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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

日本語教員試験対策を考える――カギは基礎試験と聴解試験

令和7年11月2日(日)に令和7年度日本語教員試験が行われます。受験予定の方は、試験対策を始めていますか? 日本語教員試験は出題内容が幅広く、また、経過措置により試験科目の一部が免除になる方もいます。ここでは、令和6年度の結果を踏まえて、令和7年度の日本語教員試験対策を考えます。最後に日本語教員試験セミナーのご案内もしています。

基礎試験から受験する場合

基礎試験から受験する方は、試験ルートか、経過措置のFルート(現職者だが、特に養成講座修了や日本語教育能力検定試験の合格などがない人)が該当します。なお、試験ルートの場合は日本語教員試験に合格後に実践研修を受けることが必要ですが、Fルートの場合は実践研修が免除になります。

ここで、改めて昨年行われた令和6年度の日本語教員試験の試験結果を見てみましょう。試験ルートとFルートの基礎試験合格者の合計は367人、応用試験の合格者は366人でした。つまり基礎試験に合格した人のほとんど全てが応用試験にも合格しているという結果でした。

ここから言えることは、基礎試験から受験する人は、まず基礎試験に合格できる力を付けることが何よりも大切であるということです。なぜなら、令和6年度の実績では、基礎試験に合格できる力がある人は、ほとんどの人が応用試験にも合格しているからです。

基礎試験の合格基準は、必須の教育内容で定められた5区分において、各区分で6割の得点があり、かつ総合得点で8割の得点があることとなっています。6割が最低ラインですが、最終的には総合得点で8割取らなければならないので、全ての区分に置いて満遍なく8割取れる力を付けることを念頭に、試験対策を進めるのがいいでしょう。

基礎試験は免除で応用試験から受験する場合

応用試験の合格基準は、総合得点で6割の得点があることです。この総合得点とは、応用試験(聴解)と応用試験(読解)を合わせた得点です。応用試験(聴解)は50問(50点)、応用試験(読解)は60問(60点)ですので、110問(110点)のうち、66問(66点)取れればいいということになります。万が一、応用試験(聴解)、あるいは応用試験(読解)のどちらかで本番に大きなミスをしたとしても、もう片方で挽回が可能と考えると、少し気が楽になります。

とは言っても、もちろんそんなに易しい試験ではありません。特に、令和6年度の日本語教員試験では、応用試験(聴解)を難しいと感じた人が多かったようです。私は、受験者が応用試験(聴解)を難しく感じた大きな理由の一つは、全ての受験者にとって初めての試験だったため、試験形式に不慣れな面があったからではないかと思います。

例えば、日本語教育能力検定試験であれば、これまでほぼ同じような形式で問題が作られており、過去問もたくさん出ていますので、事前に過去問を繰り返しやっておけば、試験の形式には十分に慣れることが可能でした。

しかし、日本語教員試験は昨年第1回の試験が行われたばかりで、かつ問題が非公開のため過去問も出ていません。事前に公開されたサンプル問題はごく一部で、それも音声やスクリプトは公開されませんでした。そのため、どんな形式の問題が出題されるのか予想が立てられなかったことが、受験者が難しいと感じた理由ではないでしょうか。

またそれが、受験者の不安や焦りにつながったかもしれません。聴解試験はただでさえ受験者にプレッシャーがかかります。ペース配分がわからず集中力が続かなかったり、音声のスピードを実態以上に速く感じたりした受験者もいたのではないかと思います。

ここから言えることは、実際の日本語教員試験の過去問はなくても、あるいは全く同じ形式でなくても、類似の問題集などを使って、近い形式で慣れておくことが大切だということです。『日本語教員試験 まるわかりガイド』(アルク)の聴解演習問題などは、本試験にかなり近い形式のように思われます。また、日本語教育能力検定試験の過去問も、内容的には重なるところが多いので、大いに役立つでしょう。

まずは基礎力をしっかり付けること

基礎試験から受験する場合でも、応用試験から受験する場合でも、いずれにしろ今の時期は、基礎力をしっかりと付ける時期です。

そのためには、出題範囲がまとまっているテキストを使って試験範囲全体を学び直し、「穴」がないようにしておくことが大切です。下記でご案内している4月16日(水)のセミナーから試験日まで200日、具体的な計画を立てて、時間を有効に使い、一つ一つの内容をしっかり頭に定着させていきましょう。

できるだけ多くの問題を解き、問題が解けたかどうかによって、知識の定着度合いを測ることも大切です。間違えた問題、あやふやだった問題は解説を読み、テキストに立ち返る。これを何度も繰り返すことで、しっかりした基礎力が身に付いていきます。

記憶を定着させるためには、さまざまなコツがありますが、有名なものに「エビングハウスの忘却曲線」があります。これは、人は一度覚えたものを再度覚えるためにかかる時間の節約率を時間軸で示したものです。節約率は、20分後には58%、1時間後には44%、1日後には34%、6日後には25%、1カ月後には21%忘れるという結果が出ています。つまり、20分後であれば時間を約6割節約できる(最初の約4割の時間で再度覚えられる)が、1か月後では約2割しか節約できない(最初の約8割の時間が必要になる)ということになります。

逆に言えば、覚えたことを忘れてしまう前に復習して、長期記憶に定着させるのが効果的ということになります。また、復習をする際も、テキストを読むといったインプットの復習を繰り返すのではなく、関連した問題を解く、覚えたことを口に出すなど、アウトプットするとより効果的です。

執筆:新城宏治

株式会社エンガワ代表取締役。NPO法人国際教育振興協会 日本語教師ネットワーク機構代表理事。高崎健康福祉大学非常勤講師。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の魅力を世界に伝えたいと思っている。

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