令和6年度の日本語教員試験および日本語教育能力検定試験の実施結果が発表されました。日本語教員試験は今回が第1回目の試験ということもあり、その結果が注目されていました。また、令和6年度日本語教育能力試験は、受験者数が大きく変動しました。発表されている二つの試験の数値を見ながら、今後を展望します。
令和6年度日本語教員試験の実施結果
令和6年度日本語教員試験の実施結果は以下のようになりました。
受験者:17,655人
合格者:11,051人
合格率:62.6%
ただし、注意書きを見ると、「『合格者』には経過措置による全試験免除者を含む」とあります。出願しているとはいえ、全く試験を受けていない人の分も含めて「合格率」として出すのは若干無理があるような気がしますが、さらに詳細を見ていくと、いろいろなことがわかります。
ここでは試験免除の有無によって、以下の3パターンに整理します。
①試験免除がなく、基礎試験も応用試験も受験した人(試験ルート、Fルート)
受験者:3,947人 合格者:366人 合格率:9.3%
②基礎試験が免除され、応用試験だけ受験した人(C、Dルート)
受験者:7,750人 合格者:4,727人 合格率:61.0%
③基礎試験も応用試験も免除された人(Eルート)
受験者(出願者):5,958人
②③および①のFルートを合わせた1万人超がまず登録日本語教員として登録され、さらに①の試験ルートの中で実践研修を修了した人が登録日本語教員に加えられるということになります。
基礎試験の難易度をどう考えるか
上記の数値を見て気になるのは、①と②、つまり「基礎試験も応用試験も受験した人の合格率」と、「応用試験だけ受験した人の合格率」の極端に大きな開きです。
ちなみに①の中で、基礎試験に合格した人は367人、応用試験には不合格だったという人は1人、つまり基礎試験に合格した人はほとんど全ての人が応用試験にも合格している一方、①の受験者の9割以上は基礎試験で不合格だった(応用試験に進めなかった)ということになります。
一次・二次のある試験は、一次試験で一定の点数で足切りをし、二次試験は別角度から(例えば面接や論述問題など試験形式を変えるなどして)さらに合格者を絞り込むというのが一般的かと思います。基礎試験の位置づけは、文部科学省が公表している試験案内によれば「基礎試験では、日本語教育を行うために必要となる基礎的な知識及び技能を区分ごとに出題します」とされています。二次試験である応用試験に比して、一次試験である基礎試験の位置づけや難易度には、今後の検討の余地を残したように思われます。
令和6年度日本語教育能力検定試験の実施結果
日本語教育能力検定試験は、日本語教員試験の影響もあったためか、受験者が昨年の4割ほどに減少しました。昨年の令和5年度と比較して見てみましょう。( )が令和5年度の数値です。
令和6年度
受験者:3,385人(8,249人)
合格者:1,045人(2,542人)
合格率:30.9%(30.8%)
男女別で見ると、男性の割合が相対的に増えていることがわかります。
女性:70.5%(74.2%)
男性:29.5%(25.8%)
年齢別で見ると、高年齢層の割合が相対的に増えていることがわかります。
60才以上:20.6%(18.4%)
50-59才:27.3%(26.1%)
40-49才:18.8%(20.4%)
30-39才:14.0%(15.3%)
20-29才:18.8%(19.2%)
20才未満:0.4%(0.5%)
受験回数別で見ると、複数回受験者の割合が相対的に増えていることがわかります。
4回目以上:8.0%(6.0%)
3回目:8.9%(7.6%)
2回目:22.0%(17.8%)
初回:61.2%(68.6%)
今回の実施結果を受けて、来年以降の日本語教育能力検定試験の動きも注目されます。
執筆:新城宏治
株式会社エンガワ代表取締役。NPO法人国際教育振興協会 日本語教師ネットワーク機構代表理事。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の魅力を世界に伝えたいと思っている。
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