検索関連結果

全ての検索結果 (0)
日本語教師になろう!―フリーランスだからこそ繋がりが大事

日本語教師を目指している方やまだ経験の浅い日本語教師の方を応援するための本コラムもいよいよ今回が最終回です。最終回のテーマはフリーランス日本語教師について。最近とみに耳にするようになったフリーランス日本語教師ですが、そもそも「フリーランス」ってどういうこと? 非常勤講師とは何が違うの? 仕事はどうやって見つけるの? など様々な疑問があるのではないでしょうか。数年前にフリーランスとなった私が、フリーランスならではの大変さ、楽しさ、心構えなどについて詳しくご紹介します。

フリーランス日本語教師とは

まずは「フリーランス」という言葉の意味についてWikipediaを見てみると「特定の企業や団体、組織に専従しておらず、自らの技能を提供することにより社会的に独立した個人事業主」とあります。日本語教育の世界で考えると、個人で、またはエージェントを通して企業や団体の日本語研修を行っている教師のことを指します。独立してプライベートレッスンや、オンラインレッスンを行っている人もフリーランスです。非常勤講師として学校の授業を担当していても、専従ではなくフリーランスの方もいます。私自身、専門学校等の授業も週に数コマ担当しています。となると、フリーランス日本語教師とは一つの組織に属することなく自分自身で選択した複数の仕事を持っている教師のことでしょうか。私の感覚では、「属している組織に年末調整をしてもらわず、自身で確定申告をする人」と大雑把に言えるのかなと思いますね(私自身が非常勤からフリーランスになって、一番変わったところはそこですから)。

フリーランスの日常は?

ではここで私自身のフリーランス日本語教師としての日常をご紹介しましょう。現在は教える仕事として専門学校、日本語学校の留学生クラスの授業、日本語ボランティア養成講座の授業、エージェントからのビジネスパーソンのプライベートレッスン、個人でのプライベートレッスン(オンライン含む)を行っています。このほかにeラーニングの受講生からの質問への回答や教材を作る仕事などもやっています。

私の回りのフリーランス日本語教師の方々は、プライベートレッスンや企業レッスンを中心にしている方、自宅からのオンラインレッスンだけの方など様々です。また日本語を教えるだけでなく、コーチングやキャリアプランニング、司会業など、日本語教育プラスアルファの仕事をされている方も多いですね。

そのように忙しい人が多いので、一番大切なことは時間管理だと思います。私の場合、何曜日のどの時間にどの授業があるのか、どの仕事をいつまでにやらなければならないのか、ちょっとアナログかもしれませんが、これらは色分けされて手帳にびっしり書き込まれています。フリーランスにとって大切なことは「信用」ですから、絶対に仕事に穴をあけないように心がけています。

たしかにフリーランスだと、関わる相手が多く、メール連絡、報告書や請求書などのやり取りなど必要な事務作業も増えるのですが、時間の使い方を自分で決められるというメリットもあります。平日でも趣味のお稽古ごとの時間は空けておくなんてこともできますし。さらに自分で決められると言えば、組織でのチームティーチングでなければ、教材や授業プランも自分で決定できる場合が多いです。セミナーで知った面白そうな教材や新しい教授法、ITを使った授業スタイルなども試してみることができるのです。時間も教材も教え方も「自由」。これがフリーランスの良さでしょうか。もちろん学習者に合わせることは大前提ですが。

フリーランスになって変わったこと

私自身が日本語学校の非常勤講師からフリーランスになって一番変わったことは、実は仕事に対する意識だと思います。それまでは、学校で決められた枠を越えない、と言うか、越えてみようとしませんでした。与えられた仕事は一生懸命やるけれども、それ以上は……という考え方がどこかにあったのだと思います。積極的に外部のセミナーなどに出かけていくこともありませんでした。でもフリーランスになってからは、180度変わりました。仕事は常にそこにあるものから、有難く頂けるものになりました。今は、声をかけてくださった仕事はできる限りNOと言わないように努めています。そしてフリーランスとして一人で立っていくために、絶対に必要なものは「仲間」と「情報」だということを強く実感しています。それで、セミナー、勉強会、コミュニティなどにも頻繁に参加するようになりましたし、インターネットの日本語教育関連サイトやSNSも常にチェックするようになりました。これらには驚くほど有益な情報や繋がりがあるのに、利用しないなんて本当にもったいない。

今頂いている仕事も、どうやって探したの? と思うかもしれませんが、実は、ほとんどがご紹介なのです。紹介が紹介を呼び、さらに繋がっていくということもあります。そのチャンスを見逃さないセンスも大切です。

フリーランス教師が増えたわけ

私が日本語を教え始めた30年ほど前は、日本語教師養成講座を出て、仕事として日本語を教える場所と言えば、ほぼ日本語学校でした。ですから、まず日本語学校に非常勤講師として入るというのが一般的だったと思います。当時からフリーランスでビジネスパーソンに教えていらした小山暁子さん(以前、この日本語ジャーナルにも登場なさいましたね)のようなパイオニアもいらっしゃいますが、まだ少数派でした。

しかし最近は「フリーランスです」とおっしゃる方が増えました。その理由を考えてみると、学習者が多様化したからにほかならないのではないでしょうか。今や日本語学習者は進学希望の日本語学校生だけではありません。ビジネスパーソンも定住者も子どもも、さらに言えば日本に住んでいない学習者さえオンラインで学べる時代です。そんな多様化した学習者に合わせて、教師の方も多様化が必要となったのです。画一的なカリキュラムに沿って教えるだけでなく、学習者一人一人に合わせた日本語教育を提供できる人材が求められているのだと思います。まさしくフリーランス教師の出番です。

フリーランスになるには

どうですか? 皆さんもフリーランス日本語教師を目指してみたくなりませんか? でも、経験も浅いし、どうやってフリーランスになればいいの? 確かに日本語学校での一斉授業の経験しかなければイメージをつかみにくいかもしれません。まずはフリーランスの方々も参加する勉強会などに行ってみるのはいかがでしょう? そこで様々な教え方を知り、人との繋がりを作ることは絶対に将来にプラスになります。また「日本語ジャーナル」等で情報をこまめにチェックすることも忘れずに。

そしてフリーランス日本語教師としてやっていきたいのであれば、是非、自分だけの強みを探してください。例えば接客業のバイトを長くやっていたので接客日本語は得意とか、アニメにめっちゃ詳しいとか、ITが得意とか、お笑い好きとか、なんでもいいです。何故なら、これだけ学習者が多様化していれば、絶対に自分の強みにヒットする人がいますから。そうやって自由に自分の道を作れるのもフリーランスならではの醍醐味です。

最後に、今回のコロナウイルス禍でも、フリーランスの方々はすぐにオンラインレッスンにスイッチしました。それは死活問題ということもありますが、組織に属していない分、素早い行動がとりやすいという点も挙げられます。複数のクライアントを持つことはリスクヘッジにもなります。自由とともに自己責任も大きいフリーランス教師ですが、これからの日本語教師の道の一つであることは間違いないようです。

仲山淳子/執筆

日本語教師歴30年のフリーランス日本語教師。非常勤講師として長きにわたり留学生への日本語指導や日本語教師養成講座に携わったのち、フリーランスに転身。現在は企業研修やプライベートでの日本語指導だけでなく、日本語ボランティア教師養成講座の講師、e-ラーニング教材の開発等、多方面で活躍中。約20年前に所属していた日本語学校から派遣され、韓国企業の研修所で3か月間日本語研修を担当。

関連記事


日本語教師プロファイル京谷麻矢さん―言語マイノリティのサポートを目指して

日本語教師プロファイル京谷麻矢さん―言語マイノリティのサポートを目指して
今回の「日本語教師プロファイル」では京都府にお住いの京谷麻矢さんをご紹介します。京谷さんは現在、大学で留学生に日本語を教える傍ら、中途失聴や難聴の方のための要約筆記者の仕事、そして会話パートナーとして失語症者のサポートをされています。日本語教育での歩みとともに、要約筆記をするに至った経緯や、現在の活動、更には今後の展望までお話を伺いました。

登録日本語教員や日本語教員試験に関するご質問にお答えします 第2回:勉強法について

登録日本語教員や日本語教員試験に関するご質問にお答えします 第2回:勉強法について
 先日、編集部から「登録日本語教員や日本語教員試験に関する質問」を募集したところ、皆様から非常にたくさんのご質問が寄せられました。ここで皆様から寄せられたご質問について、これまで公表されている各種資料を基に、個人的な見解を可能な範囲でお答えしたいと思います。文化庁等には確認をしておりませんのでご注意ください。実際にはケースバイケースの可能性もあると思われますので、あくまで参考意見の一つとして聞いていただければと存じます。

教科書について考えてみませんか-第5回 漢字学習も「できること」重視!

教科書について考えてみませんか-第5回 漢字学習も「できること」重視!
2011年4月から『月刊日本語』(アルク)で「教科書について考えてみませんか」という連載を掲載してから10年。2021年10月に「日本語教育の参照枠」が出て以来、現場では、コミュニケーションを重視した実践への関心が高まり、さまざまな現場で使用教科書の見直しが始まっています。「参照枠」を見ると、言語教育観に関して、「学習者を社会的存在として捉える/「できること」に注目する/多様な日本語使用を尊重する」という3つの柱が掲げられています。これは、2011年4月から『月刊日本語』で連載した中で述べていることに重なります。

日本語教師プロファイル倉持素子さんー学生と同じ経験をしてみたいという思いからアルゼンチンへ

日本語教師プロファイル倉持素子さんー学生と同じ経験をしてみたいという思いからアルゼンチンへ
今回お話を伺ったのは、202311月より独立行政法人国際協力機構(JICA)の日系社会シニア海外協力隊としてアルゼンチンの首都ブエノスアイレスに赴任されている倉持素子さんです。倉持さんは長い間ビジネスパーソンへの日本語教育に従事された後、リンゲージ日本語学校の校長を務めていらっしゃいました。何故アルゼンチンに行くことになったのか、アルゼンチンでの活動に、これまでのキャリアも併せて、時差がちょうど12時間のブエノスアイレスからZOOMを通して、お話しいただきました。