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日本語教師の国家資格化の議論の整理5――了承された報告書の中身と今後

多くの日本語教師にとって関心の高いトピックと思われる「日本語教師の国家資格化の動き」について、1年間にわたり行われてきた日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議が終了しました。この会議で了承された報告書に基づき、今後は関係各省庁との調整を経た上で、2022年の通常国会への提出を目指した日本語教師の資格に関する法案の準備に入ります。

報告書のポイント整理

まずは会議で了承された報告書「日本語教育の推進のための仕組みについて~日本語教師の資格及び日本語教育機関評価制度~」のポイントを整理します。

前提

・2019年6月に「日本語教育の推進に関する法律」が成立

・2020年3月に文化審議会国語分科会が「日本語教師の資格の在り方(報告)」で「公認日本語教師」の資格創設を提言

・日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議で検討する中で、①「公認日本語教師」の資格創設に加え、②日本語教育機関の類型化も合わせて議論

【日本語教師の資格について】

・資格取得要件:原則として日本語教育能力を判定する試験の合格及び日本語教育実習の履修・修了

・試験は試験①(出題範囲区分ごとの設問により基礎的な知識を測定)、試験②(出題範囲複数の区分にまたがる横断的な設問により問題解決能力を測定)の2つに分ける。

・試験は「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)改定版」で示された「必須の教育内容」50項目に基づき出題

・教育実習は指定日本語教師養成機関(一定の要件を満たしたものとして文部科学大臣が指定した機関)で履修・修了することが必要

・指定日本語教師養成機関で課程等を履修・修了した場合は、試験①及び教育実習免除

・資格取得要件に学士以上の学位は求めない

・資格取得者は更新講習不要

【日本語教育機関の類型化】

・多様な日本語教育機関の質を測る共通の指標がないため、学習者や、外国人を雇用する企業が適切な日本語教育機関を選択できない。各機関における日本語教育の内容を見える化する

・機関単位評価制度を導入することで各機関の教育の質を保証し、各機関には一定数以上の公認日本語教師の配置を必須とする

・類型は3類型とし、主な申請主体は以下を想定

①類型「留学」:法務省告示日本語教育機関

②類型「就労」:就労者向けの日本語教育を行う機関

③類型「生活」:地方公共団体

残された課題と今後の予定

今回の報告書によって日本語教師の国家資格化に関わる全体像がかなり明確になってきました。「日本語教育の推進に関する法律」によって、国に日本語教育の推進に関する施策を策定、実施する責務があるとされ、国内の日本語教師資格に関する仕組み整備することと規定されましたが、それが公認日本語教師という形になって具体的に進んでいます。

現状で残されている課題をいくつか挙げておきます。

まず、3類型における、「留学」以外の「就労」「生活」についての扱いについてです。日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議の中でも、報告書の中でも、「留学」の審査項目(案)についてはかなり具体的に詳細が記述されているのに比べ、特に「就労」については「他類型の審査項目や関係省庁との調査状況も踏まえつつ、産業界等のニーズも把握した上で今後要検討」とあり、また「『就労』『生活』の審査項目の検討の際には、現状や関係機関や企業、学習者の意見、日本語教育推進法の趣旨等を踏まえた上で、厚生労働省や法務省等関係省庁と連携して制度を検討することが必要である」と、今後の検討課題としています。

「生活」については、「地域のボランティア等が運営する日本語教室によって多様な学習機会が提供されることは重要であり、制度化が地域の自主性・主体性に基づく活動を縛ることがないよう留意することが必要である」との配慮が伺えます。

学ぶことが目的の「留学」と働くことが目的の「就労」ではそもそも目的が異なり、日本語教育への関わり方も異なってきますので、関係省庁と協議・調整が必要になるのは当然のことかと思います。一方、将来において、ますます外国人人材の力が必要になるであろう産業界において、「就労」目的の外国人を適正に受入れていくために日本語教育は極めて大事な要素だと思われます。この「就労」に日本語教育がどれだけ入り込めるかは、今後の注目ポイントではないかと思われます。

次に、公認日本語教師については、今後、この資格を取ることによるメリットが明確に見えてくる必要があります。そもそも今後急激に増えるであろう外国人に対して、日本語教師の質と量を上げていかなければならないという前提があります。今回の資格創設により、公認日本語教師になるためには2つの試験にパスして教育実習を履修・修了することが必要になります。これは現在の「日本語教師の資格」取得よりもハードルは上がることにもなります(現在は、養成講座を修了していれば日本語教育能力検定試験には必ずしもパスしていなくてもよく、また日本語教育能力検定試験にパスしていれば養成講座は必ずしも修了していなくてもよい)。であれば、この資格を取ることによる明確なメリットがなければ、かえって日本語教師の数を減らしてしまう恐れもあります。加えて、現職の日本語教師の移行措置や移行条件についても、現時点では明確にはなっていません。

日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議で報告書は了承されました。今後は報告書に基づき、関係各省庁との調整を経た上で、2022年の通常国会への提出を目指した法案の準備に入ります。報告書は関係各省庁との調整の中で、さまざまな修正・調整が出てくると思いますので、日本語教育関係者今後も引き続き、その動きを注視していく必要があります。なお、2022年の通常国会で無事法律が成立した場合でも、新しい資格の全面施行は2024年以降になる予定です。

日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議の資料https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/nihongo_kyoin/92369001.html

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