4/30まで10%OFF「 NAFL 日本語教員試験対策セット」 【4/30終了】対象商品10%OFF「 春の資格取得キャンペーン」

検索関連結果

全ての検索結果 (0)
自ら立ち上げた日本語教室で学習者に笑顔を

現在、日本在留の外国人は280万人以上(法務省統計)。その中には留学生ではない、いわゆる生活者、児童、生徒も含まれており、そうした方たちの日本語学習は、多くの場合、日本語ボランティアによって支えられています。今回は、ボランティア養成講座終了後、既存の日本語教室に所属するのではなく、すぐに仲間とともに自らボランティアの日本語教室「えがおで日本語サロン(注1)」を立ち上げた石井教文さんにお話を伺いました。(仲山 淳子)

日本語ボランティアに興味を持ったきっかけは?

会社員時代にタイに7年、韓国に5年駐在しました。その時、自分も外国人として言葉や習慣の違いによる苦労を感じたもので、この経験を日本在住の外国人のために生かせないかと考えたんです。実は退職後も会社ОB会の幹事などをしていましたが、70歳を機に退き、「これからは会社ではなくて地域に目を向けよう!」と江戸川総合人生大学国際コミュニティ学科(注2)に入学して、地域貢献のあり方を学びました。そして、江戸川区内の小学校の外国人児童取り出し授業を担当してみて、日本語を教えることの難しさを知ったんです。それで、更にYMCA日本語ボランティア養成講座を受講することにしました。

日本語の教え方を学んで感じたことは?

まず日本語で日本語を教えるということに驚きました。そしてそのためには、学習者のレベルでも分かる日本語で話せるようになる必要があるんですが、それに慣れるのが大変で……。普段の生活では日本語の文法など意識しないですからね。しかし、なんとなく使っていた日本語を客観的に見ることができたのは楽しい経験でもありました。それから、驚いたのはボランティア希望者が思った以上に多くて、シニアから日本語教師を目指す人もいたことです。

日本語教室立ち上げの苦労は?

人生大学で学び始めた当初から日本語教育に関することで地域の役に立ちたいという思いがあり、外国人が日本語を学べる場を作ろうと考えていました。江戸川区では一之江駅周辺に日本語ボランティア教室がないことが判明したので、ここに教室を開くことを決めました。教科書の購入や必要な書類の印刷費、チラシやホームページなどの宣伝費等々、初期投資資金として必要だったのはおよそ10万円。これは人生大学同期の20人と友人たちが会員となってくれて、その会費を充てることでなんとか解決しました。ボランティア団体として登録すれば自治体からの援助もあるので助かっています。こだわっているのは、あくまでもボランティア教室なので、学びにくる方たちから頂くのは1回100円だけということ。プラス笑顔かな。

日本語を教えていく上で大切にしていることは?

学習者の希望、目的、レベルを正確に把握し、効果的に教えることですかね。楽しく学習を続けてもらうためには工夫が必要ですから。特に小中学生は自らの意志で来日していないので、モチベーションが上がらないこともあるんです。そんな子供たちが勉強したいという気持ちになるよう、ゲーム等いろいろな仕掛けを考えたり、日本の文化を紹介したり。そのためには指導員のスキルアップも必要なので、研修も計画しています。

これから日本語教室を立ち上げようと考えている人にアドバイスを

学びたい人が来やすいような場所と時間の設定が重要だと思います。ボランティア活動はしたいけれど、この時間じゃないと嫌だということでは難しい。また学習者は待っていては来てくれないので、ホームページを作ったり地元の商店街にチラシを置いてもらったりといった広報活動も大切です。

70歳を過ぎているとは思えない石井さん。エネルギッシュで明るく、かつおしゃれ。見学させていただいた「えがおで日本語サロン」は、隅々までそんな石井さんのアイデアに溢れていました。例えば学習者として入会するともらえる会員証。1回ごとにスタンプが押されるのですが、10個たまると次の1回は無料になるのです。学習者には一人一人個人カードが作られ、その日どんなことを学習したのかを記すポートフォリオにもなっています。学習は基本的には1対1もしくはボランティア指導員1人に対して2名程度。それぞれのレベルや興味に合わせて進められていました。ミニホワイトボードで漢字を習っているフィリピンのお母さんもいれば、自分の持ってきた新聞記事を指導員と一緒に読む中国の学習者も(N1保持者だそう)。もちろん日本語能力試験を受けるために1つ1つ丁寧に学んでいる方もたくさんいました。休憩時間は、お菓子を片手にみんなでティータイム。新しく入った方の自己紹介タイムもありました。皆さん本当に楽しそうだったのが印象的。名前通り「えがお」の日本語教室でした。

石井さんの将来の夢も、日本語が上手になった学習者の「笑顔」を見ることだそうです。

注1)江戸川区コミュニティーブラザ一之江で毎週月曜日19時~21時に行われており、中国、韓国、ベトナム等アジアを中心に10か国、延べ50人以上の学習者が学んでいる。

注2)学校教育法上の「大学」ではなく、社会貢献を志す人々の応援を目的に江戸川区が2004年に設立した学びと実践の場。講義は基本的に江戸川区の「しのざき文化プラザ」で行われている。

執筆/仲山 淳子

日本語教師歴29年のフリーランス日本語教師。非常勤講師として長きにわたり留学生への日本語指導や日本語教師養成講座に携わったのち、フリーランスに転身。現在は企業研修やプライベートでの日本語指導だけでなく、日本語ボランティア教師養成講座の講師、e-ラーニング教材の開発等、多方面で活躍中。最近は作成したオリジナル教材を用いてオンラインレッスンにも挑戦している。自身が担当したボランティア教師養成講座で石井さんを指導したご縁で、今回寄稿の運びとなった。

関連記事


登録日本語教員や日本語教員試験に関するご質問にお答えします 第2回:勉強法について

登録日本語教員や日本語教員試験に関するご質問にお答えします 第2回:勉強法について
 先日、編集部から「登録日本語教員や日本語教員試験に関する質問」を募集したところ、皆様から非常にたくさんのご質問が寄せられました。ここで皆様から寄せられたご質問について、これまで公表されている各種資料を基に、個人的な見解を可能な範囲でお答えしたいと思います。文化庁等には確認をしておりませんのでご注意ください。実際にはケースバイケースの可能性もあると思われますので、あくまで参考意見の一つとして聞いていただければと存じます。

教科書について考えてみませんか-第5回 漢字学習も「できること」重視!

教科書について考えてみませんか-第5回 漢字学習も「できること」重視!
2011年4月から『月刊日本語』(アルク)で「教科書について考えてみませんか」という連載を掲載してから10年。2021年10月に「日本語教育の参照枠」が出て以来、現場では、コミュニケーションを重視した実践への関心が高まり、さまざまな現場で使用教科書の見直しが始まっています。「参照枠」を見ると、言語教育観に関して、「学習者を社会的存在として捉える/「できること」に注目する/多様な日本語使用を尊重する」という3つの柱が掲げられています。これは、2011年4月から『月刊日本語』で連載した中で述べていることに重なります。

日本語教師プロファイル倉持素子さんー学生と同じ経験をしてみたいという思いからアルゼンチンへ

日本語教師プロファイル倉持素子さんー学生と同じ経験をしてみたいという思いからアルゼンチンへ
今回お話を伺ったのは、202311月より独立行政法人国際協力機構(JICA)の日系社会シニア海外協力隊としてアルゼンチンの首都ブエノスアイレスに赴任されている倉持素子さんです。倉持さんは長い間ビジネスパーソンへの日本語教育に従事された後、リンゲージ日本語学校の校長を務めていらっしゃいました。何故アルゼンチンに行くことになったのか、アルゼンチンでの活動に、これまでのキャリアも併せて、時差がちょうど12時間のブエノスアイレスからZOOMを通して、お話しいただきました。

11月の日本語教員試験対策に!『NAFL 日本語教員試験対策セット』

11月の日本語教員試験対策に!『NAFL 日本語教員試験対策セット』
日本語教師の国家資格「登録日本語教員」の取得に必要となる「日本語教員試験」は、2024年11月17日(日)に第1回目が行われます。 アルクでは累計8万人が受講したアルクの「NAFL日本語教師養成プログラム」のテキスト試験対策書籍を組み合わせた『NAFL 日本語教員試験対策セット』を販売中です。