提案

1.ウォーミングアップ(10分)

軽い自己紹介: 今日の気分や、週末にしたことなどを共有してもらい、リラックスした雰囲気を作る。

簡単なクイズ: 日本文化や時事ニュースに関するクイズを出題し、日本語での思考を促す。

ロールプレイ: 日常生活の簡単なシチュエーションを想定した短いロールプレイを行う。

2.メインテーマの導入(15分)

テーマの提示: 授業のテーマを提示する。テーマは、学習者の興味関心、日本語能力、そして社会的な話題を考慮して決定する

関連する語彙・表現の学習: テーマに関連する新しい語彙や表現を導入し、例文を通して意味を理解させる。

ディスカッションの仕方の説明: グループディスカッションやペアワークのルールや注意点などを説明する。

(以下略)

授業の流れをここまで提示してもらえると、助かります。時間も出してくれて、とてもありがたいです。このように、生成AIを使うことによって、授業準備の効率化を図ることができます。

生成AI自身が挙げる、活用上の注意

そして、生成AI自身が「活用上の注意点」として以下のことも挙げています。

  • 生成AIの出力内容を鵜呑みにせず、教師自身が内容を精査し、必要に応じて修正することが重要です。
  • 生成AIはあくまでも教師のサポートツールであり、教師自身の専門性や創造性が最も重要であることを忘れないようにしましょう。

これは生成AIの言う通りで、生成AIはサポートツールであることを忘れてはいけません。ハルシネーション(hallucination)といって、AIが誤った情報や架空の内容を生成してしまうこともありうるのです。「教師自身の専門性や創造性が最も重要である」というのは本当にその通りで、日本語教師が専門家としての目で生成AIの回答内容を精査する必要があります。生成AIをただ使い、生成AIの回答の通りに教えるだけなら、日本語教師としての専門性は必要ありません。生成AIを使いこなす力を自分自身の中で育てていくことが必要だと言えます。使いこなす力を育てていく中で、より専門的な知識を得たり、より深く考えたりするようになるかもしれません。そして、今までになかった創造性を手にするかもしれません。生成AIは私たちの成長もサポートしてくれる可能性を秘めているのです。

まずは触ってみよう

そんな生成AIも、触ってみなければ始まりません。まずはどんな使い方でもいいから、生成AIを使ってみることが大事です。とりあえずは例文作りを手伝ってもらうのはいかがでしょうか。

「眼鏡をかける」を使って例文を作ってください、という指示を出すだけでも例文を作ってくれます。

1.目が悪いですから、本を読むとき、眼鏡をかけます。

2.小さい字が読めませんから、眼鏡をかけます。

3.彼はいつも眼鏡をかけています。

4.映画を見るとき、私は眼鏡をかけます。

5.運転するときは、眼鏡をかけます。

このように複数作ってくれます。教師としては、これらの中から「使いたい」と思える例文を授業で使うことができるのです。自分自身でこれだけの数の例文を作るのは大変なことなので、例文作りを手伝ってもらえるだけでも相当労力が減ります。

いかがでしょうか。生成AIというものが少しでも理解できましたでしょうか。そしてこれからは、「生成AIが具体的にどのようなサポートをしてくれるのか」について考えていきたいと思います。みなさん、一緒に「生成AIを使って日本語教育で何ができるか」について考えましょう。

西隈 俊哉(にしくま しゅんや)

一般社団法人日本語フロンティア代表理事。著書に『日本語ロジカルトレーニング 初級』『同 中級』(アルク)、近著に『一文字から始める集中!日本語読みトレ』(ジャパンタイムズ出版)などがある。南インド料理に興味があり全国各地を食べ歩いているが、まだ南インドには行ったことがない。

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生成AI×日本語教育

皆さんは生成AIについてどのように思っていらっしゃいますか? 
「生成AIは便利だ」というのは聞きますが、実際には何ができるのでしょうか?
また、「使ってみたいんだけど、何をどうやって使うのかがわからない」という人もいると思います。

今回のセミナーでは、日本語教師の私たちが生成AIを効果的に取り入れるにはどうすればいいのかをメインテーマに、生成AIを使った授業準備や練習問題作成を効率的におこなうためのヒントを手に入れることを目指します。ヒントを手にすれば、自分に合った使い方が無限に広がります。
皆様のご参加をお待ちしております。

日時:2025年4月19日(土)10-12時

講師:加須屋 希・神 恵介・西隈 俊哉

形式:ZOOM

参加費:無料

主催:㈱アルク・一日本語フロンティア

詳しくはこちらから↓

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