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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

世界の日本語能力試験の受験状況を見る

2024年12月に行われた日本語能力試験のデータが国際交流基金から発表されました。前年同月の試験と比べ、受験者は全体で2割以上増加しました。ここでは、受験者の内訳を国・地域別、レベル別で見ながら、その特徴を考えます。

受験者数は約79万人、前年同月から約12万人増加

最初に全体および海外・国内の受験者数を、前年同月(2023年12月)の試験と比較して見ます。

2024年12月/2023年12月/増減率

全体:790,536人/663,295人/119%

国内:333,983人/236,547人/141%

海外:456,553人/426,748人/107%

受験者数は前年同月の試験と比べて、全体で12.7万人、国内で9.7万人、海外で3.0万人増加しています。2024年7月の試験に引き続き、国内での受験者数の増加が顕著です。

国内はN3を中心に増加

次に、国内と海外に分けて、レベル別の受験者数の内訳を、前年同月の試験と比較してみます。まず、国内です。

国内

N1:52,120人/45,050人/116%

N2:90,471人/67,033人/135%

N3:109,068人/74,573人/146%

N4:77,853人/45,891人/170%

N5:4,471人/4,000人/112%

受験者数ではN3のみが10万人を超えて突出しています。また、伸び率としては、N4の170%が目立ちます。N3の次に受験者が多いのはN2です。全体としてN3を中心に、N2からN4までの中級レベルの受験者が増加していることがわかります。

ちなみに、以前は国内の受験者数はレベルが高いほど多く、全レベルの中でN1の受験者数が最も多かったのですが、今から10年前の2015年頃にN2の受験者数が、2016年頃にN3の受験者数が、そして2023年頃にはとうとうN4の受験者数がN1の受験者数を超えました。中級レベルの受験者数の増加は、ここ10年ぐらいの大きな傾向です。

海外はN1レベルが減少

次に海外のレベル別の受験者数の内訳を、前年同月の試験と比較してみます。

海外

N1:74,634人/76,504人/98%

N2:107,126人/97,637人/110%

N3:105,511人/90,127人/117%

N4:104,353人/103,443人/101%

N5:64,929人/59,037人/110%

N2~N4の中級レベルがコアの層であるのは国内と変わりありませんが、N1の受験者数が前年同月より減少していることが気になります。

日本語能力試験の受験者数は右肩上がりで増えてきましたので、レベル別でも減少するのは、コロナ禍の影響などの特殊要因を除いては、あまり例がありません。詳細を国・地域別に見てみましょう。

国・地域別の受験者層の特色

最後に、国・地域別の状況を概観します。ここでは受験者数が2万人超えている国・地域について、受験者数が多い順に見てみます。

中国:受験者数136,143人

N1-N2を中心にした受験者が多いのが特徴ですが、実はN1の受験者が前年同月から減少しました。海外のN1の受験者数の減少の大きな要因になっています。

ミャンマー:受験者数82,470人

N3-N4を中心にした受験者が多いのが特徴ですが、N4の受験者が前年同月から減少しました。ただし、これは前年同月の受験者が一時的に急増したことも影響していると思われます。

韓国:53,108人

韓国は全てのレベルで受験者が増え、その結果、受験者総数も前年同月から大きく増加しました。全体としてはN1-N3レベルの受験者が多いのですが、それに加えてN4-N5の受験者が増えているのが特徴です。

台湾:33,514人

受験者数が世界で4番目の台湾ですが、前年同月比では受験者がやや減りました。しかしながら、N4-N5レベルでは受験者が微増しており、学習者の裾野の広がりが感じられます。

ベトナム:29,089人

N1-N4の各レベルで、少しずつ受験者が増えています。

インドネシア:25,037人

N4-N5の受験者が急増しています。

以上です。国・地域のよって、受験者層に大きな特色があることがわかります。その特色の背景には、各国・地域の日本語教育事情はもちろん、広く社会・経済事情なども大きく影響しているものと思われます。

なお、詳細はこちらをご覧ください。

日本語能力試験 2024年(令和6)年 第2回(12月)データ

https://www.jlpt.jp/statistics/archive/202402.html

 

執筆:新城宏治

株式会社エンガワ代表取締役。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の魅力を世界に伝えたいと思っている。