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「ロジトレは授業のスパイス!」<第2回>授業の目的・目標のために使うロジトレ

『考える・理解する・伝える力が身につく 日本語ロジカルトレーニング 初級』『同中級』(略して「ロジトレ」)が日本語の授業で使われる機会が増えているそうです。それと共に、ロジトレについて関心を持ってくださる日本語教師の方も増えてきているようです。でも、私の身の回りの日本語教師の方に聞いてみると「興味はあるけど、どう使ったらいいのかわからない」という意見を直接的・間接的に聞きます。そういう方の声にお応えするために、今回は「1冊を、最初から最後まで通してやらなくても大丈夫」という視点に立って、2回に分けてロジトレの上手な使い方についてお伝えしたいと思います。第2回は「授業の目的・目標」を達成するために使うロジトレについてご紹介します。(執筆 西隈俊哉/執筆協力 加須屋希)

授業の目的・目標を大切にする

皆さんは授業で日本語を教えるとき、何を大切にしていますか? 何を大切にするかは人によってそれぞれですが、私が最近授業において必ず頭の片隅に置こうと思っているのが「目的・目標は何か?」ということです。目的と目標は似ている言葉ですし、人によって捉え方も異なるのですが、私はこのように思っています。

 目的・・・何のために学ぶのか

 目標・・・何ができるようになるのか

目的・目標というのは、教育機関によっては予め提示されています。目的・目標の範囲は「一日の授業」の場合もありますし、「学習者が入学してから卒業するまで」といった大きな範囲になることもあります。教師は、教育機関から提示された目的・目標を確認してから教えることになるでしょう。

教育機関から提示されているものとは別に「一つの文型」「一つの項目」にもそれぞれ目的・目標があります。特に初級の会話主体の教科書の場合、教師用の指導書等が充実しているので目的・目標の確認がしやすいと思います。

しかし実際の授業では、予め提示された目的・目標だけの場合、学習者の理解を深められないまま次へ進んでしまう可能性があります。

目標の達成に本当に必要なもの

これはどういうことでしょうか。説明します。

仮に、予め提示された目標が「相手の趣味や興味を聞けるようになる」だとしましょう。この目標を達成するためには、教科書の内容どおりに進めていけば「相手の趣味や興味を聞けるようになる」かもしれません。

しかし「趣味や興味を聞く」という会話の中では、お互い共感できるものや共通の関心を持つものについては話を掘り下げたくなることもあるのではないでしょうか。そのためには理由を尋ねたり、答えたりすることで、内容を更に掘り下げることができます。

ロジトレには、このやりとりに役立つ「理由を答える練習」があります(ロジトレ初級p.62)。

これを前もって練習しておけば、理由を答える側は「なぜなら~」を使って答える練習、質問する側は「どうして?」を使って問いかけをする練習ができるので、相手の趣味や興味をより深く聞けるようになります。

「趣味や興味を聞く」というのは、単に相手の趣味や興味を聞くのではなく、それを知ることで、「相手との距離を縮める=仲良くなる」という意思が含まれています。つまり、目標が「趣味や目標を聞けるようになる」のであれば、相手と仲良くなるためにはさらに一歩掘り下げて聞く(話す)ことで、互いの距離はより縮まるのではないでしょうか。

自分のアイデアをまとめる、意見を生み出す

次は作文の授業について考えてみましょう。

作文の授業の目的・目標も授業や課題によって様々ですが、全てに当てはまるのは「自分のアイデアを分かりやすくまとめて、説得力のある文章を書く」ことだと思います。

作文の教科書に見られるのは、書く内容に関するメモを作り、それをもとに肉付けをして作文として完成させる、というパターンです。または、教科書に記載されている設問に答えて、その答えをつなげることで作文の体裁が整い、それを清書するというパターンもあります。

教科書の通りに進めていけば、作文を仕上げることはできます。しかし、中には「アイデアは出てくるけどなかなかまとまらない」「テーマに対する考えがなかなか出てこない」といった学習者もいると考えられます。

アイデアがまとまらない場合、マッピングが有効です(ロジトレ中級p.16)。可視化することでアイデアを眺めることができるし、アイデアの中でまとめられるものはまとめることができます。作文のテーマに関連するものをまとめたり、不要なものを省いたりすることもできます。

また、ロジトレでも、作成したマップを使って作文を書く練習をすることができます(ロジトレ中級p.108)。マッピングしたものの中から、テーマに沿って重要なものをいくつか選び、その言葉について説明します。それを見ながら清書することで、作文を仕上げることができます。

テーマに対する考えや意見が出てこない場合は、リストアップやマンダラートを使うとよいです(ロジトレ初級p.8、12)。特にマンダラートの場合は、中心の周辺に8個書き入れる箇所があるので、直接的な関係の有無を考えずにとにかく書き込んでもらうのがよいでしょう。テーマに関係のある考えであるかどうかは後で教師と一緒に判断すればよいと思います。

語彙を増やす

今度は教科書を離れてみます。

「語彙を増やす」という目標がある場合、教師は何をすればいいでしょうか。

教科書に付属する単語リストを配布してそれを覚えてくるように言うこともできますし、市販の語彙の問題集を使うという方法もありますが、ロジトレも「語彙を増やす」ということに使えます。先ほど作文の授業の時にも紹介した、リストアップやマッピングです。

第1回の記事でも紹介しましたが、ロジトレのリストアップを使う場合、「色を表す言葉」などをテーマに、知っている言葉を挙げてもらいます。そして、それを学習者同士で披露し合います。そうすることによって、自分が知らなかった色の名前を新たに知ることができます。

マッピングの場合は、中央に置いた言葉を基準に、似ている意味の言葉とか反対の意味の言葉などを並べることで、さまざまな語彙が現れます。リストアップと同様、授業の中で学習者同士で披露し合うことで、自分が知らなかった言葉を知ることができます。

授業の目的・目標を見定めよう

いかがでしょうか?

授業の目的・目標を念頭に置き、それを達成するためのツールの1つとしてロジトレを使うことができます。目的や目標がはっきり分かっていれば、ロジトレの提出順序に捉われずに、必要に応じた活動をピックアップして使うことができます。今回ご紹介したのは一例です。他にも、授業での目的や目標に合わせて使える活動がたくさん用意されています。

ただ、ご注意いただきたいのは、あくまでもロジトレは「授業での目的・目標を達成するためのツール」の1つにしかすぎないことです。大切なのは、ご自身が授業の目的・目標を見定めることです。

目的・目標を見定めることは、日々の授業の中で大切なことだと思います。まずは「自分は毎回の授業で、どのように目的・目標を立てているか」という点検を行ってみてください。そして「目的・目標を達成するためにはどうすればいいか」ということを考えたとき、ロジトレが目的・目標を達成に一役買うことになるでしょう。

執筆:西隈俊哉

フリーランスで働く日本語教師。日本語学校、大学の留学生、技能実習生・特定技能の外国人に日本語を教えている。『考える・理解する・伝える力が身につく 日本語ロジカルトレーニング』(アルク)の初級・中級2冊を執筆。日本語教育に携わる人々を応援する団体「一般社団法人日本語フロンティア」の代表理事も務めている。趣味はエスニック料理を食べること。最近は南インド料理の沼から抜け出せずにいる。

加須屋さんと共に、YouTube「おきらく日本語教育」を配信中。

https://www.youtube.com/channel/UCL0OInXN2heYv7GaTGjP3VA

執筆協力:加須屋希

国内の日本語学校で専任として働く日本語教師。大学院、大学、専門学校に進学する留学生を中心に日本語を教える。日本語学校でのオンライン授業導入や、「自分で考え、表現する学習者のための授業」を取り入れるなど、これからの日本語学校や日本語教師の在り方を模索し、実践している。
趣味はディズニーランド、シーを散歩すること。1か月に一回の割合で通う、自称「ディズニーランドマニア」である。

お知らせ】 「ロジトレの使い方講座」開講

この記事を通してロジトレを使った授業に興味を持った方にお知らせです。ロジトレを使って授業をする方法をワークショップ形式で学ぶ講座を、2回に分けて行います。お申し込みをお待ちしております。

日時:第1回 2月18日(土)

   第2回 3月4日(土)

   時間はいずれも午前10:00~11:30

  ※zoomにて実施いたします。

  ※1回のみの参加はできません。

定員:10名

受講料:3,960円(税込)※大変申し訳ありませんが、銀行振込のみのご利用になります。

お申込先:https://forms.gle/4m5sx2wYAM6azA7YA 

内容:

第1回「学習者のアウトプットをたくさん引き出そう」

ロジトレは、アウトプット型の教科書です。授業の中で用いるには学習者のアウトプットをたくさん引き出すことが大切です。ロジトレの練習問題を使いながらアウトプットの引き出し方をマスターしましょう。

第2回「目的・目標を見定めよう」

ロジトレはスキマ時間に使うこともできますが、目的・目標を見定めてから使うと、より高い効果を発揮することができます。ロジトレの練習問題を使って、目的・目標の見定め方について一緒に考えましょう。

使用教材:『考える・理解する・伝える力が身につく 日本語ロジカルトレーニング 初級』(予めご購入下さい)

講師:西隈俊哉(『考える・理解する・伝える力が身につく 日本語ロジカルトレーニング 初級』『同中級』著者)

主催:一般社団法人日本語フロンティア

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