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日本語能力試験に学習者を合格させるための「読解」攻略法

日本語を母語としない人を対象に、日本を含め世界86カ国・地域(2018年)で行われている試験が日本語能力試験(Japanese-Language Proficiency Test、以下JLPT)です。日本語学習者の日本語能力を測る最大規模の試験として、年々受験者が増えています。皆さんが日本語を教える学習者の中にも、JLPT合格を目指している人は多いのではないでしょうか。JLPTはいくつかの科目に分かれますが、その中でも「読解」が「最大の難関」だと言われています。どうすればその難関をクリアできるのか。『必ずできる! JLPT「読解」』シリーズを上梓した、安藤栄里子先生と足立尚子先生にお話を聞きました。(NJ編集部)

日本語能力試験(JLPT)とはどういう試験か

編集部:まず本書を書かれたきっかけを教えてください。

安藤:最初に同シリーズの「N3」を執筆したのですが、お陰様で1年も経たないうちに3刷を数え、非常に多くの日本語教育機関で使われるようになりました。使っていただいている先生方から「今度はぜひN2レベルを」という声を多数いただきまして、今回、N2の出版の運びとなりました。

編集部:JLPTの受験者は年々増えているのですか?

安藤:JLPTは外国人の出入国管理上の優遇措置、日本の大学や日本語学校へ留学する際の目安、外国人が日本で医師、看護師、薬剤師、保健師などの国家試験を受験するための条件など、さまざまに活用されています。在留外国人の増加に伴い日本国内の受験者が増加しています。また、海外では日本のポップカルチャーへの興味や日系企業への就職のために受験する人も増えています。2018年に受験者は、国内・海外合わせて初めて100万人を超えました。

編集部:書名にも入っているN2やN3というのは日本語のレベル(受験級)ですね。これはどのように分かれているのですか?

足立:以下をご覧ください。JLPTは5つのレベルに分かれており、各レベルの認定の目安や試験科目はこのようになっています。

認定の目安

レベル

認定の目安

N1

幅広い場面で使われる日本語を理解することができる。

N2

日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる。

N3

日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる。

N4

基本的な日本語を理解することができる。

N5

基本的な日本語をある程度理解することができる。

試験科目と時間

レベル

言語知識(文字・語彙・文法)・読解

聴解

合計

N1

110分

60分

170分

N2

105分

50分

155分

レベル

言語知識(文字・語彙)

言語知識(文法)・読解

聴解

合計

N3

30分

70分

40分

140分

N4

30分

60分

35分

125分

N5

25分

50分

30分

105分

編集部:N5→N1とレベルが上がっていくのですね。試験の合格率(認定率)はどのぐらいですか?

足立:認定率は、2019年第1回試験(7月)の場合、N1:29.3%、N2:36.0%、N3:39.4%、N4:32.7%、N5:47.6%でした。

編集部:最も易しいN5以外は3割台、N1に至っては3割を切ってますね。おおよそ7割の人が不合格というのは、かなり難しい試験なんですね。何点満点で、何点以上取れば合格できるのですか?

安藤:2010年から、得点はすべて点数等価による「尺度点」で出されるようになりました。ですので、どの回の試験を受験しても、同じ能力であれば同じ得点になるとされています。その上で、N3であれば180点満点で95点以上が取れていること、かつ各科目で19点以上の基準点が取れていることが合格の条件になります。

編集部:各科目で一定の点数を取らなければならないのですね。多くの受験者が合格できないのはどうしてなんですか。

安藤:「読解」の点が低くて合格できない人が多いと言われています。それが今回、この読解教材を開発したきっかけにもなっています。

なぜ受験者は読解で点数が取れないのか

編集部:なぜJLPTの読解は難しいのでしょうか?

安藤:読解は限られた時間内にいくつもの文章をスピーディーに読み、内容を正確に理解し、設問に的確に答えなければなりません。文章の中には、語彙、文法、表現などあらゆる要素が詰め込まれており、いわば日本語の総合力が試されるような試験なんです。

足立:実は日本語以前の問題として、そもそも「読む」という行為に慣れてない学習者も多いんですね。自分の母語で長い文章を読むという経験をしてこなかった学習者も多い。母語ですらそうなのですから、ましてや日本語の長文であれば読むのに手こずるのは当然とも言えます。

編集部:制限時間に問題文を読み終えられないような受験者もいるのでしょうか?

足立:多いですね。制限時間内に問題を解き終わらない学習者を見ていると、指で1語1語文章の文字を追っていたり、黙読ではなく頭の中で音読してるだろうなと思えるような様子だったりします。スピーディーに黙読するということ自体ができていないんですね。

編集部:読解には日本語特有の難しさもあるのでしょうか?

足立:これは私の研究テーマでもあるのですが、学習者がよくつまずくのは、接続詞、省略、指示詞です。接続詞によって次に来る内容を予測したり、省略されている言葉を補って読み進めたり、指示詞が指す内容をつかむといった、日本人であれば自然に頭の中で行っていることができていない。そのため文章の内容が理解できないということになります。

安藤:読解力をつけるためには、多くの良質な日本語を読むことはもちろんですが、それに加えて、読むための技術を習得しなければなりません。接続詞の後ろの内容を予測させたり、指示詞が指すものを確認したりしながら読解の授業を進めていくと、学習者の読解力は着実に伸びます。もう一つ大切なことは、筆者の論理に則して読むということですね。自分の考えや常識にとらわれていては、内容を正確につかむことはできません。

学習者を挫折させずに、着実に読解力をつけさせる授業

編集部:今回、開発した教材は、日本語学校などの日本語教育機関の読解の授業で使われることを想定しているのですね。

安藤:はい。開発に当たって市販の読解教材を一通り見てみたのですが、ほとんどの教材は最初から試験レベルの文章を読ませています。これではハードルが高すぎて、挫折したり読解を嫌いになってしまったりする学習者も多いのではないかと危惧します。

編集部:それを防ぐために、どのような工夫をしているのですか?

安藤:1日の学習量を4ページ(25~30分)に抑えるとともに、各ステップの前にウォーミングアップのページを設け、長文ではなく1文単位で、N2であればN3の文法事項の復習、N3であればN4の文法事項の復習から始められるようにしています。

編集部:N4に合格した次の日からN3の対策に、N3に合格した次の日からN2の対策に取り組めるようにしているのですね。「1文から始めるステップアップ式」というキャッチフレーズの理由が分かりました。

足立:文章や問題形式にバラエティーを持たせるとともに、問題の難易度は学習を進めるしたがって少しずつ上がるように作られています。本教材を終えるころには、N3やN2の本番で合格できるだけの力が身についているはずです。

編集部:この問題集には解説がありませんね。

安藤:そもそも読解を苦手としている学習者が多いことを考えると、解説のページを読むこと自体が学習者にとっては難しいのではないかと思いました。ですので、基本的にはウォーミングアップと問題のシンプルな誌面構成にして、日本語学校などの日本語教育機関で使ってもらうことを想定しています。

編集部:分からないことがあれば日本語教師に聞けばいいということですね。

足立:そういう意味で言うと、実は初心者の日本語教師の研修用にも使える教材になっていると思います。どういうレベルの文章を読むためには、予めどういう文法知識が必要なのか、どういう設問形式であればその知識の有無を確認することができるのかを、本書をじっくり読み進めることで経験の浅い日本語教師も学ぶことができると思います。

安藤:読解指導はどの日本語教育機関でも苦労されていると思います。「問題を読ませて、学習者に答えを言わせて終わり」ではなく、読解を苦手とする学習者が挫折せずにステップアップしていけるような指導を、現場の先生方がこの教材を通して実現していただければうれしいです。

編集部:本日はどうもありがとうございました。

安藤栄里子

明新日本語学校教務主任。アルクから『耳から覚える日本語能力試験 文法トレーニング』シリーズ、『耳から覚える日本語能力試験 語彙トレーニング』シリーズ、『どんなときどう使う日本語語彙学習辞典』など、学習者用の書籍を多数執筆している。演劇や東海道徒歩旅行などが趣味。

足立尚子

総合研究所大学院大学情報学専攻、独立行政法人国際協力機構、日本学生支援機構東京日本語教育センター、一般財団法人日本国際協力センターなど、さまざまな日本語教育機関で教鞭を執りながら、学習者の読解活動に関する論文を現在執筆中。大の乳製品好き。

必ずできる! JLPT「読解」N2

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必ずできる! JLPT「読解」N3

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