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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

常設の地域日本語教室で日本語教師がコースデザインー大和市国際化協会

日本在住の外国人数は過去最高を更新していますが、地域に暮らす外国人生活者への日本語教育は自治体によって大きく異なっています。日本語教室を運営するボランティア団体の中には、教える場所の確保に苦労するという話も聞きます。そんな中、神奈川県大和市には外国人市民への日本語教室や交流事業のための拠点があると知り、公益財団法人大和市国際化協会の小西永里子さん、コーディネーターの三好直美さんにお話を伺いに行ってきました。

毎日開いている活動拠点

――今日はお忙しいところお時間をお取りいただきありがとうございます。平日の午前ですが、日本語学習に来る方がいるのですね。

小西:ええ、平日の午前中は結構多くて、午後の方が少ないです。火、木は夜8時までやっているので、その時間はまた増えます。

――外国人は現在何人ぐらい住んでいらっしゃるんですか。

小西:2025年5月末で9006人です。市の人口が約24万人ですので、4パーセントに満たない程度です。長くペルーの人が多い地域でしたが、現在の在住者はベトナム、中国、フィリピンの順です。韓国やペルーの方も住んでいます。

――大和市国際化協会が設立されたのはいつでしょうか。

小西:1994年です。ここは、1980年から1998年まで南林間にインドシナ難民定住促進センターがありましたので、もともとベトナム、ラオス、カンボジアの人が多かった地域です。それに加え、1989年に入管法が改正されて日系ペルー人が増えたことで、地域の国際化を進める必要性が高まり、この法人が作られました。日本語学習支援については、当協会でボランティアの養成をし、実際の活動は各団体にお任せするという時期もあったのですが、2018年にこの建物(市民活動拠点ベテルギウス北館1階)に移り、現在のような活動の形になりました。

――そうなんですか。常設の日本語教室スペースがあるのは本当にいいですね。教材も揃っていて、毎日開いているわけですし。他のボランティア団体さんでは毎回活動場所を予約しなければならないという話も聞きます。

日本語教師とボランティアの役割

――日本語支援の内容について教えてください。

小西:まず全く日本語を学習したことがない方のために専門家の日本語教師による日本語教室があります。こちらは1回2時間かける8回の学習になります。このプログラムを1年に5期行っています。

――学習者の方はどうやって申し込みをするんですか?

小西:外国人のための相談窓口があるので、そこに来た方、例えば翻訳を頼みに来た方とか、そういう方が、日本語教室があるのを見て、自分も勉強したい! となることも多いです。あとは口コミも。

三好:入門日本語教室を終えた方、またはすでに少し話せる方には、登録ボランティアを紹介して、基本的に週に1回1時間半マンツーマンで日本語支援を行っていきます。学習者とボランティアの都合が合えば週に2回ということもありますし、その点はフレキシブルにやっています。どのボランティアに、どの学習者を担当してもらうか、マッチングは私のほうで行います。学習者の状況やニーズを聞き、教材やカリキュラムを決めていきます。初回は私も立ち会いますし、何か相談があればすぐに乗れるようにしています。

今、あそこでは介護の仕事をしている学習者のために、介護の用語などをやっていますね。

――コースデザインは三好さんがなさるわけですね。それはボランティアの方も安心ですね。

三好:「私にできるかしら」と心配される方もいるので、それぞれの方にできるところから支援していただけるように、こちらで考えています。年に1回日本語ボランティア養成講座を開催していますが、そちらを受講していなくても、ボランティアの登録はできます。また活動しているボランティアの方向けに夏と冬にブラッシュアップ講座も開催しています。その内容はボランティアの皆さんから出てくる要望や、私の方から客観的に見て強化したほうがいい点などを考えて、小西と相談したうえで決めています。

日本語支援だけでなく、ネットワーク作り、交流事業、スピーチ大会も

――その他の活動としてはどういったものがありますか。

小西:ボランティア団体のネットワーク作りや交流事業ですかね。一緒にスピーチ大会をやったり、助成金を交付して、会場費や教材費などの支援も行っています。こちらの拠点だけでなく、他の日本語教室等の情報を得ることができる日本語教室検索サイト「やまとDEにほんご」の運営もその一つです。

――外国人児童・生徒への支援もおこなっていますか。

小西:ええ、そちらは日本語・学習支援ボランティアを小中学校に派遣するのと、放課後教室や夏休み教室での支援です。大人の日本語支援を行うボランティアと子どもへのボランティアは別のものなのですが両方に登録されている方もいます。

――今、登録されているボランティアの方は何名ぐらいいらっしゃるんですか。

三好:大人の日本語だけで、111名が登録しています。日本語・学習支援ボランティア登録は76名です。ボランティアに興味があるけれど、お話を聞いてからという方が多いのですが、未経験であったり、養成講座等を出ていなくても、専門的なことはこちらにお任せいただき、学習者に寄り添っていただける方であればとお伝えしています。年齢層も幅広く大学生から80代の方までいらっしゃいます。50歳前後の女性、定年後の男性が多いです。お友達同士で話を聞いて、ちょっと興味があって来ましたと言う人もいます。夜だったらと、30代で仕事を持っている方も活動されています。

――それが常設の活動場所がある強みですね。自分の都合に合わせていろいろな時間に活動できる点が。

学習者とボランティアの橋渡しを

――三好さんはいつからこのお仕事をされているんですか。

三好:私は2024年の4月からです。もともと大学で日本語教育を専攻していたのですが、日本語教師になったのは2014年でした。その時は日本語学校で。その後子どもの支援を経験し、地域の支援に携わりたいという気持ちを持って、ずっとこちらの活動の様子もホームページで見ていたんです。そうしたら採用情報が出たので、来た! っていう感じで(笑い)

――日本語学校で教えるのと違う面はどういったところでしょうか。

三好:そうですね。集っている方の目的も違いますし、私たちの求められているものも全然違う。一人一人が何を求めていて、その方のバックグラウンドがどうなのか、今の生活の状況がどうかということを想像することが必要です。そこに対してボランティアにどう寄り添ってほしいのか、学習者の方がまだ日本語でうまく表現できないことを、できる限り代弁するようにしています。

逆に学習者には、日本での生活はこういうもので、ボランティアはこういう思いで関わってくれているよということを伝えるようにしています。その橋渡し的な役割を感じています。

――今後活動としてやって行きたいことはありますか。

三好:昨年度末、ボランティア同士の座談会をやった時、学習者も含めて、一緒に何か交流できるものがないかというお話が出ました。それで今回試しに、お茶とお菓子を用意して曜日ごとにボランティアと学習者が参加する交流会をやってみたんです。思いのほか、ボランティア同士や学習者同士とか、また学習者とボランティアの別の組み合わせでも交流があって、すごくよかったなと思いました。せっかく同じ場所で学習をしているので、お互い繋がりを持てるような何かをやっていけたらと思いました。

――最後に何かアピールしたいことはありますか。

ボランティアは常に募集しています。いろいろな方がいろいろな関わり方で、こういう形だったら自分もできそう! といかに思ってもらえるかに力を注ぎたいと思っています。結果的にそれで学習している方の要望に応えられているなら、日本語ボランティアとしてとてもいい形だと思います。

――今日は、お忙しいところ本当にありがとうございました。

 

大和市国際化協会ホームページ  https://www.yamato-kokusai.or.jp/

「やまとDEにほんご」    https://www.yamato-kokusai.or.jp/nihongo/

第20回日本語スピーチ大会(2025年) « 公益財団法人 大和市国際化協会

過去のスピーチ大会動画

https://youtube.com/@yamatointernationalassocia5926?si=1v0jgGk3VcZukFqG

取材を終えて

私がお話を伺っている間も、学習者の方が次々とこのサロンに入ってきました。隣ではボランティアさんが企画したおしゃべり会(マンツーマンレッスンではなくフリートーク)も行われていました。プロの日本語教師である三好さんが、コーディネーターとして気を配り、活動をまとめているので、ボランティアの活動もスムーズにいくのだなと感じました。日本語教師の働き方の一つとして、是非皆さんにお伝えしたいと思いました。

取材・執筆:仲山淳子

流通業界で働いた後、日本語教師となって約30年。8年前よりフリーランス教師として活動。