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出入国在留管理庁にあれこれ聞いてみました

先日、法務省・出入国在留管理庁から2019年6月末現在の在留外国人数が発表されました。人数は282万9416人で、前年末(半年前)に比べて9万8323人(3.6%)増加し、過去最高となりました。その内容をご紹介しながら、数字を見ながら浮かんできた疑問について、出入国在留管理庁から聞いた内容を文章でまとめました。(編集長)

国籍・地域別、在留資格別、都道府県別のトップ5

国籍・地域別

1位 中国:786,241人(構成比27.8%)前年末比+2.8%

2位 韓国:451,543人(同16.0%)同+0.4%

3位 ベトナム:371,755人(同13.1%)同+12.4%

4位 フィリピン:277,409人(同9.8%)同+2.3%

5位 ブラジル:206,886人(同7.3%)同+2.5%

前年末から増加が著しいのはベトナムですが、8位のインドネシアも前年末比+8.4%と急増しています。

在留資格別

1位 永住者:783,513人(構成比27.7%)前年末比+1.5%

2位 技能実習:367,709人(同13.0%)同+12.0%

3位 留学:336,847人(同11.9%)同-0.05%

4位 特別永住者:317,849人(同11.2%)同-1.1%

5位 技術・人文知識・国際業務:256,414人(同9.1%)同+13.6%

前年末から増加が著しいのは技術・人文知識・国際業務、技能実習ですが、その一方でわずかではありますが留学の数が減っているのが気になります。ちなみに留学の国籍・地域別で減少幅が大きいのは、台湾(前年末比-4.6%)、タイ(前年末比-4.3%)、ネパール(前年末比-2.5%)、インドネシア(前年末比-1.0%)などです。

都道府県別

1位 東京都:581,446人(構成比20.6%)前年末比+2.4%

2位 愛知県:272,855人(同9.6%)同+4.6%

3位 大阪府:247,184人(同8.7%)同+3.4%

4位 神奈川県:228,029人(同8.1%)同+4.1%

5位 埼玉県:189,043人(同6.7%)同+4.6%

上位5都府県で全体の過半数を占めており、大都市圏や集住地域に外国人が集中していることが分かります。

日本語教育的な観点から出入国在留管理庁に聞く

今回は、出入国在留管理庁総務課広報係を通じて、各担当の方々に答えていただきました。

Q1:技能実習について

技能実習が増加している一方、技能実習生の長時間労働や失踪など、さまざまな制度の問題も指摘されています。また2019年4月からは特定技能が新設されたこともあり、これによって技能実習を廃止してはどうかという声も多く聞かれますが、いかがですか。

A1:技能実習制度を廃止することは考えていません。

技能実習は技術移転が目的であり、特定技能は人手不足解消が目的ですので、そもそも制度の趣旨が異なります。ですので、特定技能ができたことで技能実習制度を廃止することは考えておりません。もちろん、技能実習についてさまざまな問題が発生していることは認識しておりますが、技能実習制度の運用を適正化していくことで問題を解決したいと思っています。

Q2:定住者について

定住者の最大はブラジル(6.2%)ですが、定住者には日本語力についての規定が、他の在留資格に比べて弱いように思います。ビザ更新時のインセンティブとして日本語力を設定し、より積極的に日本語を学習してもらうようなことはできないでしょうか。

A2:5年ビザには日本語力についての規定があります。

定住者ビザは、1年、3年、5年、6カ月の4種類があります。この中で、最長の5年を希望する場合は、以下のいずれかの一定の日本語能力の証明が必要になります。

  • 法務大臣が告示で定める日本語教育機関で6カ月以上日本語教育を受ける
  • 日本語能力試験のN2合格
  • BJTビジネス日本語能力テスト、JLRT聴読解テスト(筆記テスト)で400点以上
  • 学校教育法第1条に規定する学校(幼稚園を除く。)で1年以上の教育

なお、この規定を3年などの期間に広げることは考えておりません。

Q3:留学について

留学生には大学生だけではなく、日本語教育機関で日本語を学習する者も含まれますが、日本語教育機関については2019年8月に告示基準が一部改正され、全生徒の6か月間の平均出席率が7割を下回る場合、また、日本語能力について、CEFRのA2相当以上のレベルであることが試験その他の評価方法により証明された学生等の割合が3年連続で7割を下回る場合には、当該日本語教育機関を留学告示からの抹消の対象とすることとなりました。日本語教育機関には多様な役割があると思いますが、これによって、日本語教育機関の役割は大学等への進学予備教育であると理解していいでしょうか。

A3:進学・就職等のために日本語を学ぶことが目的と承知しております。

大学等への進学を目的として日本語を学習する留学生も多くいると思われますが、日本語教育機関の役割は大学等への進学に限られるものではありません。例えば進学以外にも、大卒で来日→日本語学校→日本企業に就職、大卒で来日→日本語学校→帰国して日系企業に就職する留学生もいますので、留学生の中には、進学目的ではなく、就職目的等で日本語を学習している者もいます。

今回の告示基準の一部改正では、日本語教育機関がきちんと授業をし、しっかりと在籍管理をしているかという観点から告示からの抹消基準として日本語能力等に係る基準等を新たに設けさせていただきました。

出入国在留管理庁の役割

出入国在留管理庁は、外国人の出入国及び在留の公正な管理に関する施策を総合的に推進することを目的の一つとして、法務省の外局として2019年4月1日に設置されました。以前は、法務省の内部部局として入国管理局という名称でしたが、「出」と「在留」が付き、「局」から「庁」へ格上げされました。

「在留」には「在留管理(受け入れ政策)」と「在留支援(受け入れ環境整備)」の二つの意味合いがあります。在留支援に当たっては、生活者として外国人を受け入れ、地域で共生していくにためには、雇用、教育、医療・保険・福祉、住宅、防災などさまざまな課題に取り組んでいくことが必要です。もちろん、この中で日本語教育も大変重要なテーマになります。管轄がいくつかの省庁にまたがる課題も多いことから、出入国在留管理庁がその整備について総合調整を行う役割を担っています。

外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策

外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策の充実について

http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri01_00140.html

これまで長年にわたり、外国人受け入れの課題に現実的に取り組んできたのは地方自治体ですが、4月からは地方の出入国在留管理局に受入れ環境整備の担当者が配置されました。この担当者が地方自治体との窓口役となり、それぞれの地域の現状や課題、要望等の把握に努めています。出入国在留管理庁では、関係省庁と当該課題や要望等を共有するとともに、地域における外国人の受入れ環境整備が促進されるよう、関係省庁や地方自治体と連携をして取り組んでいます。

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