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日本語教師プロファイルうがいまさみさん―まわり道をしたけれど日本語教師になれてよかった!

今回ご紹介する日本語教師は、フリーランス日本語教師としてオンラインで活動する、うがいまさみさんです。うがいさんはご自身も子育て中のママであることを活かして、インスタグラムで「パパとママのためのKANJIレッスン」を配信中。どうやって日本語を教えるという仕事にたどり着いたのか、またこれからやってみたいことなどについてお話を伺いました。

日本語教育にたどり着くまでに10年

――日本語教師になったきっかけを教えてください。

英語が好きで海外に行って勉強したいという希望を持っていたのですが、事情があってその夢は叶いませんでした。しかし、日本国内で外国人と交流できる仕事として日本語教師を知りました。高校生のときだったと思います。その時はいつか日本語教師になれたらいいなと思っていました。その後地元の宮城県で就職、建設会社や大学の研究室の秘書などいくつか仕事を変えましたが、結婚を機に上京することになり、外資系の企業に勤めました。そこは希望通りの職種だと思っていたんですが、ちょうどリーマンショックのあおりでリストラされてしまい、また妊娠したこともあって、専業主婦になるしかなくなってしまったんです。

どうせ家にいるしかないんだからと以前から興味のあった日本語教師の勉強を始めてみようと思い、アルクの通信講座「NAFL日本語教師養成プログラム」の受講を始めました。初めに日本語教師の仕事を知ってから10年ぐらいたっていたと思います。

外国人ママパパのためのボランティアを経験して

――NAFLを修了してからは?

実は子供が生まれてからちょっと産後うつになってしまい、これは少し外に出なきゃだめだと思いました。住んでいる川崎市の国際交流センターに「外国人ママパパのための親子で学ぶ日本語サロン」というのがあり、小さな子供を連れて行ってもよいということで、ここにボランティアとして参加することにしました。

ここでの体験はとても面白かったです。同じような年代でお子さんがいらっしゃる外国人の方々の話し相手になるという活動でした。ファシリテーターの方からは「先生」と呼ばせないで、対等なつきあいをしてくださいと言われました。活動の内容は、お互いの子供について話したり、救急車を呼ぶ電話のかけ方だったり。一緒に商店街を歩いたり、料理教室をしたこともありました。保健師さんに来ていただいて、子育てについて一緒にお話を聞くというような回もありました。

私でも日本語を教えられるかもしれない

――本格的に日本語教師になろうと思ったのはどうしてですか。

日本語教育能力検定試験にも合格しましたが、私はずっと通信講座で勉強してきて誰とも交わりがなかったので、勉強はしたけれど自分にできることなんてないんじゃないかと思っていました。でもファシリテーターの方から、「おむつ」や「おっぱい」なんて言葉は日本語学校では教えません。そういう言葉を教えられるのは、同じ母親の立場だからこそなんですよと言われました。

例えばある参加者の方で、その方は日本語学校でも日本語を勉強していたのですが、子供の運動会の日に「バッジ(名札)をつけてこないでください」という学校のからのお知らせが分からなくて、一人だけバッジを付けていってしまったという話がありました。「バッジ」のような私たちが日ごろ当たり前に使っている言葉と日本語学校で習う言葉は別なんだということに気づいて驚きました。

こういうことで私は外国人の方々に貢献できるんだと分かってうれしかったです。それなら私でも日本語を教えられるかもしれないという自信が出てきて、ボランティアは辞め、仕事としての日本語教師を目指すことにしました。そして、また教えるための勉強を始めようと、通信制の日本語の教え方セミナーを受講しました。ここで文法の教え方などをしっかり学ぶことができ、一緒に学ぶ仲間もできました。その紹介で2人の学習者の方にもオンラインで教え始めました。

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フリーランスオンライン教師になる。

――初めからオンラインで教えることを考えていたんですか。

いえ、初めは日本語学校の求人に応募したこともあったんです。でも子供のことを考えるとなかなか難しいということが分かって。個人で教えるとなると対面の場合は活動の範囲が限られてしまいます。オンラインだったら遠くに住んでいる人にも教えられるということでオンラインレッスンのプラットフォームであるカフェトークに登録しました。

カフェトークは語学だけでなくピアノ、ヨガ、ダンスなど様々な習い事ができるプラットフォームです。基本はスカイプで教えます。ここのいいところはレッスンの内容も価格も自分で設定できるところですね。

現在はカフェトークで会話、漢字、そして「やさしい日本語」のレッスンをしています。「やさしい日本語」を申し込むのは日本人の方だと思っていたんですが、驚いたことに日本語上級者の外国人から依頼がありました。考えてみれば英語が苦手な外国人もいるわけなので、外国人同士がコミュニケーションをとるために「やさしい日本語」のニーズがあるんだということが分かりました。

――個人でやっていると、相談できる人がいなくて、難しい点はありませんか。

幸い、一緒に教え方の講座を受けていた方と友達にhttps://shop.alc.co.jp/blogs/nj-news/乗ってもらっています。また大隅紀子さんが主宰されているFacebookグループの「YYJ・日本語教師学び場」に参加したのも私にとっては大きかったです。ここに入ってから勉強する機会も増えましたし、何かわからないことがあれば、皆さん答えてくださるので本当に助かっています。

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インスタグラムで漢字レッスン

――インスタグラムで漢字レッスンの配信もされていますが。

そうですね。これは日本語教師である私を知ってもらって、レッスンにつなげるためでもあるんですけれど。実は以前からファンだったコンサルの先生に、日本語教育とは関係ない方から見て、どういう風にアプローチすれば、もっと分かりやすく親しみを持ってもらえるか相談したんです。そうしたらインスタで漢字をやってみれば?とアドバイスされて。ボランティアをやっていたとき、漢字が読めなくて困るというお母さんたちが多かったのを思い出しました。生活で必要な漢字というのは、日本語学校で習う漢字の提出順とは違って、すぐにでも難しい漢字が必要なわけです。だったら他の人がやっていないことをやってみようと思いました。

機材を買って、自分で撮影もして、2020年の11月ぐらいから、これまでに200本ぐらい作りました。

――すごいですね。

いえ、1週間に1回撮りだめをしているんですが、型を決めてしまったので、ちょっといじるだけでそんなに大変ではないんです。それにあまり先入観なく始めたので、そんなにすごいことなのかどうか実感がなくて(笑い)。

自分のバックグラウンドを大切にして

――これからやっていきたいことはありますか。

先日、笈川幸司先生の音声指導養成講座を受講したのですが、ここで教わったことを実践できたらいいなと思っています。私自身も英語の詩の朗読が好きで、繰り返し練習していたので学生時代は発音を褒められたことがありました。今はお母さんたちに絵本の読み聞かせ方なんかどうかといろいろ考えています。
また、これまでずっとオンラインでやってきていますが、一度はクラスレッスンをしてみたいという希望もあります。

――ご家族は今のうがいさんの活動を見て、何か言っていますか。

現在はまだ下の子が幼稚園の年長組と小さいので、活動時間も平日の午前中や土日ぐらいしかできないんですが、夫がとても協力的なので助かっています。
子供たちには、私が今どんなことをやっているのかをきちんと伝えるようにしています。子供に我慢させることもあるかもしれないのですが、家族にわかりやすく伝えることも大事だなと思っています。

――これから日本語教師になろうと思っている方に何かアドバイスはありますか。

自分のバックグラウンドは大切にしたほうがいいと思います。私も「お母さんじゃなきゃこういうことは思いつかなかったよ」と言われて気づいたので。会社員をやっていれば会社の言葉がわかるだろうし、建設業界で働いていればその業界しか使わない言葉がわかるでしょう。以前にやっていた経験は一つも無駄になることはないと思いますよ。

ただ、本当のことを言うと、私も本格的に日本語を教え始めてまだ2年ぐらいなので、どうしてうまく進まないんだろうとか辛いことのほうが多いんです。でも外国人と関わる仕事がしたいとずっと思っていて、ここに来るまでトータルで20年ぐらいかかっています。今は本当に日本語教師になってよかったし、まわり道があったので、多少辛くてもこれでよかったって思えます。

子供には「なんで、そんなに時間がかかったの?もっと早くやればよかったじゃん。」って言われますが。だから子供に自分のやりたいことがあったら早くやりなさいと言っています(笑い)

うがいさんのブログ:https://ameblo.jp/mamanoomusubi/

取材を終えて

日本語学校を経験せずに、フリーランスとして活動するというのはこれからの日本語教師の一つのスタイルになるかもしれません。また、うがいさんはインスタグラムの他にブログもされていて、SNSを上手に使っている点も参考になるのではないでしょうか。ただ、相談できる仲間がいるということもポイントのようです。

取材・執筆:仲山淳子

流通業界で働いた後、日本語教師となって約30年。5年前よりフリーランス教師として活動。

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