4/30まで10%OFF「 NAFL 日本語教員試験対策セット」 【4/30終了】対象商品10%OFF「 春の資格取得キャンペーン」

検索関連結果

全ての検索結果 (0)
改めて考えたいー「正しい日本語」とは

2022年から日本語教師の勉強を本格的に始めよう、日本語教師としてデビューしてみようと、今から計画を立てていらっしゃる方も多いと思います。ここでは、これから日本語教師を目指す人向けに、改めて正しい日本語」について考えてみたいと思います。日本語教師は「日本語」を教える専門職ですが、それではそこで教える日本語とはどんな日本語なのでしょうか。(編集部)

教室で習った日本語が通じない

日本語学習者から受ける質問・相談の一つに、「教室で習った日本語と、アルバイト先で話されている日本語が違う」「教室の外で話されている日本語がよく分からない」「教室で習った日本語が通じない」といったものがあります。

一例として「ら抜き言葉」を見てみます。

動詞の可能形を作る場合、動詞のグループによって可能形の作り方が違ってきます。

1グループ動詞:聞く→聞ける

2グループ動詞:見る→見られる

3グループ動詞:来る→来られる

この2グループ、3グループの動詞の可能形から「ら」が抜けてしまったものを「ら抜き言葉」と言います。

見られる→見れる

来られる→来れる

一方、この「ら抜き言葉」は徐々に市民権を得ています。文化庁が毎年実施している「国語に関する世論調査」の中で、平成27年度に「ら抜き言葉」についての調査があります。ここでは、2つの言い方を並べて、どちらの言い方を普通使うかを聞いています。(  )は%です。

(1)こんなにたくさんは食べられない(60.8) こんなにたくさんは食べれない(32.0)

(2)朝5時に来られますか(45.4) 朝5時に来れますか(44.1)

(3)彼が来るなんて考えられない(88.6) 彼が来るなんて考えれない(7.8)

(4)今年は初日の出が見られた(44.6) 今年は初日の出が見れた(48.4)

(5)早く出られる?(44.3) 早く出れる?(45.1)

「来られる」「来れる」の使用率はほぼ同一、「見れる」「出れる」の使用率は「見られる」「出られる」を上回っています。この数値は平成27年度(実際の調査は平成28年2~3月に実施)ですので、6年ほど経った今では、その使用率はさらに高まっているかもしれません。また、調査を見てみると言葉によってその使用率は大きく異なり、一口に「ら抜き言葉」と括るのも難しいようにも感じます。

日本語の授業では、可能形の作り方のルールを教えますが、学習者は日本語の授業が終わって一歩教室の外に出れば、同世代の日本人が使う数多くの「ら抜き言葉」に接することになります。その結果、学習者からは「教室で習った日本語と、アルバイト先で話されている日本語が違う」といった質問・相談が寄せられることになります。

規範主義と記述主義

言葉を考える際には大きく二つの立場があります。

一つは文法や表現の「正しさ」を重視する規範主義的な立場、もう一つは使用実態を重視する記述主義的な立場です。「ら抜き言葉」の例で言えば、規範主義的な立場であれば「見られる」「出られる」「来られる」を教え、記述主義的であれば「ら抜き言葉」も含めて広く使われているということを説明することになるかと思います。規範主義と記述主義は立場ですので、どちらが優れているということはありません。日本語教師はその両方を見る柔軟な目を持つことが必要かと思われます。

前述の「国語に関する世論調査」からも分かるように、言葉の実態は常に変化しています。ある時点で「正しい」と言われている言葉も、何年、何十年もすれば、形が変化したり、なくなったり、あるいはそれに代わる新しい言葉が生まれたりします。私たちが話している日本語は、100年前の日本語とは随分と違うものであることは、容易に想像できます。

また、学習者は日本語を使うことを通して周りとコミュニケーションし、社会に参加し、さまざまな目的を達成するために日本語を学んでいます。周りの日本人が話している日本語を理解し、また自分の意見や気持ちを相手に伝えるためには、日本人が話している「ら抜き言葉」も(自分が使う必要はないかもしれませんが)理解できなければ困ってしまうでしょう。この場合、「ら抜き言葉」が正しいか正しくないのかは、それほど大きな問題ではないのかもしれません。

その一方、学習者は第二言語習得の理論に基づき、科学的・合理的に日本語を習得していく必要があります。日本語使用環境で生活していく中で自然習得していくような特別な場合を除いて、限られた時間の中で効率的に日本語を習得するには、文法ルールを学び、そのルールに沿って日本語を理解し、あるいはアウトプットしていくことが必要になります。

日本語教育能力検定試験でも頻出

なお、規範主義と記述主義については、日本語教育能力検定試験でもよく出題されるところです。近いところでは、平成28年度の試験Ⅰ、令和2年度の試験Ⅲなどでの出題例があります。次回の日本語教育能力検定試験を受験される方はご注意ください。

最後に、日本語教育能力検定試験形式の問題にチャレンジしてみましょう。

【 】に示した観点から見て、他と性質の異なるものを選んでください。

(1)【可能】

1. 車では行けません

2. アルコールは飲めません

3. パクチーは食べれません

4. 家には帰れません

(2)【規範主義】

1. 朝は6時で起きた

2. 朝刊を取りに行きた

3. 植木に水をあげた

4. 外は寒いかった

正解:

(1)3 「ら抜き言葉」になっています。

(2)3 使用実態では「あげた」が多いかもしれませんが、旧来の規範からすれば「植木に水をやった」となります。

関連記事


ゼロビギナーとの対話を考えることは、ことばの活動の原点 -日本語教育を考えるためのスタートライン3

ゼロビギナーとの対話を考えることは、ことばの活動の原点  -日本語教育を考えるためのスタートライン3

細川英雄さんへのインタビューを通し、「ことばを教える」ことの本質へ迫る全3回の連載の最終回(第1回 第2回)。今回は、「でもゼロビギナーと対話するのは難しいから語彙、文法を教える必要があるよね」というよく起きる問いかけについて考えます。(深江新太郎)...


令和4年度 国語に関する世論調査――「涼しい顔」はどんな顔? 「忸怩たる思い」はどんな思い?

令和4年度 国語に関する世論調査――「涼しい顔」はどんな顔? 「忸怩たる思い」はどんな思い?

文化庁から、令和4年度「国語に関する世論調査」の結果が発表になりました。日本語やコミュニケーション、ローマ字表記に関する意識、気になる言葉や日本語の変化など、今の日本人の日本語に対する意識を数値で見て見ましょう。...